第11話 宣戦布告

 私たちがご飯を食べに来ていたら、まさかまさかの優也と雄二ゆうゆうも同じ店に来るという偶然に見舞われていた。


 あ、ゆうゆうっていうのは、優也と雄二で二人ともがつくから私が勝手に呼んでいる愛称みたいなもの。


 ……って、そんなことはどうでも良くて、それから私たちは相席して一緒にパスタを食べるという状況に陥っているのだ。

 今までも雄二を含めたみんなで一緒に出かけたことはあったけど……やっぱりどれだけ時間が経っても、好きな人と一緒っていうのは緊張するな……


「まさか明里と笹森さんが友達だったなんてなー」


 雄二は全然知らなかった、と驚いた声を上げている。


「実はさっき初めて会ってさ、アニメの話で盛り上がっちゃって」


「へ〜、そうなんだ」


 あれ? っていうか、


「雄二も奏ちゃんのこと知ってるの?」


「ああ。何回か遊びに行ったんだよ」


「そうなんだ?」


 ん? 奏ちゃんまだ入学したばっかりだけどもう知り合いなの? 

 そういえば雄二が好きなのって一年生だよね……


 もしかして……!!


 ……いや、今考えてもしょうがない。冷めちゃう前に、今はパスタを食べることに集中しよう……





 その後も私たちは会話をしながら、それぞれパスタを平らげた。


「やっぱ美味かったな〜」


「だね〜」


「私は今日初めて来たんですけど、すごく美味しかったです!」


「ここ、あんまり高くないしね」


 私たちはお店を出てから帰路につき、パスタの感想戦を繰り広げていた。


「……かり」


 ……でもやっぱり、が気になるなあ。


 雄二は奏ちゃんのことが好きってこと……?


「明里?」


「あっ、ごめん、ちょっと考え事してて」


「大丈夫か?」


「大丈夫大丈夫、ごめんね?」


 つい考え込んでしまって、雄二に話しかけられているのに気づかなかったみたいだ。


 参ったなあ、こんな調子じゃあ先が思いやられるよ……


「…………そういえば、奏ちゃん。桜祭りどうだった?」


 と、優也が突然そんなことを奏ちゃんに聞いた。


 桜祭り? 百夏公園のことかな? 


 私が疑問に思っていると、奏ちゃんは動揺したような様子で、優也に聞き返していた。


「え、なんで中西先輩が知ってるんですか?」


「いや、雄二から聞いたから。雄二と一緒に行ったんでしょ? 俺今年桜祭り行ってないからどうだったのかなって」


「まあ……楽しかった、ですよ……」


「え? 奏ちゃん、雄二と桜祭り行ったの?」


「はい、まあ……」


 奏ちゃんはちょっと照れながら答えてくれた。


 でも、一緒に桜祭りに行ったんだったら……やっぱり雄二が好きなのって、奏ちゃんってこと!?


 ……たしかに奏ちゃんすごい可愛いし、素直でいい子だから、好きになるのも無理はないのかも……。


 それに、デートもしたって言ってたから、きっと間違いないのだと思う。





 その後はたわいのない話をしながらみんなで歩き、ゆうゆうの二人と別れてからは、私と奏ちゃんの二人で一緒に帰っていた。


「今日は楽しかったねー」


「はい! こんなに大人数で出かけたの久々です」


 奏ちゃんは満面の笑みでそう言ってくれる。やっぱり可愛いなあ。


 でも……諦めちゃダメだって、言われた。諦めちゃダメだって、思えた。


 私は、


 そう教えてくれたのは、他でもない、奏ちゃんなのだから。


「私こっちだから、またね」


「はい、今日は楽しかったです!」


 私は奏ちゃんに手を振る。


 そして、はっきりと声を上げて言った。


「あと……私、絶対負けないから!」


 奏ちゃんはキョトンとしているけど、私は小走りにその場を去った。


 これは、宣戦布告だ。


 雄二が今好きなのは間違いなく奏ちゃんだけど……私は、絶対に雄二を振り向かせる。そのための、意思表示。

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