第二十五話
「おっと……あぶなっ!」
「無礼者! そなたら、姫君さま方を、なんと心得る!?」
ふたりは、ぼ――っと、やって来た“参”に、踏まれそうになって、大慌てで、高欄へ飛び上がっていた。
「ほほほ……許してやれ許してやれ。ほれ、ふたりには、
桜姫は、驚くふたりの光景が、ことの他おもしろかったのか、機嫌がなおった様子で、いつも用意されている、畳の上に置いた、これまた小さな分厚い畳に座り、行儀悪く脇息を前に出して、両肘を乗せて笑っていた。
「「桜姫さま!」」
そう、そんな、豆粒ほどなのに、超声のでかい『
「おわっ! 怨霊が出たぞ! だれぞ、だれぞ、はよう、怨霊退治を!!」
「怨霊ではありませぬ! 親戚の
「ようやく、お会いすることが叶いました!」
「わ、わらわは、親戚ではない! そっちのと、ただ声が似ておるだけじゃ!」
桜姫は大慌てで『御殿飾り』に戻ろうとしていたが、残念ながら間に合わず、ふたりに、ガッシリと捕まっていた。豆粒のように小さな体とは思えぬ力であった。
***
「桜姫のお子さまかな?」
「えっ……!? でもでも、桜姫は、まだ十歳くらいにしか……」
「わかんないよ――?」
「そうそう、
「おやまあ……」
「でもさ、未亡人だったら“伍”別に構わないよな? な? だから、早く、そうめん出してもらって! いますぐに!」
「え? いえ、いえいえ、僕と桜姫とは、そんな仲ではないです! それに、それどころじゃなさそうですよ!?」
「……残念だが、あきらめるか……」
“伍”以外の
***
〈 呪いのやかた 〉
「
先ほどとは違い、今度は、
「これが、おもしろおいしき物……」
「まさにまさに……」
ふたりは人前で食事を取るなどと、いささか卑しいことだとは思ったが、膳を用意していた“伍”は、花の女房たち以上に、桜姫で手一杯な様子、とてもこちらに目を向けることはないであろうと、ふたりは、それぞれの女房たちが用意した膳にある「そうめん」を、小さな箸で一本ずつ、つまみ上げると、今度は“伍”が桜姫になれなれしいと、
「こ、これっ! そなたら! それは、わらわが出したそうめんぞ!? わらわを差し置いて!」
「おいしゅうございますね」
「まさにまさに……」
桜姫は、騒いでいる
「そう思うならば、礼として、
「あらあら……ほほえましい光景ですのに……」
「まさにまさに……」
「そなたら~~~~」
桜姫が、そうめんが湧き出る鉢をぶつけてやろうか!? いやしかし割れてしまっては!?
そんな風に、少し悩んでいると、
するとどうであろう、
「やれやれ……やっと静かになった。すっかり朝餉が冷めてしまったではないか……」
「おもしろおいしき物……もっと出ませんか?」
「まさにまさに……」
しかたない……桜姫がそう思って、再び
「そ、そなたら、最後の一本まで食してしまっておるではないか!」
「え……?」
「これでは、もう、鉢から、そうめんが出せぬではないか! おろか者たちが!」
「え……?」
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