小学2年生に恋をして。

@wandafuru

第1話 歪

いつからだろう。

「僕と…僕と、付き合ってください!」

恋愛なんか。と、思い始めたのは。

「えっと…。その…ごめんね。今まで仲良くしてくれたのは嬉しかったよ。でも、ごめんね。」

するだけ意味がない。

「そっか…。いやその、こっちこそごめんなさい…。」

どうせ無理なんだ。

「うん…。それじゃ、私帰るね。」

誰からも。

「う、うん。それじゃあ…。」

夕日が小窓から差し込める校舎の端で、好きだった女子に告白した。

根暗で、世間でいう[隠キャ]の僕に、彼女は明るく話しかけてくれた。

僕にとっては、僕の存在を認められたような気がしてとても嬉しかった、それと同時に彼女のその性格と、優しい顔に一目ぼれをしていた。

学校で、話せそうであれば話しかけたりもした。

デートは誘えなかった。連絡先も交換できなかった。

でも、学校生活の中では僕にとって彼女はかけがえのない存在だった。

ある秋の合唱祭、偶然席が隣になり、良いムードで話もできた。

最高の一日だった。

3年生になり、クラスが変わり時が流れて中学校卒業式の一週間前。

合唱祭の時のように偶然に掃除場所が重なり、周りに他の生徒もいなかった。

差し込める夕日が、僕の背中を押してくれていた。

でも現実は残酷だった。

その後、卒業式の三日前にこんなうわさが流れた。

どうやら○○さんがSNSでクラスメートに告白されてOKしたらしい。

それを聞いて、その時、僕は思った。

「あの時間は、あの僕への話は、あの合唱祭は。君にとって一体何だったの。」

怒りよりも、むなしさが心をえぐっていた。

卒業式なんてどうでもよかった。彼女の事がずっと忘れられなかった。

「好き」という心の穴をあけたまま。もう5年が経とうとしていた。

19歳の僕は、子どもが好きという端的な理由から保育の専門学校に入って、もうすぐ二年目になる。

彼女への気持ちはまだ残っていて、時折、高校生の時に彼女がアルバイトをしている事を知っていたドラッグストアに足を運び、偶然を装って会えないか。と妄想をしている。

しかしそれも、もう8~9割薄れてきていて、「彼女が欲しい」というのが、友人間での口癖だった。だがしかし実際のところはもうあまり恋愛に興味がなかった。

最近、常時金欠状態で、外食も趣味の自転車もままならない生活に嫌気がさし、アルバイトを始めることにした。

保育の学校に通っているうえで、実習以外にも子供たちと触れ合いたい。

どうせなら子供と関われるバイトにしよう。

そう思い、とある小学校の学童のアルバイトに応募した。

学童での人事の統括、運営をしている会社の方と面談し、採用されることになった。

面接官の人から、お褒めの言葉をもらえるほど。

そうして面談から1か月後。

初めての勤務は土曜日からだった。

初めての現場、初めましての子どもたち、先生。

これからどうなるかな。と、期待と不安に胸を膨らませ、部屋のドアを開けた。

これが僕の、恋の始まりと、人生の障壁になるとは、この時は思ってもいなかった。






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