夢でみたあの子と僕は。
Tukisayuru
夢でみたあの子を僕は。
夕暮れの放課後の時間、冷たくも心地の良い風が吹くこの時間、僕は廊下にいた――。今から仕事が終わって、家に帰る時だった。僕はこの時に家に帰って何しようかと考えていた。やっぱりゲームにしようかなと思ったりもしたが今日は
この廊下はその先に二階へと続く階段があり、その手前で曲がると出口までの道が続いている構造だ。僕は普通に曲がって帰ろうとした。しかし僕はこの時にあの冷たい風に魅力を感じ、少しゆっくり歩いていた。すると、どこからか足音が聞こえてきた。階段の方からだ。
誰か来る。
誰だろう――。
僕はこの時に足を止めて待ってみることにした。理由は無い、単なる興味が湧いただけ。決して犯罪とかではない。そうやって自分のことを正当化していたら正体を表した。
「……!」
僕は目を見開いてしまった。正体を表したその人は、黒に近い青色の長い髪でスラっと背が高くきっと真面目な性格だ、制服を
僕は突然、胸に痛みを感じた。これは決して物理的な痛みでは無く緊張が走るような精神的な痛みである。そして僕は彼女のことを他の女の子の誰よりも可愛くそして美しく見えてしまうという錯覚を起こしてしまった。
このことを僕は知っている。
なぜだ。脚が動かない。
僕は普通に歩こうとしたが動けなかった。更にそして急に視界が暗くなる。体も重くなっきた。
嫌だもう少しだけ――。
僕はこの状況の中で必死にもがこうとした。
そして――。
「お兄ちゃん! 良い加減起きなさい!」
「んあぁ?!」
その時、僕の目には、自分の妹である『
「お兄ちゃん! 今日学校でしょ!」
「あぁ……」
「どうしたの? 具合悪い?」
「いや、そういうことじゃないんだ妹よ」
僕、『
「はぁ」
ため息が出た。もう少しあの夢を見たかったのだ。
(信じられるか? まさかの夢落ちだぞ! あんなに現実的で! アニメでも無いのに!)
僕はそうやって自分の心の中で
「じゃあこれ、水瀬わかるか?」
「んえ?」
僕は突然現実に戻されたから変な声が出てしまった。それをみんなに聞かれてしまい笑いが起きた。
「あ、はい!
なんとか正解してこの時間をやり過ごした。休み時間になり、僕は自分の席に戻ってまだぼんやりとしていた。
「みなせーさっきはどうしたんだ?」
そう言って声を掛けて来たのは、同じクラスの一人である、『
「ずっと目が泳いでたし、まさかあれか? 好きな人でも出来たのか?」
駿は笑いながら聞いてきた。そうこいつは時々こういうことを平気で行ってくるのだ。因みに反省もしていない。
「別にそういうのじゃねーよ」
「本当か? まぁ良いや今日は放課後に委員会あるから忘れんなよー」
「えーめんどい」
「いや今回のは生徒会総会についてだから絶対いけよな」
「えーでも……」
キーンコーンカーンコーン――。
チャイムがなった。駿は次の授業の準備ということで僕と別れた。
(逃げたなあいつ。まぁでもばれなくて良かった。僕が恋している人が夢の中で会った人だなんて言った所で一生いじられること間違いない)
僕はそう思いながら、五時間目の準備に取り掛かった。五時間目と六時間目の授業が終わり、下校時間となった。僕は普段、委員会に関しては幽霊なのだが今回は参加した。そのせいで裏方での仕事を任されることとなった。
「やっぱさぼれば良かったな…」
僕は帰る準備をして、廊下に出た。無駄に重いバックを背負ってある考えごとをしていた。
「今日は家に帰って何しようかな?やっぱゲームかな!今、ちょうど良い感じなんだよな!あれ?でも…」
僕はポケットの中に入っているスマホを見て、曜日と時刻を確認した。
月曜日・16時40分
「そうだ!月曜日か!だったら今日は
僕は
僕は小さくガッツポーズを撮った。自分の
「ってあれ?」
なんだ。今の行動いや今の一連と言うべきか。僕はどこか
『僕はこの時に家に帰って何しようかと考えていた。やっぱりゲームをしようかなと思ったりもしたが今日は
そうだ。思い出した。あの夢と一緒だ。僕は昨夜見た夢の内容と一致していることに気が付いた。
「つまりこの後は…」
僕は廊下の奥の方を見た。その先には階段と曲がり角がある。場所まで一致したのだ。僕は何かに引き寄せられるような感じで階段の近くまで向かった。もしかしたら、もしかしたらという気持ちでいっぱいだった。皮膚に刺すような冷たい風が吹き――。そして……。
階段から足音が聞こえて来たのだ。
僕はこれまでの学校生活の中で一番、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その人は夕暮れの
(あの人だ!)
