116.シドを狙う悪い人がいるの?
ヒスイと並んで水色を塗る。晴れた日のお空の色だよ。お部屋に塗るならもっと薄い色がいいみたい。アベルに教えてもらい、ペタペタと色を広げた。ある程度塗ったら、風の魔法でラーシュが整えてくれる。
薄く綺麗な色が広がった壁を見て、にっこり笑う。天井は濃い青を塗るんだって。そこにお星様も描いてもらう約束なの。礼儀作法のリリア先生、言葉のタカト先生、歴史を教えるミーナ先生も手伝いに来てくれた。
魔法のクナイ先生は、お外で大きな柱を浮かせて運んでる。あの魔法すごいな、僕とヒスイもいつか使えるといいけど。憧れながら、今度は天井用の濃い青を塗り始めた。天井の板は、地面に置いてある。これを後で上に張るの。
先に塗らないと、垂れてきちゃう。そう言われて、上を見上げた。雨みたいな感じかな。頷いてヒスイと作業をする。お星様を描くのは、絵が得意なミーナ先生にお願いした。
「カイ様、ほっぺたに色がついてます」
「どこ?」
「ああ、擦ったらもっと付いて……ぷっ!」
首を傾げて頬を手で擦ったら、水色の上に青い色も付いた。笑うヒスイと手を繋ぐ。色を塗り終わったから、手と顔を洗うんだ。ボリスが巨大な柱を押さえている間に、身軽なサフィーが柱の上を固定した。ルビアも切断を手伝う。黄色いドラゴンが、遠くから木材を運んできた。
「皆、すごいね」
「次は俺の部屋を塗るので、手伝ってください」
「わかった! 何色にするの?」
はしゃいで、今度はヒスイのお部屋に向かう。まだ壁が二つしかなくて、薄いクリーム色を塗った。その間に後ろの壁が出来て、そちらも塗っていく。天井は何色にするのかな。
「大変だ! ラーシュ、どこだ?」
駆け込んできたのは、頭にツノがある魔族の人。羽があって、尻尾も付いていた。いろいろ付いてて羨ましい。僕も羽や鱗が欲しいのに。
「ここだ」
僕達が塗った色を薄く整えたラーシュが声を上げる。ラーシュと違って、黒い髪じゃないお友達は駆け寄って、ひそひそと話した。
「封印した前魔王を、取り込もうとする一派がいる」
「はぁ? もう封印したぞ」
乱暴にラーシュが答えながら、僕の頭を撫でた。封印したから外へ出られないと言ったのに、お友達の魔族は首を横に振った。
「復活させる必要はない。飲み込む気だ」
「……やっぱり、その手の馬鹿は湧いて出るか」
ラーシュは僕と目を合わせ、同じ高さになるようしゃがんだ。両手を握って話しかける。
「前魔王を手放すか?」
「やだ。僕はシドと約束したもん。温めて寂しくないようにするの」
「わかった。叶えてやる」
お友達の魔族と何か相談したラーシュは、黒猫のシドを貸して欲しいと言った。僕は迷う。
「あのね、中のシドが寒かったり怖かったりしない?」
「ああ、大丈夫だ。心配なら一緒に来てもいいぞ」
黒猫のシドを抱いて、僕はラーシュに手を伸ばした。繋いだ手を揺らしながら歩き出せば、気づいたルビアが追いかけてくる。護衛のお仕事、今日はルビアなんだね。
胸の前でシドをぎゅっとする。平気だよ、僕がいるからね。怖くないよ、寂しくないし、寒くもならない。そう話しかけたら、黒猫が動いた気がした。
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