第10話 遭遇
どうしよう……全然何も思いつかないまま放課後になってしまった……
私は優也の話を聞いてからずっと、雄二攻略に向けての作戦を考えていたけれど、これと言って使えそうな案が浮かばないまま放課後の校舎を歩いていた。
「いたっ」
そんなことを考えていると、突然強い衝撃が私の体に走った。
「あ、すみません!」
前を向いて歩いていなかったため、廊下を歩く人にぶつかってしまったみたいだ。
「こちらこそ、ごめんなさい!」
そう言って謝ってきたのは、毛先が軽く外にはねているのが印象的なミディアムヘアーの、すごく整った顔立ちをした、どちらかと言うときれいよりも可愛いと言った言葉が似合う女の子だった。
そしてその子は、周りに散らばったプリントを拾っている……あっ! きっと私とぶつかった時に落としてしまったんだろう。
ボケっとしている場合じゃない。すぐに拾わないと……
「ご、ごめん。すぐ拾うから」
「すみません、ありがとうございます」
プリントを全て拾い終え、私は女の子に向き直る。
「これ、どこに運ぶの?」
こんなにたくさんのプリントを持って廊下を歩いていたんだから、きっとどこかに運ぶんだろう。
「あっ、はい。先生に頼まれて職員室に……」
「じゃあ、私にも半分持たせてよ」
私とぶつかったせいで時間をかけさせてしまったのだからこれくらいはしないと。
「え、でも……」
「私のせいでプリント落としちゃったし、これくらいは手伝わせてよ」
遠慮気味のミディアムちゃんから半ば強引にプリントをもらうと、二人で職員室へと歩き出した。
◆
職員室に行く道中、私はミディアムちゃんとの会話が弾んでしまい、
「え! 奏ちゃんこのアニメ知ってんの!?」
「はい! 原作の漫画も全巻集めるくらいで……」
すっかり仲良くなってしまった。
奏ちゃん、素直でいい子だなあ。
ちなみに今は、私がリュックに付けているキャラクターに奏ちゃんが気づいたのがきっかけで、アニメの話をしているところだ。
「アニメ好きな友達とかいないからさ、こんなに話せたの久々だなあ」
「私も……まだ学校始まって時間経ってないから、友達ほとんどいないんですよね……」
奏ちゃん……!! ここは年上として、私が人肌脱がなければ……!!
「じゃあ、これからご飯食べに行こうよ!」
「えっ、いいんですか?」
「もちろん! 私ももっと奏ちゃんと話したいし!」
と、いうわけで私の新しい
◆
私たちが来たのは、駅前のパスタ屋だ。
何か食べたいってなった時、駅に近いのはわし高の良いところだと思う。
「〜〜っ、美味しいっ!」
ここのパスタは味もさることながら、値段が手頃なこともあって、学生に大人気のお店だ。
「ミートソースも美味しいですよ!」
奏ちゃんも喜んでくれてよかった。
入学したばかりで、このお店にも来たことないみたいだったから。
美味しそうにパスタを頬張る姿も可愛らしいなぁ。
……雄二も、こういう子がタイプだったりするのかな……?
「はあ……」
!! つい口に……!
「明里さん……どうかしたんですか?」
「ああ、いや……ごめん、なんでもない」
「そういえば廊下歩いてた時も何か考え事してるみたいでしたけど……私でよければ相談になりますが……あっ、もちろん話しづらければ全然いいんですけど……」
奏ちゃん……
「実は、私好きな人がいてさ」
奏ちゃんには話してみてもいいかな。
今日初めて会ったけど、いい子なのはすごい伝わってきたし……何より、こんなに心配そうな目で聞かれて答えないのは気が引ける。
「でも、その人には最近他に好きな人ができたみたいなんだよね。直接聞いたわけではないんだけど……」
奏ちゃんは、何も言わずにすごく真剣な表情で私の話に聞き入ってくれている。
今はそれがすごく嬉しい。
「しかもその子ともうデートにも行ったらしくて……」
私が一通り話し終えると、奏ちゃんは一呼吸置いて、力強く一言。
「明里さんは……諦めちゃだめだと思います」
「だってまだ、その人は付き合ってないんですよね? っていうか、付き合ってたとしても、明里さんのその人を好きだっていう気持ちが変わらないなら、諦めちゃだめだと思います」
「明里さんはすごいきれいだし、積極的にアタックすれば、絶対振り向いてくれますよ!」
「奏ちゃん……」
こんなにも励ましてくれるなんて……本当にいい子だなあ。
「あ、なんかすごい無責任なこと言っちゃいましたけど、明里さんにはそれだけ魅力があるっていう意味でっ……」
私がしみじみとそんなことを考えていたら、奏ちゃんはあたふたしながらなんか必死に弁明している。
「ふふっ」
そんな様子がなんかおかしくて、つい笑ってしまった。
「ちょっ、ちょっと明里さん、何がそんなに面白いんですか……」
「ごめんごめん、でも、なんか元気出たよ」
むくれている奏ちゃんに、私はそう声をかけた。
積極的にアタック……か。
なんだかあれこれ考えてたのがバカらしくなってきた。
私は、自分の"雄二を好きだっていう気持ち"に素直になればよかったんだ。
難しいことを考える必要はない。私なりに、雄二に振り向いてもらおう。
「奏ちゃん! ホントにありがとね! 私……自分なりに振り向いてもらえるよう、頑張るよ!」
「はい! 頑張って下さい!」
私、応援してますからと、まるで自分のことのように奏ちゃんは喜んでくれている。
そんなこんなで私たちは食べるのを再開し、楽しくおしゃべりしながらパスタを食べていると、
「あれ? 明里?」
!! そこには、見覚えのある二人の男子が……
「雄二……?」
雄二と優也のゆうゆうコンビが、そこにはいた。
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