115.あなたが成し遂げたことなの
お屋敷を建てる話を聞いて、お手伝いにたくさんの人が来た。ドラゴンだけじゃなく、猫や犬の耳が生えた人や、大きな狐尻尾の人も。鱗がある人もいたし、ドラクーンからも集まってきた。ラーシュも元気になったみたいで、魔法を使って柱を組み上げる。
僕もお手伝いをしたいと言ったら、お仕事をくれた。旗を振って応援する係だよ。ヒスイは恥ずかしがってたけど、今は一緒に振ってる。
お昼寝とご飯の時間は休憩なの。お勉強は全部、お屋敷が直ってから再開だって。アベルが用意した設計図通りに作ってるけど、勝手に部屋が増えたみたい。形が違うと笑ってた。
僕のお部屋はアスティと一緒。寝るのもお風呂もご飯も、全部一緒にするんだ。だからお部屋は二つ分でひとつなの。大きなベッドも置いてもらえるし、ふかふかの絨毯も用意するんだよ。楽しみだね。
ヒスイのお部屋は近くだけど、間にいくつか違うお部屋を挟んだ。隣はダメなのかと聞いたら、大人になると困るんだと教えられた。大人は仲良しでも近くに住まないのかな。僕は早く大人になりたいけど、いろいろ難しい決め事があると、覚えられなくて困ると思う。
「僕はいつ大人になるの?」
「そうね。あと15年はかかりそう」
あーん、でおやつの果物を食べながら、15年を考える。僕はたぶん5歳くらいだって。あと3回今までを繰り返すの? すごく長いのに……アスティが待っててくれるかな。
「私は成長するカイを見ていたら、すぐだと思うわ。何も心配しなくていいの。怖かったら聞いて。私はいつでもカイが好きよ」
「僕も大好き」
にこにこと食べさせ合い、並んで新しいお屋敷を眺める。尻尾や耳、毛皮に鱗。皆違うの。何もない人族もいて、翼があるドラゴンの運んだ柱を支えたり、屋根の骨組みの上で作業したり。
「仲良しだね」
「これはカイの功績よ。あなたが成し遂げたことなの」
言われた意味が分からないけど、世界は一度怖い思いをして纏まった。だから今度は簡単に壊れない。アスティのお話は難しいけど、僕は頷いた。
綺麗な石の積み木も、大切なぬいぐるみや宝物も消えちゃった。でも一番大切な人は残ってる。アスティ、ヒスイ、ボリス、アベル、ラーシュ、護衛のルビアやサフィー。誰も傷付かなかった。
ぎゅっと抱っこした黒猫は、明日封印に追加をしてもらう。憑依が出来ないようにするって。アスティ達が安心できるならいいけど、シグルドはもう僕になる気はないよ。いつも僕が温めて、寂しくないように話しかけるから。
シグルドも幸せになれるといいな。僕とアスティみたいに。
「カイ、お部屋の壁は何色がいいかしら。水色、緑、白でもいいわね。好きな色がある?」
「僕、水色がいい」
緑はヒスイの色だし、白はアスティの鱗に似てる。だから、壁は違う色がいい。知ってる? 色が違うと余計に綺麗に見えるんだよ。
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