画面の向こうには 下
私には片思いの人がいる。その人はいつも端っこの席で誰とも話す事はなく、一人、外を眺めている。誰かと話している様子はないけど、特に虐められている訳でもない。まさに空気のような人だ。だけど、彼の本当の姿は違う。
一度、アキト様として配信をすればたくさんのリスナーが熱狂してしまう、大人気配信者だ。
先程の様子からもわかるけど、素性は明らかにしていない。ただ、そんなアキト様だけど、私はとあるキッカケから同じクラスメイトにアキト様がいる事に気が付いた、いや、気付いてしまいました! けど、私はアキト様の日常を壊したくない、そう思い、この好きという気持ちと一緒に心に仕舞う事を決意。
けど、これを決意してからが辛くなった……。だって、アキト様は私の憧れで、そして初恋の人なんだから。
気が付いたら、端っこの席を見つめてしまうし、先生に指されて問題を解いている姿を見るだけでもきゅんきゅんしてしまうのよ?
それでも私は頑張った。そう本当に頑張ったよ……。みんなには出来るだけいつも通りに接し、アキト様の方を見ないようにした。その分、アキト様の配信の時にははっちゃけちゃうんだけどね……。それくらいいいよね?
そんな新しい日常は続いていたんだけど、それがとあるキッカケで終わってしまった。それはとある配信を観ていた時の事だった。
「みんな、お疲れ様。それじゃあ今日の配信は終わるよ。またね」
『今日のアキト様、元気がない』
『儚い表情も素敵だけど、いつもの笑顔の方がもっといいのに』
『元気出して!』
今日のアキト様は様子がおかしかった。リスナーのみんながその様子にすぐ気付いて励ましていたけど、効果は無さそうだ。
……私はその原因を知っている。虐めだ。いつか標的にされてしまうんじゃないかって思っていたけど、本当になってしまうだなんて。私は怒りに狂って暴れ出したくなる本能を抑えながら、その場だけは傍観者を貫いた。だって私がここでいきなり止めるのはおかしい。だけど、打開策は考えてあるんだから、待ってね。
といっても私の出来る事なんてたかが知れている。だけど、それでも傍観者のままでいられる筈がない。
私のアキト様を傷つけた事、死ぬほど後悔させてやる。
「えー、〇〇くんと〇〇くんは転校する事になりました。」
虐めが発覚してから一か月。私は本当に頑張った。まず、アキト様に接触をはかり、色々な対応策を教えた。ボイスレコーダーを渡したり、私がスマホで隠し撮りしたり、どうせ先生じゃ何も出来ないんだから《私の》本気を見せただけだ。
そして最終的にはあいつらを転校にまで追い込んでやったのよ。二人で頑張った結果だよね、アキト様♪
そして、私は放課後にアキト様からお呼び出しが来ている。
あぁ、今から楽しみね。
もうあんな思いは一生させない為にずっと、ずっと傍にいるからね、アキト様♡
画面の向こうには ポンポン帝国 @rontao816
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます