第二十四話
日々、そうめんで、みなが取りあえず、お腹がいっぱいになり、余裕ができたのか、「いいことを思いついた」そんなことを言い出した“弐”は、もっともっとと、桜姫に詠唱させて、作り出した“そうめん”を、どこかしらに、そうめんを持って行って、なにかしらと交換してくるようになり、食料の増えた、「通称:呪いのやかた」では“弐”と“伍”が、朝早くから台盤所で、朝餉の用意をしていると、なにか変な気配がしていた。
ふたりは、顔を見合わせて、無言のまま、気のせいかもしれない。無理矢理そう思い込んでから、おそるおそる、食べ物を並べる、粗末な黒い台盤の上に目をやる。
『また変なのが出た……』
“伍”はそう思いながら、一応は丁寧に声をかけてみた。
「どちらさまですか?」
台盤の上には、白と黒の水干の色以外は、区別がつかない、桜姫よりもまだ小さい、小さな
ふたりは、
「われらは、
「こちらに参った!」
「はあ……」
『
“空を駆ける龍の鳴き声”『
『不参!』
あの未払い騒動の時に、そう“壱”が、言いきってしまったので、この、「呪いのやかた」には、儀式に際して、なんのお声もかかっておらず、ゆえに、なにも彼らは知らなかった。
「うちとは違う龍神だと思いますよ?(だから、さっさと帰れ)」
「うちには、尊き方をお世話できる余裕なんて、どこにもありませんよ?(もうこれ以上の面倒事は沢山!)」
“弐”と“伍”のふたりは、内心を隠しながら、丁寧に豆粒ほどのふたりに、そう言ってみたが、彼らは当然のことながら、「人」なんかの言うことを聞くはずもなく、台盤から飛び降りると、止める暇もなく、寝殿の方へと走って消えていた。
「桜姫! 桜姫はどちらに、あらっしゃいますか!?」
「桜姫——!」
「ちょっ! 静かに! 声が、声がでかいっ! まだ、桜姫を起こすな! 最近、あの女は寝起きが悪いから、朝餉が出来るまで、好きなだけ寝かせておかないと……」
その声に反応したかのように、寝殿の奥深く、中央にでんと鎮座している『御殿飾り』の上には、小さな黒い雲が湧きだしていた。
「炊き立ての米もなく、わらわの眠りを妨げるのは、なにものじゃ……?」
朝餉でなければ、お前を取って喰らう……そんな、おどろおどろしい様子で、「まだ御髪が……」などと、まとわりついている、小さな花の女房たちが、慌てているのも気にせずに、桜姫は、御殿飾りの扉を、外れるほどの勢いで、大きな音を立てて、開けていた。
***
「え? なぜ、
「……帰ろうかしら?」
眉をひそめて、そんな言葉を発していたのは、「最近、良き品を手に入れてのう、是非そなたも見てみぬか? おもしろおいしいぞ?」そんなことを、桜姫から女房越しに、昨夜のうちに伝え聞いて、「おもしろおいしい?」なんであろうかと、朝も早くから、寝殿をのぞきにきていた
「うるさい
「あれあれ、では、桜姫の“おもしろおいしい”は、どうなさいますの?」
「…………」
『童も好かぬが、桜姫も童……いや、童以上にたちが悪い……』
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