第10話 遺産相続問題に出会ったら
話し合いから二日後、ワタシは旦那くんに『公正証書』の件はどうなったのか聞いてみると、どうやらまだ準備ができていないらしいとのことであった。
義母曰く、公正役場に書類作成の電話をしたそうだがすでに役場の日程が埋まっており、一番早くても二ヶ月後になるらしい。
「予約がとれないなら仕方ないよね……」
旦那くんが肩を落とす。が。
「いやそれ嘘じゃねえの。待ってて」
「えっ」
ワタシはその場で義母が予約いっぱいで断られたという公正役場に電話する。
すると、あまり待たないうちに担当の人が出た。
「本日はどういったご用件で……」と聞かれたので、こっちは早急に『公正証書』を作成したいことを説明する。義母の話が本当なら、ここで予約どうこうと言われるはずだが…………
「あ、はい。公正証書ですね。公証人の準備もありますので一番早い日だと……明後日になりますがよろしいでしょうか?」
「はいお願いします」
わずか数秒であった。
ど〜こが二か月待ちじゃいあのクソババア〜ッ!
こんなにもすぐバレる嘘をまだ平然とついてくるメンタルに驚きだが、そんなババアの嘘をすぐ信じてしまう旦那くんも旦那くんである。
「今すぐお義母さんに明後日予約とれたから公正役場に行ってもらうって連絡して。今すぐね」
「わ、わかった!」
旦那くんから公正役場を予約したと伝えた結果、義母は観念したらしく、公正証書を書くことを了承した。
証書の内容は、もちろん遺産相続に関してだ。
義母が亡くなり次第、義母の所有するすべての資産は旦那くんに相続されるという契約である。
そしてパチンコ側は一切遺産相続に関与しないと約束させる。
これらを法のもときっちりと書いてもらうのだが、ギリギリまで絶対に油断はできない。
当日逃げられないようワタシと旦那くんは朝から義母に同行、さらに書面内容を土壇場で変えられないよう、公正証書の控えを公証人から貰う手筈となった。
ここまでするかとお思いの方がいれば、答えたい。
遺産相続問題は最低限でもここまでしないとやれないのである!!!!!!
今回の件、義母はしぶしぶ公正証書を書くという結果に落ち着いたが、ぶっちゃけ公正証書という法律も無理矢理無視して勝手放題する輩はいるらしい(弁護士さん談)
法律なんてものはまともな人間同士の約束ごとであり、まともじゃない奴らにはまったく通じないというわけだ。どうなってんだほんとに。
だからワタシは義母がこれで終わるとは思っていないし、今後も監視すべきだとも思っている。
現代日本において、遺産相続問題は、年々と数が増加している。
それがもとはどんな仲良し家族であろうと、血を分けた兄弟姉妹であろうとだ。
甘えてはいけないのだ。油断してはならないのだ。
絆なんてものはない、と思っておいた方がもしかするとマシなのかもしれない。
金。金だ。金はいわば自分たちの将来である。
そのために如何にして勝利を掴むかが大切なのである。
悲しいことに、善人は損をするし、信頼なんて便所のネズミのフンにも劣るだろう。
少なくともそれくらいの心持ちで敵を迎え討つことが必要だと……ワタシは思う。
そもそも何度でも言うが、今回の件は最初から旦那くんが、亡くなった義父がちゃんとしていれば起こらなかった事態だ。
優しさなんて、そんなものは日頃の人付き合いの中だけで充分だ。
他人にいいようにされて騙されてあとから泣きを見る──そんな人間にはなりたくない。もしその気持ちが少しでもあるのなら…………。
覚悟して、心に修羅を宿すことをお勧めしたい。
義母がうちの財産を狙ってきた話 小山ヤモリ @koyamayama
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