古生物を深く愛しその魅力を広めたい弥生ちゃん。世間的には、彼女は不思議ちゃんと呼ばれる類の女の子かもしれません。でも、とっても一途で真っ直ぐで、優しい女の子。
一方、理一くんは夢破れて荒んだ時期もあったけれど、元来温かな心の持ち主で誠実な男性。弥生ちゃんのひたむきさに触れた彼は、一見風変わりな彼女の魅力に気づき、その夢を応援しようと決めるのです。ただ、彼もちょっと天然なところがあるので、一筋縄ではいかなくて……
二人の心が近づいていく過程が可愛らしくてもう、悶絶。不器用で優しすぎる二人のじれったさが堪らないんです。
甘々なだけではありません。この出会いを通して互いに成長していく様子も見どころです。もちろん、毎回出てくる美味しそうな料理(時に奇天烈メニューも)、古生物に関する知識も楽しい。
見どころ満載のこの物語、読み終える頃には古生物が好きになっているかもしれません。少なくとも私は、『アノマロカリス』って絶対に忘れないだろうし、ちょっと美味しそうだなと思っています。
理一視点で「目玉が飛び出た触手持ちの得体の知れない生物のぬいぐるみを抱えて」ていた「眼鏡をかけたショートボブで華奢な、いかにも可愛らしい」「女の子」弥生。
二人は理一の美味しい料理を仲立ちに、少しづつ心を近づけていきます。
当初驚いて腰が引けてしまった巨大ぬいぐるみ、アノマロカリスへの理解も深まり、同時に弥生の古生物への深い愛と探求心にも気づいていきます。
作中でもたくさんの古代生物が紹介されて、理一と一緒に古生物がどんな姿だったのか興味がわいてきます。
終盤で提示される、別れの予感。
さて、二人が選んだ道は?
合言葉は、二人には古代生物がついている!
既に絶滅した古代生物、中でも当時の海を思うがままに遊泳し「捕食者」と称されたアノマロカリスという「奇妙なエビ」を誰よりも溺愛していた弥生ちゃんは、奇遇にも行き倒れになっていたところを理一くんに拾われた。そこから始まるラブコメディー。
恋愛経験の乏しい二人が少しずつ距離を縮めていくという鉄板の恋愛要素に、古代生物の研究を絡めた展開がクセになる。回を追うごとにジレジレ感が増し、その原因が古代生物絡みだと理解するほど、終盤の結末に深い感動が込み上げてくる。不器用な理一くんが、得意の料理一本で彼女を振り向かせようとする健気さがまたキュンとなる要素かもしれない。
こんな古代生物が「いたんだっ!」と叫びたくなるほど細かく調べ上げられ、且つ本企画のテーマである「飯テロ」要素にも手を抜かないところに、作者さまの強い意気込みが感じられた。もしかしたら、理一くんは「捕食者」と称されたアノマロカリスを弥生ちゃんと重ねて、あらゆる料理で胃袋を掴もうとしたのではないかという深読みまでしてしまう。それほどに、色々と考えさせられる素敵な作品☆