あの人だ、間違いない。僕が目にしたのは、夢でみたあの女性だった。美しく
(これは現実だよな?だったら……)
僕は自分の脚を動かそうと試した。――普通に動く。夢と違ってこれは現実なんだ。不意に止まったりはしない。僕はそのまま彼女に近づいて声を掛けた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
僕は学校へ登校していた。いつもの通学路の信号機。赤色に光っていたのでその場に止まった。僕はスマホを取り出して、時刻を確認する。
火曜日・7時50分
僕は空を見上げた。青い空が広がり、少しある白い雲。僕は目を閉じて。
(いやいやいやいや!無理だろ!僕が夢の中であったからという理由だけで声を掛けられるわけ無いじゃん!あっちからしたら相当気持ちの悪い人に決まっている!)
そう、結果は失敗に終わった。でも完全に話掛けなかったわけではないのだ。
昨日の会話は――。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あの、生徒会総会の準備でわからない所があるんですけど教えてもらっても良いですか?」
「あぁ君は?」
「水瀬柚です」
「柚君だね!わかった、私は『
「よろしくお願いします」
「それで?どこがわからないの?」
「あ、あの…ここで」
僕は適当な所を指で差し、紗江にみせた。そして椅子運びの欄の所に差していたことを気づいた。恥ずかしい、猿でもわかるような内容である。慌てている所が丸見えだ。それでも紗江は――。
「あーこれねーこれは体育館の倉庫から…」
と丁寧に教えてくれたのだ。僕は恥ずかしさと
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(気持ち悪すぎるだろ、流石にもう少し
僕は学校についていつものように授業を受ける、案の定内容は全く入ってこなかった。昼休みに昨日と同じようにボーっとしていると――。
「おーい!みなせー昨日の委員会はちゃんと行ったかー?」
駿が僕に話してきた。僕はハッとして我に返る。
「あぁ、ちゃんと行ったよ」
「お前またボーっとしてただろ、やっぱり女でもできたんか?」
駿は笑いながら冗談交じりに聞いてきた。
「うっせよ、ばーか、そんなんじゃねーし」
嘘だ。本当は駿の言った通りである。僕は昨日の紗江のことを夢中になっていたのだ。だけどこんな奴に察せられたくないんだ。
「まぁそれは良いとして、生徒会ではどんな仕事をするの?」
「椅子とか出す、裏方の係だよ」
「あーそうか楽そうで良いじゃん」
「そうか?」
その後にチャイムがなり、駿と別れ、授業を受け、家に帰り、そのまま寝た。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
見通しの悪い住宅地。
「こっちに来い!」
「やめてください!」
「うるせ!黙ってろ」
水曜日・15時30分
「誰か!助けt…」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……え!」
目覚めると朝だった。恐ろしい夢を見た。内容は紗江が他の学校の奴らに絡まれて、そして…。いや、
僕は怯えてしまった。情けないとは思っているが、僕は軟弱である。喧嘩は無理。だったら、会う前に避ければ良いのでは――。幸いこの夢を見たのは僕だけである。ならば行動するしかない。
昼休み――。
僕は五時間目の生徒会総会に向けた準備をしていた。無駄に指示が多い先生達の言うことを聞いて椅子を並べていた。
「頑張っているみたいだね」
僕は後ろを振り返った。紗江だ。僕は少し驚いて、すぐに
「お疲れ様です。生徒会総会、頑張ってください」
