失敗作の呪い
綿麻きぬ
制御
眠れると思っていた午前0時を過ぎ、眠れないと気づいた午前3時。僕の頭には声が響く。いつまでも直らない欠陥を抱えた失敗作である僕は、頭を抱えて苦しむ。どこか壊れている僕は聞こえてくるモノが僕の本性だと思っている。もしかしたらこれは思い込んでいるだけで、違うかもしれない。だけどきっと思い込んでいた方が楽だから、僕は思い込み続ける。
聞こえてくるのは頭の片隅にずっと存在するどす黒い願い。それは実際にしてはいけないこと。でも、ふとした瞬間に手が伸びる、ふとした瞬間に思考が乗っ取られる、ふとした瞬間にイメージができる。それを僕は抱えて生きている。褒めて欲しいとか、そんなものは要らないから僕を成功品にしてくれ。
そんなことを思っても僕は永遠に失敗作なのには変わらない。だから、僕が僕自身を制御するために薬を飲んで、カッターで体を切り、頭を殴る。それでも僕は正常にならない。どれだけ薬を飲み続けても、大量に飲んでも、深く切りつけても、赤い線を無数に刻み付けても、フライパンで頭を殴っても、床に打ち付けても、僕は異常だ。
その異常さは直らない。だから僕は隠し通して欺いていく。僕自身も欺いていく。欺いた先には道化師の僕が待っている。道化師の僕は仮面を被って、人々に笑顔を撒く。その下には人間はいないのに。
でも、人に笑顔を撒いた先には救済がある。その救済を求めて僕は人々に笑顔を撒いていく。嫌いなあいつも、僕が好きなあの子も、僕を好くゴミにも、笑顔を撒いていく。撒いた先には何があるのだろうか。救済を求めて憐れに群がる虫けらになる。そして、僕の仮面の下は醜くなっていく。
だから僕は決めたのだ。この世界を僕の手で滅ぼしてしまおうと。
呪いの文字を書こう。この紙に僕の血のインクで呪おう。あぁ、文字が躍っている。僕のことを許そうと、世界の代わりに僕に許しを乞う。だけど、僕は許される存在ではないし、僕は許されたくない。
クラクラしてきた。インクもなくなってきた。そして呪いの言葉も終わりが近づいてきた。
あぁ、僕の未来がみえる。
失敗作の呪い 綿麻きぬ @wataasa_kinu
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