◇閑話◇ 養老孟司先生と格助詞「は」と「が」
ここ数年、東大医学部教授だった、養老孟司先生が出ているNHKの番組を見るようになりました。
正しくは先生が飼っていた猫、「まる(
猫なのに、ナマケモノではないかと思うほどぐーたらで、マヨネーズ好きのまるちゃん(と呼びたくなるほどの可愛さ)。彼の行動には一視聴者として癒されていたのですが、時折挟まれる養老先生の考え方が面白いなぁと思い、次第に著書を買うようになりました。
養老先生の有名な本と言えば『バカの壁』。
『バカの壁』というタイトルはずっと前から知っていたのですが、著者は誰だか分からなかったので、養老先生だと知ったときはテレビを見ていたせいか、ちょっとした親近感で嬉しくなったのを覚えています。
帯には「平成で1番売れた新書」「447万部突破!」「124刷超! 驚異のロングセラー!」と書いてあって、何となく出遅れた感じがしつつ読み始めました。
養老先生は東大医学部教授で、解剖学を専門になさっていた方です。でも読んでみて思ったのは、知識が多岐に渡り、解剖学の話はその中の一部に過ぎないということに驚きました。
虫のことにも大変詳しいくていらっしゃいますが、私が一番驚いたのは「言葉」のこと。
『バカの壁』は数回読んでいるのですが、先生の言葉の知識について気が付いたのは、恥ずかしながら『NIHONGO』シリーズの「Ⅱ」が始まってからでした。
以前、『NIHONGO』を連載している際に、格助詞「が」について、読者の方から質問を受けたことがあります。
格助詞の話は一筋縄ではいかず一度は何とか調べて回答したのですが、後に資料が増え再度格助詞「が」に向き合ったところ、最初に書いた話が的外れのように感じたので書き直したのです。
下記がその内容とURLです。
☆リベンジ★ 主格「が」について https://kakuyomu.jp/works/16816452220696164341/episodes/16816700429644697135
格助詞「が」の話は、資料が増えたことによって行きついた答えだったのですが、『バカの壁』を読んだら、あっさり書いてあってびっくりしました。
しかも格助詞の説明がメインではありません。別のことを説明するのに格助詞の「が」と「は」を使っていらっしゃる……。純粋に「専門の先生でもないのに、こんなことを知っているなんてすごい……!」と思いました。
その上プラトンのりんごの話が出てきて、英語の不定冠詞や定冠詞が日本語の格助詞「が」と「は」に当てはまると書いてあって、さらにソシュール(←言語学のなかでも理解するのが難しいと言われている内容です)と言った専門用語もぽいぽい入っているにも拘わらず、びっくりするぐらい分かり易いのです。
何というか、私は偉そうに『☆リベンジ★ 主格「が」について』なんて書いて、「さすがに『NIHONGO』を読んでいる人の多くは、格助詞『が』と『は』の違いについて知らないだろう」と思っていたのですが、『バカの壁』を読んでその部分を理解できていた人は、当然の如く知っていた内容なわけで……、自分の視野の狭さを思い知りました(笑)
『バカの壁』は前述した通り、平成で最も売れた新書。それも、一般の方が自身の学びの一環として手に取る著書です。
そして出版された数は「447万部」を超えているわけで、少なくともそれくらいの人が『バカの壁』を手に取り読んでいるということ。図書館にある本だったら、1冊で何人もの人にその内容を開示していることを考えると、読んでいる人はもっといるということです。
となると、格助詞「が」と「は」の話は、案外知られていることなのかもしれないなぁ……、と思い、私も『バカの壁』を早く読んでいれば「リベンジ」なんてしなくても一回で回答出来たかもしれません(笑)
養老先生の言葉の話はとても面白いので、『バカの壁』の内容を含め、また別のところで改めてご紹介できたらなと思います。
<参考資料>
*養老・ディアホープ・まる……〇有限会社養老研究所『まる文庫』(株式会社講談社/2021.1.1)より
〇養老孟司『バカの壁』(新潮社/2003.4.10)
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