第7話 先輩はリア充?

 

 先輩はずるい。


 私の連絡先が欲しいなんて、あんなに素直な目で言われたら断れるわけがない。

 まあ……別に断りたい理由があったわけではないんだけど……。

 でもまさか、昨日まで全く接点のなかった年上の男の人と連絡先を交換することになるとは思わなかった。


 私は帰宅後、自室のベットに仰向けになりながら、今日の出来事を振り返っていた。

「部活に入って欲しい」と言われた時は驚いたけど、それよりも、私と連絡先を交換するために部活を作ったって聞いた時はもっと驚いた。


 もしかして先輩は……


ピコッ


 と、私のスマホから通知音がなった。


「え……?」





「たっだいま〜!」


「……母さんや」


「ええ……お父さん」


「ついに……」


「息子の頭がおかしくなってしまったのね……」


 家に帰ってからの俺は、父さんと母さんが、「とうとう息子がおかしくなった」と騒ぎ立てるくらいにはご機嫌だった。


 部活が作れなくなったりと、ハプニングこそあったものの、当初の予定通り笹森さんの連絡先を手に入れることができた! ハッピーエンドだっ! ……いやいやまてまて、まだ終わりじゃない。せっかく連絡先を手に入れたんだから、笹森さんに連絡しなければ。


 んー、なんて話そうか?


 俺は自室でしばらく悩み……


「せっかくだから……」


 そうして笹森さんに一通のLINNを送った。





 『よかったら一緒に今週の土日にある桜祭り行かない?』


「え……?」


 スマホを確認してみると、通知の正体は先輩からのお誘いだった。


 え? え? "一緒に"っていうのは、その……やっぱり二人でってこと!? これはデートの"お誘い"ってこと!?


 いきなりの出来事に混乱してしまう。でも、私は一つ分かってしまった。


 もしかして……と思ったけどやっぱり先輩は……"リア充"なんだ!


 噂には聞いたことがある。


 リア充は溢れんばかりの行動力で、自由に生き、人生を楽しく謳歌することに長けてるって……思えば、今までの先輩の行動は、リア充のにピッタリ当てはまる!


  はわわわわ……! 私、リア充の先輩に目つけられてる!? どうしよう……なんかリア充の人って怖いイメージなんだけど……


「急に誘っちゃったから、無理なら全然気にしなくてもいいんだけど……せっかくだから、笹森さんと行きたくて」


 私がスマホ越しに先輩のリア充オーラに萎縮していると、続けてこんなメッセージが来た。


 ええええええ〜〜〜〜! リ、リア充ってみんなこんな感じなの!? わ、私と行きたいって……こんなふうに誘われたら断れないじゃん! 


 私は混乱してベットの上で横に何度も回転し、ひとしきり動いて満足した後、ふと思った。


 ……でも……リア充の人は怖いんだけど、先輩はそこまでじゃない気もする。

 先輩と出会ってからまだ2日しか経っていないけど、きっと優しい人なんだろうなと思う。


 ……まあ、桜祭りくらいはいいかな? 私も行きたいと思ってたし……


 そう思い、私は先輩に返事をする。





 俺が笹森さんにLINNをしてから数分。一体どういう返事が返ってくるのか期待と不安でもうテンションがおかしくなりそうだった。


ピコッ


 きた!


 もう少し遅ければ、父さんたちに更なる心配をかけるんじゃないかという頃、ようやく笹森さんから返信がきた。

 と言っても、実際の時間はそんなに経っていないのだろうが、俺は一日千秋の思いで待っていたのだから、喜びもひとしおだ。


『いいですよ。先輩はいつがいいですか?』


 そしてスマホ画面の中には、さらに俺を喜ばせてくれる内容の文面が。


「きーーたーーーー!!」


 喜びのあまり、思わず叫んでしまった。それほどまでに、俺には嬉しい知らせだった。

 その後は当日の具体的な日時を決め、俺は笹森さんと行く桜祭りへ思いを馳せ、を待つことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る