第2話電話
それは、一本の電話から始まった。
いつものように近所の埼玉第一高等学校から帰ったばかりの時だった。
光恵は携帯電話を握り絞めながら泣いている両親の姿を高校から帰るとすぐに見てしまったのだ。
光恵にとって両親が泣いている姿を見たのはこれが初めての事だった。
光恵の母の京香はいつも元気で明るい母親だった。父親の修二は近くの妻の両親が働いている工場を
手伝う仕事をしていたが家ではよく冗談を言う
明るい人だった。
光恵の兄の悟はお笑い芸人を目指して東京に上京していた。
光恵はそんな明るい家族が自慢だった。
そんな明るい両親が泣いているきっとよほどの事があったからに違いない。。。
光恵はこの時妙な胸騒ぎがした。
「お父さん お母さんどうしたの?」
「光恵~よく聞いてね。お母さんのお父さんとお母さんが~光恵のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが詐欺に合って……。
お祖母ちゃんとお祖父ちゃんの工場が悪い人に取られてしまったの。そして遺書を残して自殺してしまった。
前にもお祖母ちゃんとお祖父ちゃんは騙されそうになった事があったけど、でも私がおかしいと
気がついたから大丈夫だったの。
今回は私達に何の相談もなく詐欺に合って工場は
借金の肩代わりとして全て取られてしまった。
三年前と同じ人にね。
私もお父さんもあの人達を絶対に許せない」
光恵の母の京香は泣くのを堪えながら光恵にそう
言った。
それを聞いた光恵は、どうしょうもない怒りが溢れてきたと同時に悲しみも押し寄せてきた。
そして、光恵の目には涙が溢れだした。
父と母は光恵に言った。
「お願いよ。光恵~もうあなたしかこんな事、
頼めない。頼むから、家族の為の学校に高校を卒業したら行ってちょうだい」
「家族の為の学校?それは、大学なの?専門学校なの?」
両親は光恵に言った。
「大学と専門学校の間だよ。でも、この学校は山奥の寮生活なんだ。その代わり国で認められているから国から全てお金が出るんだよ。教科書代もお小遣いも学費も生活費も私達に仕送りも国からしてくれるんだ。
それに、その学校を卒業したら自動的に大学卒業資格を貰えるんだよ。」
「そう言えばお父さんとお母さんも確か~家族の為の学校で知り合ったって言ってたよね?」
光恵の父と母は言った。
「そうだよ。二人とも貧乏だったからね。家族の為の学校は全て国からお金が出るからとてもありがたかったわ。それにお金を返さなくてもいいから。
これはとても、親孝行だったわ。それに両親に仕送りも国が私に変わってしてくれたのよ。
それに他の家庭よりもお小遣いも国から出してもらえる。寮生活だけど必要なものはその都度言えば学校で揃えてくれる。とてもいい学校なのよ。同じ目的で集まった生徒達だからきっと気が合うはずよ」
光恵は両親に尋ねた。
「どんな学校なの?」
両親は名前の通りの学校よ「家族の為の学校」
光恵は何も知らなかった。親孝行になればそれでいい。お金を全額出してもらってお小遣いも貰えるし、両親に仕送りまでできる。
光恵はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんを自殺に追い
込んだ詐欺師の事が心底許せなかった。
きっと「家族の為の学校はお祖母ちゃんとお祖父ちゃんの自殺に何か?関係があるのかもしれない?」
「家族の為の学校」について光恵はニュースにも
サイトにも流れない学校の事は何も知らないまま
光恵は両親に言った。
「お母さん。いいよ私、家族の為の学校に入る」
光恵はこの時、何で山奥の学校なのか?寮生活なのか?サイトでもニュースでも、この学校のホームページが何でないのか?何もわからないまま、親孝行ができるならと入学を決める事にした。
この学校の恐ろしさを何も知らないまま……。
両親は言った。
「本当にいいのね?本当に入学してくれるのね?
家族の為の学校に……」
両親は泣きながら光恵に言った。
光恵は大きく頷いた。
両親は光恵にありがとうそう言って頭を下げた。
家族の為の学校 ヤシテ ミカエル @hitomi5735
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