屋上
久しぶりに苦い思い出を思い出してしまった…。もう今は郁と連絡は取っていないし、どこに行ったのかも分からない。あのとき、自分はなんて声をかければ良かったのか今だに分からず過去のことだと流そうとしてしまっている。そんな自分にも嫌気がさしまた永遠と考える。こんなこと何回繰り返してきただろう。そんなことを考えながら彼女から逃げるために来た屋上からの景色を眺める。顔は険しいままだ。1人で屋上にいると後ろからコツコツと歩いてくる音が聞こえた。そして肩を数回叩かれる。びっくりして勢いよく後ろを振り返るとそこに彼女が少し怒った顔をして立っていた。
「もお!なんでどっかに行っちゃうのよ?探すの本当に大変だったんだけど!」はぁ〜と言いながら肩を押さえて回したりしている。な、なんで?学校に来たばっかしだから屋上には辿り着かないと思っていたのに…。俺は彼女の足元を見ながら言った。
「な、なんでここにいるの?怖いんだけど…。」
「屋上に来ただけで怖いとか言わないでくれる?本当に失礼な人だなぁ〜。クラスの子達に場所を教えてもらったのよ。本当にここまで来るの大変だったんだから!」
いや、ここに来るまでが大変だったのは分かったから俺が知りたいのはそこじゃない。なんで俺を追いかけてわざわざ屋上まで来たかってことだ。彼女にそう言おうと思ったけど、面倒なことになる気がして開いた口を閉じる。すると、彼女が俺の近くに寄って顔を覗き込んできた。
「なに〜?何か言おうとしてたよね?どした?」
興味津々で言ってきてジッと俺を見つめてくる。
こんな近くで彼女を見たなんてクラスの人達にバレたら怒られるだけじゃ済まないだろうなとボーッと考えてたりしていると、彼女がツンツン突付いてきて、「ねぇ…ガン無視は酷いよ?」と言ってきた。
「あ、ごめっ…別に何も言おうとしてないから。」
「えっ〜?でも一瞬口開いたよね?気になるんだけどなぁ〜…。話してよ!お願いだよ〜!」
彼女はねぇねぇと俺の肩を少し叩く。何もないって言ってるのにしつこいなぁ…。俺はもう少し強めの口調で彼女に言った。
「本当に何でもないって言ってるだろ。やめてくれるかな?」そう言いながら少し睨む。彼女は肩を叩くのをやめて少し下を向いた。これで今度こそ関わることなんてな…
「あのさっ〜少しはその態度どうにかしたほうが良いと思うんだけど。さっきからずっと思ってたんだけどなんでそんなに私のこと拒否するの?酷いよ?流石に人としてどうかと思う。」
ん?あれれ?なんか怒られてる?なんでこんなに俺に構ってくるんだろ?
「拒否するというか…俺は皆と関わろうとしてないし、別に君だけを拒否してるんじゃないんだけど…その…とにかくもう話しかけないで」
あ〜…こんなんじゃ駄目なんだろうなぁ自分がもっと強く言えたら良いのに…と思うけど元々の性格はこんなじゃなかったし、語彙力がないのは最初からなので仕方ないと諦める。彼女のほうをちらりと見るとジッと俺のほうを見つめたまま無言で立っていた。そして俺と目が合うと急に座りこんだ。
「えっ…なに?」俺が言うと彼女は
「話してくれないとずっとここにいることになるよ、私と君とで2人きりで。さぁ、早く話したまえっ!」突然の行動に驚いたのと同時に呆れた。いや、君が座っても意味ないだろ…拘束されてるわけじゃないんだから普通に教室戻れちゃうし。俺はため息をつきながら教室へ戻ろうも歩き始めた。すると、急に足首を掴まれて転びそうになる。
「うわっ…!」
「ちょっと…!置いてかないでっ!話したいってだけなのになんでそんなに拒絶すんのよ!話すことで解決することもあるでしょ?なんでこんなに言うかって言うとね、君のこと心配だからだよ」
…俺のことが心配…?えっ、でも出会って一時間しかたってないのに?怪訝な顔をすると彼女は俺の心を見透かしたような顔をしこう言った。
「出会って一時間しかたってないのにって思ったりしてるでしょ?私さ君みたいな人みるとほっておけない性格なの。しつこくてごめんね」
彼女はそう言って俺の足首から手を離した。そして俺をまっすぐに見つめてくる。俺は彼女のそのまっすぐな目をみてとうとう折れてしまった。
「はぁ〜…そんな大した話じゃね〜けど…」
「うんっ!大丈夫。ありがと」
そして俺も座り込み今までの苦い記憶を彼女に話始める。彼女は真剣な表情で時々辛そうな表情で話を聞いてくれた。今思えばこの時そのまま教室に帰ってれば良かったのに、話なんかしたくないって言えば良かったのに…。そしたらあんなことにはなっていなかったはずだ。だけどその時の俺は彼女の真剣な表情に折れてしまった。彼女に自分の過去を話始めたときに俺の人生は終わりに向かっていた。
白鳥と黒鳥 黒実 陸 @me800
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