第17話 鈍感系なあなたに

一行は王都の冒険者ギルドの前に到着する。

さて、ラノベでは主人公たちがここの中に入るとどうなるだろうか?


答えは簡単、チンピラ冒険者数人に絡まれる。

ヒロイン達に下品なことを言って主人公には暴力だ。

当然ノーダメからの返り討ち。

そしてチンピラどもはそこのギルドでは強いから態度デカくても誰も文句言えなかったからドカンとやってくれてありがとううさぴょん展開。

どうしよう、それはそれで現物なら見てみたい。


アホなことを考えてるうちにハイン達は入っていった。


「ちょっと見てみたいがうーん……」


みんなが入った10秒後くらいにはギルド内へ入った。

流石に暴力はよくないしガイナスならバカにされることはない。

第一そもそもラノベとはここにいる時間が違うので遭遇が確定していることもないんだ。


「今入ってきたかわいいネーちゃん!オレらと酒飲まねぇか?」


ダメみたいですね。

入って10秒で絡まれるなんて運のない人たちだ。


「興味ないわね。他を当たりなさい。」


ティアが軽くあしらい相手にしない素振りを見せる。


「なんだぁ?そんなヒョロガリがタイプってかぁ?」


チンピラらは下がらない。

2射目に主人公否定が飛ぶ。


「そうね、それでいいから邪魔しないでくれる?」

「ガハハハハッ!そんなチビより絶対オレたちと居たほうが楽しいぜ!」

「もう一回言うわね、興味ないわ。」


ティアの表情はゴミを見るようなものになっていた。


「……なんだその目つきは?オレたちが「はいはい落ち着きましょうね〜」んだテメェ!?」


よし、間に合った間に合った。


「Aランク冒険者のガイナスってもんだ。すまんがこっちは妙ちくりんなワイバーン倒すのに時間がかかってよ、予定が詰まってるんで結構ピリピリしてる。悪いな!」

「あ、お、てめ……」


嘘はあんまりついてない。

そしてとっとと受付へずらかる。

流石Aランクという建前&ドラゴン系魔物、相手さんも強く出られない。


「いくぞーお前らー。ソニアひと待たせてんだからよ。」

「……えぇ。」


チンピラ冒険者横暴だったはず。

このまま放置したらトラブルが収まらない。

意図的に誰かに迷惑をかけるのは良くないから釘を刺したほうがいいだろう。


「アンタここでかなりブイブイ言わせてるみたいだがそろそろ止めたほうがいいぜー」

「あぁん!?」

「だってよ……アンタの言ったヒョロガリ君はドラゴンを一人で倒せる。そしてその強さを見切れなかったってんなら他のやべーヤツに喧嘩吹っかけて返り討ちに遭うんじゃないか?もっとも誰かに迷惑かけるのはよくないけどな。」


「なっ、嘘だろっ、コイツがか!?」

「ほんとだ。こっから近い冒険者ギルドに聞いてみればわかることだな。何なら今ここでそこの受付さんに聞いてみたらどうだ?」


途端にチンピラ数人は大人しくなった。

同時に羨望に近い眼差しがハインに向けられる。


「じゃあなー。」


彼らから離れて受付へと向かった。




王都の冒険者ギルドから報酬を受け取り、また外へ出たとき……ふと思う。


鈍感クソボケは許せない。

難聴系主人公はヒロインが誰も喜ばないからだ。(諸説あり)



「……では改めて、ハインお兄ちゃんの義妹ソニアですっ!」

「うぉ眩し!?」


とってもキラキラした印象で義理でも兄妹とは思えない。

ソニアに会ってから打ちのめされいたシエルを心配し様子を見る。


「oh……大丈夫かい?」

「……はい、ですのでお気になさらず。」


地面ばかりをシエルは見ていた。

心ここにあらずじゃん。


……申し訳ないがハイン君、ここで超必殺技(仮)を受けてもらう。

「ハイン、支援魔法でなんとかしておきな。」

「え?」


咄嗟にハインを腕で抱え持ち上げる。

バタバタしているハインをシカトしあとはガイナスのパワーに任せて跳躍、後方に回転しながら彼をクッションに落下。


技がきまった、しびれるぜ。


「……ひどいよガイナス君」


酷いのは私だけじゃないだろう君ぃ?

私がテンプレ追放あたおか冒険者(笑)ならアンタはうらやまけしからん上に人を力でねじ伏せまくりじゃないかい?

将来遺産相続で泣くぞ?子孫が。

まぁ子どもなんてラノベなせいで生まれないがな都合上。


「自分を慕う人を悲しませることを棚に置くのもどうかしてると思うがねぇ。シエルちゃん悲しんでるけど理由はおわかり?」


「……はぁ!?ちょっと二人ともなにしてるの!!」


ティアが割り込んで来た。

それに周囲の目線も集まっている。


「いや、ね、別れる前だしハイン君にちょっと人の心がわかるようになってもらいたくてね。」

「?」

「……うぅ。」

ハインが起き上がる。

やはり支援魔法で無傷だ。

やった側が思うのもあれだが服すら傷つかないって何やねん?


「いや、ね、彼にはもっと自分に関心を寄せてくれる人をわかってあげてほしいんだ。強さを手に入れてもそれだけじゃロボ……ゴーレムと変わらないぜ。」


「何それ意味分かんな……あーもう!」

「まー、お兄ちゃん鈍いとこあるよねー。もっと攻めていかないと大変だよ。」

「えぇっ!?僕を攻める!?やめてよ!」


作者が設定した性格だとしても流石にやばくない?クソボケやめい。

うらやまけしからんぞ。


さて、このまま主人公らに付いていけば強敵をホイホイ倒せそうだがガイナスパーティに戻らなきゃいけない。


「依頼も終わったしハインに技キメたし。ということで俺はこの辺で退散するわ。」

「あら、本当に依頼についてきただけなのね。」

「あったりめーよ!それで戻りの馬車的なものはどこか知ってるかい?」

「お兄ちゃんがここに来る前いたところ?ならあそこに止まる馬車に乗れば行けるよ!」


ソニアが指をさす。

すでに何人か人が待機していることから停留所らしいのはわかる。


「ありがとさん。んじゃお達者でー。」


そそくさと遠ざかる。

王都、武闘会編まではガイナスざまぁ集中期間なのでいっそう注意しないといけない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追放からの破滅回避〜絶対破滅してやんねーから! @onsainen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