第16話 王都に立つ


主人公への一時的な寄生の感想、それは『なんかとても苦戦した』、それと『生活魔法馬鹿にできない』。

ワイバーンと戦ったあとはとにかく血を洗い流すのが大変だった。

全身血塗れなのは私だけだ。

洗ったあともとにかく鉄臭いおかげでメイドさん明らかに不機嫌。

アリサの姉御はとっても機嫌が良さそうなのが逆に怖い。


「まずは労いましょう。ワイバーン討伐お疲れ様です」

「そのようにおっしゃられては恐悦至極でございます」


跪き深々と頭を下げる。

他3人も続いてやってくれた。

全員で馬車に乗り護衛も再開する。


ふぃー、疲れたよぉ。

少し頭がぼーっとするなぁ。


「なかなかおもしろ……はらはらしました。お怪我などはありまして?」

「あぁ、傷は僕が治したからね。問題ないよ」


……あ。

チート主人公に喋らせてしもうた。


「そう、ならよかったですわ。」


メイドさん露骨にあ゛っ!?て雰囲気醸し出してるし。

急いでアリサとライにペコペコ頭を下げる。

うちの子が本当にごめんなさい(勝手に追い出した前科あり)。

ティアもシエルも注意くらいしてあげてよ……


「そんなに頭を下げなくても大丈夫よ。私、生まれは貴族でも爵位はありませんので。」

「そうだとしても…いえ、それでもです!」


ライさんのプレッシャーのような何かが薄まったように感じた、ふぅ。

依頼人が庶民?の子どもで依頼を受けた気さくでイケメンな兄ちゃんなら悪くないだろうけどそんなキャラじゃないでしょあなた。

……ひょっとしたら私の常識がおかしいのかな?

冒険者ってそんな感じでいいのかな?


_______


ワイバーン以降は賊や危険な魔物も出てこなかったので王都にはすんなり着けた。

アリサからの依頼も王都に入る大きな門をくぐり抜けたら完遂となる。


にしても門の近くともあれば活気がすごい、馬車を現代車と考えると出入りする量が多い。

いやそれ以前に門の外がすでに町かと思うくらい賑わっているのだ。

私達のいたあの町なんて門の外は村が近くにあるとかそんなレベルだったのに!


「お嬢様」

「……えぇお願いするわ。」

「かしこまりました。冒険者様方、同行お願いします。」


ライはそう言うと馬車から降りる。


「僕たちもいこう。」


4人でライの後を追うと軽装備の兵士がいた。

お疲れ様です。


「ここから先は身分証、またはその代用品が必要になります。提示してください。」


彼は検問をしているのか。

身分証?その代用?

それらしいやつ……うーん……特別必要なものなんてあったか?

あったね!

そう、転移モノなら両手では数えきれないほど見たあれだ。


「こちらですね。」

「確認します……!はい、こちらお返しします。次の冒険者方、ご提示ください。」


考えてるうちにライとアリサの確認が終わったらしい。

冒険者が王都へ入る方法、それが……


「_こちら確認しますね。……はい確認できたのでお返しします。」


冒険者プレートだ!

まじで便利すぎなのよこれ。

冒険者の持ってるプレートは個人個人の情報を登録している謎技術。

その情報で本人かどうか確認できるのだ。


満を持して門の中へ入る。


「おぉぉ……」


思わず声が漏れた。

建物の建築様式が多分違う、より新しい時代の産業革命の時代みたい。

実際見たことないけど。


「こちらをお渡しします」


ライからある紙を渡された。

依頼達成の証明か。


「ありがとうございます。」

「報奨金は王都の冒険者ギルドで対応できるようになってます。護衛任務ありがとうございました。」

「わかりました。目的地までお気をつけてください」


そのままアリサたちを馬車が小さくなるまで見送った。

ペコペコするのは忘れない。


「さて、これからどうしようか?」


とりあえず王都の冒険者ギルドへは行かないとな。

でもこの都市のことが知りたいし。


「まぁまずは依頼の達成報告からだよな。」

「そうだね。じゃあ早速向かおうか。」


王都の街並みは近代さしかかりのヨーロッパみたいな感じ。

石畳の道にレンガ造りの建物、道行く人は種族が人間だけじゃない。

エルフやドワーフ、かなりもふもふな獣人なんかもいる。ファンタジー感がすごいなぁ。

ここってどれくらい大きいかな?

地図も欲しいな。


「冒険者ギルド、どこにあるんだろうね?」

「わかんねぇなぁ。」

「人に聞くしかないよねー」


「聞いてみるか……すいませ〜ん」


近くの通行人に話しかける。


「はい、なんでしょう。」


「冒険者ギルドを探しているのですが、場所を教えて頂けますかっ!?」


これが必然というものか!

こ、この人は……


「あそこですよ〜」

「あっちですか、ありがとうございます。ハイン!ちょっと来なさい。」

「どうしたの…!…えっ、ソニア!?」

「お義兄ちゃん!?」


武闘会編でガイナスにざまぁを執行する義妹ちゃんだった。

適当に声かけた人が、運命すぎないかね?


「久しぶりだね、お兄ちゃん!」


唐突なハグ入りました。


「久しぶり、元気だったかい?」

「うんっ!」

「そっか、ならよかったよ。」


ハインくん後ろの二人を置いてきぼりにしちゃだめだよ。


「でもまさかこんなところで会うとは思わなかったよ!ティアさんも!……あの、お二人は?」


私とシエルは初対面なのか。

ラノベではガイナス王都にはいないしそりゃ対応も変わるものだし。


「ハインに妹がいたとはなぁ、俺はガイナスだ。訳あって今ハインとここにいる。」

「……シエルです。ハイン様の召使いです。……ご主人様!ソニア様はご主人様とどのようなご関係でしょうか!?妹様なのでしょうか!?」


シエルがとても焦っている。


「そうだね。義妹いもうとだよ。」

「はうっ!」


そしてなぜか打ちのめされた。

妹発言で打ちのめされているがまさか主人公の妹ポジションになりたかったのか?


「……いいんですよご主人様むしろ奴隷の私がご主人様の妹になりたいと思ったのが間違いだったのですそれに妹様はそのあれです体型も非常に魅力的ですし私なんて出る所は出ていませんしただ細いだけですからでも妹はそのような線の細い感じが妹としてかなり合致しているのも思うのですでもお兄様と呼びたかったのですよ大変無礼だとは承知してますがなら二人目の妹になればいいとかはちょっと嫌ですごめんなさいでも妹2とか特別な雰囲気ないじゃないですか大丈夫ですご主人様私はあなた様唯一人の奴隷ですのでしっかり弁えておきます。」

「シ、シエルッ!?」


うわぁ……


「……ハイン、後でサイドスクリュースローな。恨むなよ。スーパーなやつは勘弁してやる。」

「えっ、な、なにそれ!?」

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