naho

食連星

第1話

「兄さん.気持ちい?」


「起きたの?

起きてたの?

表情見てよ.」


「ゆさゆさしてるし

裸眼じゃ無理.」


「ふぅん.

ま,仕方ないね.」


「…何が.


あぁ.

カグヤだったよ.

月の子さ.」


「そうか.

…いつ?」


左手をぼんやり眺めて,

ふいに握ってみた.

思ったように動く手を持って,

思ったように動かせない人.

兄さんを見て…

口をつぐんだ.

兄さん,私居なくて生きていける?


「さぁ.」


「決まってんでしょ.

しっかりスケジュールが組まれてるって話.」


「よく知ってるね.

あれも知ってる?

大金が手に入る.」


口元だけ上げて横目で兄さんを見る.


「知らないな.」

口元が堪え切れなく歪む兄さんを見て,

嘘つきと思った.

私は…

兄さんがいないと生きていけない.

生きていけないのに,永遠を生きる.

兄さんも…


「兄さんもカグヤ?」

「な訳ないよ.

ここに居ないからな.」


終わりかけの惑星は

奇妙な奇病を持って希望とした.

永遠と引き換えに

探索をする.

そこに希望は無いのに,

希望を託されて.


「兄さんには生きてて欲しいよ.」

「一緒だよ.」

笑いながら繋がるのは

遠い気持ちを持って

今を生きてるから.

重なる時は永遠ではなく

刹那を持って

これからを生きる.

素晴らしいのだろうか.

綺麗な世界なんだろうか.


「兄さんのいない世界では生きていけないよ.」

「いつでも,ここにいる.」

「うん.」

うん.

だけど…

ここに私はいられないんだ.

だから,一緒には,いられないんだ.


見つからなきゃ戻ることが出来ない.

私の永遠を使って

私の希望しないものを

永遠に

探し続ける.

存在するのか分からない希望の星を.


「逃げよう.一緒に.」

そこにこそ希望があるんじゃないのか.

ねえ同じ気持ちじゃない?


「ははっ.

どこに?

どこへ行っても

生きられない俺らは.

お前に期待する人たちを裏切って

どこまで逃げるつもりなんだ.」


「何で…

常識を出してこようとするんだよ.」

ただ,一緒に逃げようかって言うだけなのに.

そこすら言ってくれない.


「代わりに行ってやろうか.」

思い切り顔を見てしまった.

「行ける訳ないよ.

背格好も…顔つきも…

全く似てないじゃん.」

兄さんが果てで1人力尽きる方が辛い.

「私,行くわ.」

忘れて.

ただ,あなたが幸せであればいい.


「お金は,お前持っていったらいいよ.」

「お金使う所無いんだから.

持っていっても何もならないんだよ.」

「こっちだって…

お前の代わりは,お金じゃねぇんだ.」

「えっ!?」

「お前の代わりは無いって.」

「ん~.」


それだけ持って永遠に生きるわ.

沢山の涙を流して.





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

naho 食連星 @kakumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る