苦い思い出
「もうお前といるの嫌になった一緒にいたくない」
「えっ…??」
突然言われた言葉に俺は耳を疑った。ずっと小さい頃から一緒だった親友神谷郁に言われた一言。その一言がきっかけだった。自分で言うのもあれだが、見た目は悪くなく性格も明るく誰とでも仲良くできるタイプだった俺は皆から慕われていた。毎日、昼休みなどではクラスメイト達が来てくれて楽しく過ごしていた。その日も昼休みに女子が3人男子が1人俺の机に来ていた。男子はもちろん郁だ。実は郁は女子3人の中で好きな人がいた。その事は相談されていたし協力してほしいと言われていたので知っていた。上手くいけばいいなと思っていた…。
しかし、郁の好きな人は俺の事が好きだったらしい。しかもそれを先に知ったのは郁で告白しようと思っていた一日前に知ったのだ。
「私成瀬の事好きなんだよね〜」
「まじで!?良いじゃん!お似合いだと思うよ〜」
「成瀬ってすごい完璧人間だよね笑二人だったら推せるカップルになれると思うよ!!頑張って!」
「二人ともありがとう!じゃあ告白しよっかな」
「あれ?でも郁と仲良いじゃん、郁の事好きなんだとずっと思ってたんだけど…」
「あ〜ね、郁って成瀬と仲良いじゃん?だから成瀬の近くに少しでも要られるようにと思ってさ笑」
「そういうことね〜」
廊下で話していたのを郁はそこまで聞いてすぐに俺のとこに来て言ったのだ。
「もうお前といるの嫌になった一緒にいたくない」
今思えば言われた俺よりも言った郁のほうが傷ついた顔をしていたな…。でも俺は、そんなことを言われたショックやら怒りやらで郁のとこを気にしていられなかった。
「えっ…??なんだよ急に…。んなこといきなり言うなんて俺お前に何かした覚えねーぞ」
少しイラついた声でいうと
「…だよな。お前には分からないよな。いつもいつも皆に囲まれて楽しそうで、どうせ俺なんかお前のオマケなんだろ?はぁもういいわ」
「お前本当になんなの?そんな風にしてるとあの子に嫌われるぞ」
俺が言ったこの一言で全てが崩れた。
郁は俺の事を鋭く睨んで行ってしまった。そして、その出来事から数日後。
「私さぁ…成瀬の事が好き、なんだよね」
「えっ…」
「それで、その…もし良かったら私と付き合ってくれないかな…??」
校舎裏に呼び出され突然郁が好きだと言っていた女の子に告白される…。それで全てを理解した。そして自分が郁に対し酷い事を言ってしまったことにも嫌というほど理解した。こういうことだったのか…
だから郁は急にあんなことを。郁に対してものすごく申し訳ない気持ちが一気にきた。
「ごめんね…君とは付き合うことできないから」
「えっ…でも今彼女いないんだよね?だったらお試しでも良いから私と…」
「ごめん、本当にごめんなさい」
そう言うと俺は郁を探しに校内を走り出した。女の子は呆然と立っていたがそんなことを気にする余裕なんてない。とにかく郁のとこに行きたかった。教室につき勢いよくドアを開けると郁は1人で音楽を聴きながら窓の外を眺めていた。郁のとこにいき肩を叩くと郁は最初、驚いた顔をし険しい顔になった。その表情をみたときのあの感じは忘れることはできないだろう…。
「郁…あのときあんな酷い言葉ぶつけて本当にごめんな。その…なんで郁が急にあんなこと言い出したのか本当に分からなくて、その…」
「もういいよ…俺と関わるのやめて?本当に嫌なんだよもう。」
「…っ!」まさかそんなことを言われると思ってなく、謝ればすぐに仲直りできると思っていた。また今までのように楽しく笑い合えると…。郁はそう言うとすぐに荷物をまとめて教室を出ていった。その後のことはよく覚えていない。郁が出て行ったあとしばらく教室で1人呆然としどうやって帰ったのか…。それほど自分の親友を傷つけてしまったことにショックやらなんやらで頭が回らず記憶が曖昧になってしまっている。確かその後も何度か謝ったりしていたが全て同じセリフで切り上げられてしまい、そんな2人を見て周りの子達オロオロしてるだけだった。何度謝っても仲直りできないことに俺は郁との今までの時間や絆が音を立てて切れたのを感じた。
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