転入生

「初めまして。白鳥桜と言います。一日でも早く皆と仲良くなれたら嬉しいです。よろしくお願いします!!」

家でたくさん練習したのだと分かるような声で

自己紹介したのは、黒くてツヤのある長い髪、

大きい目、スラリとしたモデル体型の美女だった。自己紹介後クラスから盛大すぎる拍手が起きた。

「じゃあ今日から皆仲良くしてやってな。そんで席は〜…成瀬の隣で」いきなり自分の名前を呼ばれて俺は一瞬何かの間違いかと思った。確かに隣の席は空いているが、、自分で言うのもなんだがクラスで一番誰とも話さず関わろうとしないそんな俺の隣?

先生だって俺のクラスでの様子を知っているはずなのに…。俺の疑問をよそに彼女はこちらに向かって来て笑顔で挨拶してきた。

「おはよう成瀬君今日からよろしくね」

俺は気だるそうに彼女の顔を見た。遠くから見ても十分美少女に見えたが近くから見ると美少女と一言で言い表せないほどの迫力があった。そう思ったのと同時に今日からこの人と隣の席なのかと思うと、

うんざりした。どうせ、皆に囲まれて俺なことなんか忘れるくせに挨拶なんかしてきて。

俺は彼女の顔を見ただけで無言で前を向いた。

そして朝のHRが終わり先生が出て行った後、クラスメイト達が一気に隣の席に集まって来た。

「どこから来たの?」「仲良くしよ!」さまざまな質問や言葉をぶつけられても彼女は一つ一つ丁寧に答えていく。そして、皆が一番気になっていたであろう「彼氏いるの?」という質問が出たときは

「欲しいんだけどね、なかなか出来ないの」と苦笑いで答えていた。彼女がそう言った途端男の子達は

「じゃあ俺がなるよ!」と言ったりしていた。本当お調子者達でバカだよな。予鈴が鳴り彼女が皆に

「そろそろ席に戻ったほうがいいんじゃない?」と、言うと皆名残惜しそうに戻って行った。ずっと騒がしいと思ってたから良かった…。そう思っていると隣から「ねぇねぇ…」と話しかけられた。

最初は自分じゃないと思っていて下を向いていたが

「ねぇ?聞こえてる?」と肩を突付かれた。驚いて

彼女を見ると口を尖らせてこっちを見ている。

「どうして無視すんのよ?ひどくな〜い?」

「あ、あぁ…えっと何?」

「今日の授業教えてくれない?あと、他にも色々教えてほしいことあるんだけどいい?」

「えっ…」一瞬答えようか迷ったが結局答えてあげることにした。流石に無視は感じ悪いよなぁ…。

「えっと一限は数学でニ限は物理で…」答えながら周りをチラッと見ると皆がチラチラこっちを見ている。やっぱりそうなるよな…。答えている途中だったが皆の視線に耐えきれなくなり「あのさぁ…」と遮った。彼女は少し驚いていたが笑顔で「なに?」と言った。

「えっと…申し訳ないんだけど後は違う人に聞いてくれないかな?」皆にこれ以上注目されるのは嫌だし、皆も俺なんかと美少女が話しをしているのは嫌だろう。そう思って言ってみたが彼女の答えは俺が求めていた答えと違っていた。

「なんでよ?せっかく隣なんだし私は成瀬君と話したいんだけど?いいから教えてよ」

…えっ?俺と話したい…?最初の印象を見て言ってるのかな?だとしたらちょっと、いやだいぶ頭おかしいぞ。俺が何か言おうと口を開いたとき、

「先生来ちゃたまた後でね」と言われてしまった。

なんでだ?ずっと疑問に思って授業に集中することができなかった。普通挨拶しても無言で前を向かれたら嫌な気持ちになって話したくないって思うんじゃないのか?その後授業が終わってすぐに教室を出た。彼女が俺に声を掛けるような素振りをみせていたが、話したくない。そもそも、どうしてここまで俺が人と話すのを嫌うのかには理由がある。本当はこんな性格ではなかった。もっと明るく元気で…。

そう隣の彼女のように。

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