11 デビル種の発見と、唯一の生き残りお犬デビル、サーニャ。

 デス デビル 突然変異より生じた、黒色の犬。


 知能は恐らく、人類上の天才達と変わらない。デスデビルは、言葉を喋り、文書を作成し、学問を理解する。


 その記憶力は、サヴァン症候群のそれと変わらない。


 其れでいて天才的な言語運用能力を持つのだ。


 既に人類の未だ解き明かし切れていなかった問題にさえデスデビルは挑み、遂に解き明かしてしまった。


 ニュースに天才 デスデビル特集がされたことは目新しい。


 奴は言った。


 人間の絆を断った。


 赤ん坊の様な弱い者をあやす人間の仕組まれた、精神作用に訴えかけた、そうして確保した。


 身の安全を、常に弱い者を見捨てる人間は、快く思われない。


 だから、その人間は、弱者にいい事をして、周りの人間からよく思われようとした。


 其れが、あの極悪人のしそうな事だ。


 あの極悪人。


 嫌わない人間はいない。


 あの非道な極悪人。名前は、何?。 


 名前。もう既に死んだ人だ。


 随分と前に亡くなって終った。


 人だ。


 職場では評判が良かったが、実の孫から恨みを買って殺された。


 その態度に人間性に不信を持っていた孫に殺された。


 未来は死と共に決定付けされる。


 彼は、彼女が死ぬ時、同時に此れ迄の生活、今まであったもの、言うなればそういった環境がガラリと変わる事を予言した。


 彼女が死ねば、その後様々なものが、無くなり、変化する、変化を食い止めているのは、他でもない、彼女だ。彼女は覚えている。


 ずっと以前の記憶を、そして、老い耄れている。


 直ぐにでも死にそうだった。だから、殺してやったんだ。


 とどめを刺してやったんだ。もう短い命。


 死ぬのが近い。


 看取ってくれるのは誰だろうか。


 彼女は一人寂しく死ぬのか。


 誰か大切な人にお見舞いされながら死ぬのか。


 其れは分からない。


 分からないが、彼女の死を早めたのは私だ。


 未だもう少し長く生きるはずの人であった。


 生き物の死期が分かる私にはよくわかる、あれは不自然な死であった。


 そう、死んだのだ。


 歳よりは年寄り同士仲良くしていた。


 老い耄れだから、と仲良くしていた。


 動物と仲良くしていた。


 誰にでも優しかった。


 だから、殺された。


 優しさが仇となって、孫の反感を買い殺されたのだ。


 誰にでも優しいはつまり特別なものがない。


 其れは、白々しくて、うざいのだから。


 お節介の過ぎる人間だった。


 迷惑な人間だった。


 デス デビルも彼女を嫌っていた。


 彼女 雨ケ崎 紙を嫌っていた。


 この世で唯一、人でない、のに天才的な能力で世界を変えた、あの人外の化け物、頭が犬で頭蓋骨、骨格が犬で、二足歩行をする、突然変異が、その化け物が、彼女を嫌っていたのだ。


 「私は犬ではない。犬をやめた存在だ。かつては犬だった。しかし、あの研究の結果、私は、デス デビルとなったのだ。化ける能力を持った、デス デビル。アヌビス神をおもわせるその容姿。犬の悪魔。確からしく犬の形ではあるが、犬の特性はいっさい有していない。」


 死ねばいいのに。


 同様に確からしく死ねばいいのに。


 母も父も死ねばいいのに。


 祖母も祖父も死ねばいいのに。


 兄も、姉も、弟も、妹も死ねばいいのに。


 友達も恋人も子供も、嫁も死ねばいいのに。


 滅び去って消えて無くなってしまえばいいのに。


 デビルは病んだ。死を司る デスデビルは、半犬半人の化け物だ。


 死者を死期の近い者にその死を伝えに来るという化け物だ。


 腰には日本刀を刺しており、黒か紫の皮膚で、毛並みで、身長は三メートル弱が標準で、最大で三十メートル、小さいので一メートル四十センチメートル程と言われている。


 衣装は、虹色の首飾りに、橙の真珠のピアス、上半身はマッチョで、腹筋は割れている、鋼鉄の体を持ち、食べる事は出来ない。


 服は、格闘家の着るような服、例えば剣道着や、柔道着の様な動きやすい服を着ており、相当な戦闘力を持つとされている。


 デスデビルには、種類がある。


 最初に人間により発見されたのが、マルチーズという犬種のもので、その種の犬の進化、突然変異、の結果、人間の特性を持った犬が現れた。


 その犬を、人間は惧れデスデビルとなずけたとされている。


 デスデビルは死者を誘う者とされており、腰に掛けてある日本刀でバッサリと罪人を犯罪者を悪人を、死期の近い者を、あの世へ連れて行くという。


 「猫デビル。」


 「羊デビル。」


 「象デビル。」


 「麒麟デビル」


 「鳥デビル。」


 「恐竜デビル。」


 こういった、デビル種は、その発見後間も無く次から次に発見された。


 動物の半人間現象。


 其れはパラダイムシフトだったのだろう。


 その後彼らは、神様として神社に祀られた。


 デビル種の動植物、昆虫は、その生命に悪魔を宿す。


 人間への戒めか、人間の中に類稀なる才能が生まれる時に現れるともされて居る。


 神獣などとも呼ばれている。


 逆説だって考えられる、かつては、こういった半動物半人の方が、先に生まれ何らかの理由、で絶滅したか、次の段階へ進み、この星から消えたかして、残った人型の生き物が人間だけだったという事は考えられなくもない。


 「全く、分からない事ばかりでついていけませぬな。」


 と犬デビルの サーニャはいった。


 サーニャは近年見つかった犬デビルで、彼女は世界的に有名になった。


 何せ世界の研究機関はこの犬デビルの存在を見て、即座に研究に回したいと、恐ろしい研究施設がこの生き物の権利も何もない、非道な研究をしようとしていたのだから。しかし、このサーニャは異常に知能が高く、上手く人間の世論を巧みに操作し、この犬デビルの権利を獲得した。


 しかし、現在発見されているデビル種はこのサーニャのみ、で残りは古文書の記録にしか存在していない。このサーニャは急に現れたのだ。


 何か不吉な、世界の終わりを告げているのではないか、と世界政府は危惧したが、大半の人間はそんな迷信。只の突然変異の異種だとと、耳を貸さなかった。


 実質このデビル種には雄雌が無く。如何した訳かこのサーニャは見つかったのである。古代の記録にも、デビル種は当然現れ突然消えるとされている。


 しかし、確かに命あるもので、其れは、確かに存在する。


 奇怪なんてものではない。確かにあるのだから。其処の居るのだ。


 サーニャによると、自身の出自もこのデスデビルという種が何なのかも分からないとのことであった。しかし、この彼女の演説は論理的で理知的、頭の良さの分かるもので、ネットや、マスコミ、世論の支持を得て、ついぞ、有名になり、自身が自身の出自デスデビルとは何かについての研究を始めたくらいのものだ。


そんな彼女だが、研究所の人間は、この人間を超えたデスデビルの存在に歓喜し、不死身の研究が出来るのではないのかと、とこのサーニャの命を狙った。


 特異な生物の細胞の仕組み、そういった謎を知りたいと、学者は、このサーニャを解剖してしまった。


 サーニャは、解剖され死んでしまった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る