第2話 愛とハンバーグ
あなたを思いながら寝たせいで、あなたを見たのでしょうか。夢と分かっていたならば、覚めることもやめたでしょうに。
小野小町が詠んだ歌みたいだ。絶世の美女と言われる小野小町でさえ、胸を焦がすことがあったのだろうか。思い人を強く思って眠りにつけば、本人に夢の中で会うことが出来る。その時、相手も自分のことを思って寝ているのかもしれない。昔、僕が高校生の頃、恋愛とはもう既に距離を置いたような腰の曲がった古典の先生に聞いた話だ。
その時は何も思わず、右から左へと聞き流した。が、今唐突に思い出したということは、当時の僕も記憶の引き出しの中にはしまっていたらしい。改めて思い返せば、夢は恋なのだと思う。
同じ高校生の頃、友達と愛と恋の話をしたことがある。
誰もが通る道だけど、今思うと顔が赤くなる。友達は言った。彼は、隣の女子校の女の子と気づけば良い関係になっているような男だった。
ハンバーグが一つあったとして、その一つをあげたいと思うのが恋で、半分に分けて食べたいと思うのが愛だ。
そのときの僕は首を傾げた。ハンバーグというよく分からない喩えはともかく、どちらかと言えば、逆だと思ったからだ。
でも、今改めて考えると彼の言いたいことも分かる気がする。
つまり相手が必要か、必要ではないか、そういうことではないか。
最近、彼からメールが届いた。僕の安否を伺う内容だったが、それによれば彼はまだ丸いハンバーグ一つを御馳走する独身生活を、彼なりに謳歌しているようだった。
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