題名「見えない虹をつかまえるはなし」
中村翔
秋
「ねえ?こんな噂を知ってるかい?」
「虹の根元に差し掛かる場所」
「その下には空が詰まってるというはなし」
「空は果てしない」
「空は遠い」
「そして夕空は儚い」
「そんな空をつかまえに」
「そんな昔話を聞いてくれるかい?」
2012年梅雨
私は秋。よく亜紀とか明希とかはたまた璃とかと間違われる。
そんな私には3つ年上の彼氏がいる。
といえば聞こえはいい。が彼氏の仕事はというと・・・売れない小説家。それも携帯小説専門家のそんな彼の生活費を出してる私だった。
「でも家事はやってくれてるんだよね・・・」
まあ完全にヒモの彼氏をもつよりかは仕事に行ってる間に掃除、洗濯その他家事諸諸…
やってくれてるから文句はない。
仕事から帰って出来立ての(決して上手いとは言えないけど)ご飯が待ってるのは心理的効果も高い。・・・わかってはいないだろうけど。
そして何よりたまに自慢げに見せてくる小説がおもしろくて。もう私専属の人になればいいとさえ思う。
僕「秋ちゃん。メルアド使っていい?」
メルアド使っていい?とはつまり小説サイトには携帯では投稿できないサイトもある。
そしてたまにだが、パソコンで読む人用に読みやすいように文字数を調節したりする。その時に、もう一つのPC用のフリーメールに小説を丸々送り付ける事でわざわざPCで打ち直さずに投稿できるというわけだ。
秋「ん、いいよ。ヤホーのやつ使っちゃって」
仕事柄というか捨て垢つまりいらないメルアドは複数持ってる。
秋「そうだ。バックアップ取るついでに見てもいい?」
バックアップは定期的に取って欲しい。と
小説家というのは過去の自分の作品を肴に酒を飲むものだと教わった。
秋「ん〜?なになに?虹と追いかけっこする話ですか。なるほどなるほど?」
僕「秋。声に出されると恥ずい。」
秋「あ。ごめん。声でてた?」
私は考え事をするとき考えてる事を声に出してしまう。小説を読むならなおさらだ。
だけど作風はミステリーとかではない。
その多くが恋を題材にしたものだ。
しかし彼の文体からかなぜか考察してしまう。
もういっそのことミステリー書いたらいいのに。
僕「だって楽しいからさ。」だそうだ。
(この文体ヤバイ・・・引き込まれる・・・)
新作の内容はこうだ。
虹の根本とよばれる場所で空と出逢った少女が空と恋愛をして結ばれる。というような甘ったるい少女漫画をジュースにしたようなものだ。
秋「ふう。しかしなー。この空くんの言ってた‘’終わらない秋‘’ってどういう事?あと虹に鍵がかかってたけどどこから鍵をもってきたの?」
僕「鍵は最初に両親から貰った宝箱に入ってた描写があったよ。鍵にNIZIって書いてあったから主人公は虹を探し始めたんだよ。」
秋「じゃあ終わらない秋っていうのは?」
僕「都市伝説があるんだよ。2000年の始まりにして終わりの時。世界に終わりを告げた終わらない秋がやってくるってね。ブックマークしてあるから後で見てみたら。」
そういうとお風呂に入ってしまった。
小説を読み返す。彼曰く小説はネタさえあればいくらでも書ける。とかなんとか。
ゴクッゴクッ。
ビールで喉を潤した。確かに肴にピッタリかも。
私は彼のネタを探す能力は、かっている。
都市伝説やコピペとかに至るまでブックマークを埋め尽くしている。・・・その中にエッチなサイトが隠れていることもおみとおしだ。
だけど指摘しても男の子の性欲はすさまじいからなあ。夜の関係も・・・おっと思わず口からイケナイ言葉が飛び出るところだった。
ペロっ
(今日もお盛んですなあ。。。)
カチッカチッ
履歴を遡っていく
(ほおほお。これはけしからん。)
(けしからんから今度やってみよう)
カチッ!
んー?エッチなサイトの間に都市伝説のまとめサイトが挟まれていた。
(さっき言ってたやつ?なになに…)
都市伝説怖い闇の掲示板まとめ
ノストラダムスの大予言は実は2000年じゃなかった!?
皆様もご存じのノストラダムス。その予言に世界が滅びる予言があることをご存じだろうか?
