第43話 増田自慢



「それでねそれでね!! 純ちゃんはこう言ってくれたの……" 琴音は黒髪も似合うけど金髪も似合そうだよな! 俺、清楚な琴音も好きだけど少しやんちゃな琴音も好きだな!"……って!」

『『素敵な愛情表現、羨ましいですわ〜!!』』


 琴音の話を聴いていたお嬢様達は黄色い声を上げる。今は増田の異変(笑)も治まり体を少し動かしたりとそれぞで楽しんだ後普段通りの触れ合い……お茶会を行なっていた。


 周りにいる執事やメイド達が用意してくれた色とりどりのレジャーシートを引きその上にお嬢様達はお上品に腰を下ろしていた。何個かの大型のレジャーシートが芝生の上に引かれお茶会をしている状態だ。

 その中でも増田を囲むように琴音と姫乃がいるレジャーシートに多くのお嬢様達や先生方が集まっていた。他のレジャーシートに腰を下ろすお嬢様達や先生方も表面上はその場でお茶会をしているが実際は増田達の話に耳を傾けている。


「わ、わたくしもありますわ!」


 琴音に対抗する様に姫乃も声を上げる。そんな姫乃に視線が集中する。


「……コホン。皆様もご存知の通り純一さんはわたくしを助ける為に単身で悪党を捕まえにきてくださったのですわ。その時の言葉は一字一句覚えていますわ。……"俺の愛する姫乃は渡さない! だからお前は手を引け!!"……と言って悪党のお方を説得してくださったのですわ!!」

『『増田様、かっこいいですわ!!』』


 またも黄色い歓声が上がる。


「むむっ! 私純ちゃんになんて言われたことない……ズルイ」


 琴音はそんなことを呟くと隣に座る増田の脛を抓る。


「痛っ!?」


 一人悲鳴を上げる増田。他の人々は姫乃の話す内容に夢中で増田の悲鳴には気付いていないようだ。増田は琴音が自分の脛を抓ってきたことがわかっているのか講義の視線を送る。


「ふんっ」


 ただ琴音はそっぽを向いてしまう。


 そんな中増田は「待った!」をかけたい。


 いや、琴音の話は合っているけど。東堂さんにそんなことを一言も言った覚えはないよ。東堂さんは東堂さんで"確か"とか言ってるし。


「そ、そうだ! 私もとっておきがあったよ!」

『『???』』


 今も「きっと純一さんは私の白馬の騎士様なのですわ!」などと適当なことを姫乃が自慢げに話している。そんな横で何かを思い出した様に勢いをつけてその場で立ち上がる琴音。


「わ、私は純ちゃんと一緒にお風呂だって入ったことあるもん! 私の体の隅々まで純ちゃんに見られちゃったんだから!!……小さい頃だけど(ぼそっ)」

「お、お風呂!? 体を隅々まで!?」

『『殿方と湯船に!!?』』


 琴音自身も恥ずかしいのか頰を染めながらも大声で告げる。そのことに姫乃含める話を聞いていた全員が絶句する。それは昔のことではなく一緒にお風呂に入っていると思ったからだ。


 いや、琴音とお風呂に入ったって言っても琴音が本当に小さかった時に何回かだけ入っただけでしょ。俺も正直、記憶でしか覚えて無いし。それに幼女の体を隅々まで見るとか……俺、ただの変態やん。姫花ちゃんとの浴場は……アレはノーカンで。


 琴音の話を聞いた増田はなんて言ったらいいかわからないと言った微妙な表情を浮かべる。


「そ、そうだよ! 私は純ちゃんとい、色々なことしたんだから!! 今だって一緒のお布団で寝るんだからね!!(増田の布団に勝手に入り込んでいる)」

『『い、一緒に寝るぅぅ!?!』』


 琴音の話す内容を理解したみんなはまたも驚きの表情。「殿方と寝る」という行為は特別な意味も含めるので尚更だ。


「ふ、不純ですわ不純ですわ! そんな行為、はしたないですわ!!」


 ただ琴音の話す内容を過剰に捉えてしまった姫乃は顔を真っ赤にしながらも涙目だ。涙を目尻に浮かべたまま自身の綺麗な銀髪を振り回して「琴音の行動ははしたない」と叫ぶ。


「えぇ、そうかなぁ? 私達ももう高校生なんだからこのぐらい普通だよぉ〜?」


 姫乃をあえて煽る様に話す琴音。


「ふ、普通ではありません! それに男女のお付き合いは清きお付き合いが理想的なんです! そ、それを事欠いて式も挙げていない未婚の女性が殿方と一緒の寝床で寝るなど……!! そ、そんなのもう、その、ふ、不純異性交遊ではないですか……!!」


 何を考えてしまったのか首から上を真っ赤に染める姫乃。ただ姫乃の話を聞いた琴音も顔を赤らめていた。


「……不純異性交遊って。私と純ちゃんは婚約してるし問題ないと思う。もしかして……姫乃ちゃんってば変なこと考えたから動揺してるとか?……姫乃ちゃんのエッチ」

「エッチ!? わ、わたくしは決してエッチではありませんわ!! あっ! じゅ、純一さん、本当に私はエッチな子ではありませんので!!?」


 増田がいることを思い出した姫乃は直ぐに弁明する。そんな中、増田が何かを答える前に悪い笑みを浮かべた琴音が割り込む。


「とか言っているけどー姫乃ちゃんはエッチだよね? なんかこの前純ちゃんのことを想うとおまた辺りがキュンキュ——「琴音ー!! 今回ばかりは許しませんわ!!」——うわっぁぁ!? 姫乃ちゃんが怒った!?」


 そう言うと二人は増田から離れてレジャーシートの上で取っ組み合いをする。


 その間も「あ、アレは少しムズムズしただけです!」や「……陰で気持ちよかったとか言ってたじゃん」や「そんなこと言ってません!! 適当なこと言わないでくださいまし!!!」とキャットファイトを繰り広げている。


 近くで見たり聞いたりしている他のお嬢様方は姫乃と琴音の会話についていけないのか困惑していた。周りで見ている先生方や執事、メイド達は余所余所しい。


 まぁ、はしたないも何にしても正直、どっちもどっちなんだがね。ハァ、お嬢様なんだからもっとこう慎ましくして欲しいものだよ。


 「またゲームの時と雰囲気が変わっていく〜」と心の中で染み染みとゲームの姫乃達を思い浮かべる増田。

 そんな増田は空を見上げていた。


「……空が、綺麗だ……」


 雲一つない青空一面の遠足日和な空を見て一言嘆く。


「……増田様、ほうじ茶を入れましたが、如何ですか?」

「え? あぁ、頂きます。……美味しいですね」

「ふふっ、それなら良かったです」


 姫乃と琴音が争っている中ちゃっかりと増田のポイントを稼ぐ川瀬。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る