彼の国


彼の国は従順で

彼の国は安らかだった

ただ一つ子どもを除いて


彼は優しい

昨日も明日もゴミひとつ残さず、道を綺麗にする

彼が箒を持てば、子どもは慌てて塵取りを探しに行く


早く急いで怒る前に


彼は優しい

他人に優しい

けれど子どもには優しくない


彼は火がつく病気であった

突然燃え出し、叫び水を求める

だから彼は洋服が嫌いテレビが嫌い子どもが嫌い

でも、いつか燃えるのに勉強ばかりしている

最後には骨しか残らないのに勉強ばかりしている


その知恵で優しくなれるのか

その賢さで環境を変えられるのか


何も出来なかった


刃向かった子どもがいた

全てを捨てて逃げた子どもがいた

愛されたくて近づく子どもがいた


どれも愚かで不器用で優しくない

そして彼と共に燃えて死ぬ


彼は彼のままどうする事も出来ない

静かな部屋に彼の願いだけが響いている


だから僕は戦うのだ

いつか彼の火を止めて、黄金の剣で心臓を貫くために


強く!

屈強な戦士なるんだ!


血は輝き道を示す

本当にそうだったろうか

流れる赤を見て

僕は満足できるのだろうか


僕は戦う事をやめて、畑を作ることにした


彼は今でも燃えている

その灰はいつか肥料にしてあげる


僕は土を耕す

その大地から花が咲くといい

彼はいつか種を残して燃えるといい


大地に傷を残して、死を置き去りにして、貴方を見ないフリをして

僕は僕であり続ける


おしまい

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彼の国 ブリ @buri0daikon

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