そう彼の有名な2000年の預言だ。
しかし実際知っての通り外れている。
しかし待ってほしい。この予言に新しい情報が入ってきたのだ!
2000年ではなく2000年が始まるとき。
実は勘違いされがちだったこの一文。
2000年と言われてきたのだが新しい解釈によると2000年初期にかけて。
つまり今年も例外ではないということだ。
(2012年6月現在)
そして新しくこの一文が追加された。
’‘終わらない秋’‘が世界を終わりに導く。
この終わらない秋には不確定な部分が多かったのだが、米政府によって先日発表された生物兵器。つまりウイルスがこれを裏付けている。
米政府:このたび開発した生物兵器。これは地球の生物から二酸化炭素の排出を許さず地球温暖化に新たな一手を投じるものである。この生物兵器によって二酸化炭素を2022年までに昭和初期値まで持っていくことをここに宣言する。(一部抜粋)
どうだろう?これだけ見れば素晴らしいと言わざる負えないだろう。
しかし一説によると生物の発する二酸化炭素の量は90%を超えるとする論文も発表されていて非常に問題視されている。
何が問題なの?と思われるかもしれないが実際二酸化炭素が減り続けると温度が下がりつづけ氷河期に突入してもおかしくないのだ。
ここで先ほどの文を持ってこよう。
’‘終わらない秋’‘とは氷河期を表してるのではないだろうか?
我々はこの予言にこのような見解を示している。(都市伝説怖い闇の掲示板まとめサイト)http:// XXX .XXX .cx .jp / トップ/
なるほどなるほど。ノストラダムスねー。
僕「ね。どう思う?米軍の兵器ってのは。」
秋「おわっ!上がったんなら物音の一つでも立ててよ・・・。」
私を脅かして何が楽しいんだろう。
秋「そうだね。ネットってのはフェイクニュースであふれてるからね。そもそもニュースにもなってない時点でお察しかな?」
僕「でも面白いじゃないか?世界なんて滅びちゃえ〜って秋ちゃんいつも言ってるじゃん。」
秋「ぶ〜。記憶にございません〜!!」
お酒を飲むと大人の本音が出ちゃうものだ。
世界滅びろ願望なんて誰しも一度は考える。
秋「zzz…zzz…zzzzzz……」
僕「寝ちゃったか。虹か・・・。虹の根元は太平洋の真ん中にある・・・ってのはどうだろう?ふむ・・・。」
カタカタカタ。
僕「太平洋に真ん中は存在しない?なになに……太平洋は日本の東側に位置しているが、実際のところ海というのは全てつながっているため真ん中など存在しないのである。仮に太平洋だけを切り取って真ん中を定義するならばそれはハワイ諸島辺りである。しかしハワイ諸島は年々日本に向かって移動してきてるため数年後にはどうなってるかはわからない。か。ハワイかー。ちょっと日帰りは無理だし何より旅費がない。秋ちゃんに新婚旅行ハワイ行かない?って・・・言ってみるかー。秋ちゃんと結婚・・・?フルフル。秋ちゃんの親になんて言えばいいか。はぁ。」
秋「むにゃむにゃ・・・ネコミミメイド・・・ふへへ……すぅーすぅー。」
どんな夢を見てるのだろうか?
酔っ払ったことのない僕には今の彼女の気持ちを推し測るのは難しい。
僕「赤い雪?すごいな・・・北海道でも滅多に見られんだろう・・・。ひさしぶりに散歩でも行ってくるか。」
秋『私は失敗してしまった。ヒントならいくらでもあったのに。失敗した!失敗した!!失敗した!!!』
彼と死に別れてほどなく私は結婚した。
忘れちゃダメなことはわかっていた。でも・・・。
『ごめんね。私たちにあなたを育てる資格はありません。どうかこんな世界の端っこでも。海に囲まれたこの場所で。生きてください。秋。』
母さんは僕を置いて出て行った。父さんは知らない。ふらっと家を飛び出て帰ってこなかった。でも大丈夫だ。虹の根元には空が眠っていた。丁度今年高校生になる。今日もバイトを頑張っているとか。ネットスラングをたまーに口にすることを除けばいい娘に育ってくれている。
秋「あっ私ちゃん帰ってたんだ?からあげあったかな・・・。」
私「秋〜!秋のからあげください!」
2057年虹はもう、永遠に見えない。
終
題名「見えない虹をつかまえるはなし」 中村翔 @nakamurashou
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