『崇拝』
石燕の筆(影絵草子)
第1話
「これがニートという我々の神の姿です」
今から数兆年前の歴史的な映像の記録をモニターに映したものを信者たちはふむふむと物珍しそうに見ていた。
「ニートは働かないことで他者との差別化をはかり、アイデンティティーの保持に役立ったんですな」
白い髭をたくわえた教祖が信者たちにニートの偉大さを語る。
「我々の中にも脈々とそのニートの血があり、働きすぎによる過労や病気などとは無縁のいわゆる仙人や坊主にあるような無我の境地に彼らはいるのですな」
「今や、無職の人間を称える動きまでありますから、
わたしたちもこのニートさんたちを見習い無我の境地にたどり着きましょう。ニート万歳」
教祖の掛け声のあとに信者が続いて、
「ニート万歳」と繰り返し唱えた。
『崇拝』 石燕の筆(影絵草子) @masingan
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