あなたは覚えていますか?

ふわり

あなたは覚えていますか?

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あなたは覚えていますか?



その日も、どこへ連れられるのかわからないまま、

私はあなたについて行った。


春だというのに、まだ肌寒く、

静かに雨が降っていた。


どこへ行くのだろう?

あなたは無言のまま歩く。

いつものことだ。

私も黙って、あなたと並んで歩く。


いつの間にか、公園に来ていた。

初めて見る場所だ。

こんな雨の日に、どうして公園に?



ブランコや滑り台のある広場を抜けて

小さな小路を進むと、

突然、あなたは足を止めた。


あなたが私の手を取って導いた先には、

見事な藤棚があった。



「わ〜。きれい!こんなに長い藤のトンネル、初めて見た!」


高揚する私の横顔を、

あなたは満足そうに見つめていた。


「君に見せたくて」


その一言が嬉しい。

あなたが私のためにしてくれること、

ただそれが嬉しい。


「ありがとう」





ふと、懐かしくなって来てしまった。

あの頃と変わらず、紫色のトンネルを歩く。



「ここが、最後に来た場所だったね」




あなたは覚えていますか?



あなたとの思い出の場所。

あなたも見ているだろうか?

空の上から、この紫色を。




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