穴だらけのベールを被る

綿麻きぬ

ボロボロ

 さぁ、今日も纏おう。偽の僕というベールを。もう穴だらけのベールを。


 このベールは気持ち悪い僕の本性を隠すモノ。醜く汚い僕の心を隠す。隠して消し去ってくれると信じて、一縷の望みを掛けて、僕は被る。


 昔、穴などなかった僕のベールに君は触れた。その手は温かくて、優しくて、僕が惹かれるには十分だった。誰からも感じたことなかったモノだった。


 君は僕の纏っているモノをそっと剥がした。いいや、僕が君になら隠しているモノを見せて良いと思って、取ったのだ。


 纏っていない僕は、隠していない僕は、君が思っていたのと違ったか? 違っていたのだろう。


 違っていたから? 僕に触れていた手を戻したのは。そうだろう。そうだろうよ。


 違っていたか? 思ったより醜かったか? 醜かったのだろう。そして君にとっては重すぎたみたいだった。


 もう誰にも触れさせないから。もう誰にも見せないから。もちろん、君にも見せないから。どうか、僕にもう一度触れて欲しい。


 離れてしまった君はどうやったら戻ってくる?


 隠していればよかった? 心を開かなければよかった? 見せなければよかった?


 ごめんなさい、ごめんなさい。僕がバカだったのだ。僕が間違えていた。


 だから、お願いだから、もう一度、一緒に歩ませてくれ。


 分かってる、分かってるよ。もう君は声すら交えないって。


 でも、もう一度君が、君と歩みたいからボロボロの穴だらけのベールを被って僕は待つよ。

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穴だらけのベールを被る 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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