紗江は次の生徒会執行部の書記を希望していることをチラシに載ってた。真面目な方だから適していると思う。
「うん!私は次の書記候補でスピーチあるから凄い
「紗江さんなら大丈夫ですよ」
「ありがとう!柚君!」
「あの……」
言葉が
「うん?」
紗江が寄ってくる。
「ペンを買いたいから一緒に見てもらえませんか?」
(なんだこれ、意味わかんなすぎる焦っていたとはいえ、こんな子供染みたこと)
「良いですよ」
「え、良いんですか?」
「良いよー」
「ありがとうございます!」
こうして、紗江と別れて、生徒会総会が始まって、無事に終わった。
僕は片付けをした後に、紗江と会って、文房具店まで向かおうとしていた。僕は夢の中と違った、道を通った。この調子で行けば大丈夫。
「ねぇ、柚君こっち行かない?」
紗江が聞いてきた。差した方向は住宅地である。しかも見通しが悪そう。
「そっちはあんまり行かない方が……」
「でもこっちが近道だよ?」
困った。僕はスマホを見て、時刻を確認した。
水曜日・15時8分
時間帯としては問題はなかった。だけど万が一何かあったら――。
「ほら!柚君置いていくよ~」
僕は結局、紗江と一緒に行った。
間違いだった。交差点の曲がり角でぶつかった。現れたのは如何にも柄の悪そうな人だった。多分、別の学校の奴らだろう、ここら辺では、見かけない制服である。
「痛っ!なんだお前、あん?おい良い女と一緒じゃねーか」
僕はその人を前に何も言えなかった。怖くて震えていたのだ。それを察したのか紗江は「私は大丈夫だから」という一言。あの夢の通りとなったのだ。
でも僕は逃げたくなかった。紗江を置くなんて絶対に嫌だったのだ。
僕は紗江を後ろにやり、前を出て、その男の間合いに入った。男はなんか言っていたが、何も聞き取れなかった。心臓が大きく
僕は壁に頭をぶつけ、意識が飛んだ。
「……ん」
「あ、起きた柚君!」
次に眼が覚めた時は、僕は近くの公園に来ていた。それにしても距離が近いのはなんで――。
「……あ!」
僕は紗江に
「ダメ!まだもうちょっと大人しくしてて」
紗江に言われ、このままにすることにした。紗江の香りがする。暖かく、とても気持ちが落ち着く感じがした。太ももが柔らかい感触で、今にも眠ってしまうそうだった。
「あの男は?」
「あいつなら柚君が意識を失ってから責任から怖くなって走って逃げたよ」
「そうなんですね」
「それで、私がこの公園まで、運んできたの」
とりあえず、紗江が無事で良かった。にしてもかっこ悪い姿をしている。
「紗江さん、ありがとうございます」
「いや、謝らないといけないのはこっちなの本当にごめんなさい」
そう言った紗江は今にも泣きそうな顔をしていた。
「どうして?」
「実は私、放課後にあなたと会う夢をみて…」
僕はその発言に驚いたが紗江が続けて言う。
「それが
紗江はそのまま
「本当にごめんなさい」
紗江は僕に
「紗江さん実は…」
僕は紗江に自分も同じような夢をみたことを話した。紗江とは夢の中で会ったこと、紗江が男に襲われた夢について――。
「そうだったんだ、だからあの時の場所が違ったんだ…本当にごめんね」
「いやむしろ人間らしい好奇心で良いと思います」
「なにそれ」
紗江がクスッと笑った。僕は少し安心して続けた。
「でも僕はかっこ悪いですね、こんな姿で…」
「そんなことないよ柚君」
紗江は僕の両方のほっぺを暖かく包み込むように手を置き、顔を近づけた。時刻は16時50分、夕日が大きく、
「本当に、、、かっこよかったよ!」
夢でみたあの子と僕は。 Tukisayuru @tukisayuru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます