第31話 エピローグなるもの





「……ってなるかーー!!!?」


 勢いをつけて布団から起き上がる増田は寝起き早々声を張り上げる。


「ハァ、ハァ、ハァ。何が…… To be continued...だ。アホ、カス、ボケが。舐めやがって……!!」


 荒い息を吐く増田は息を吸う様に暴言を吐く。


 ただ増田が怒るのも当然のことだろう。6月27日(土)に「東堂姫乃」の結婚披露宴を阻止出来た増田はその後の東堂家が開催したパーティに出席することはなかった。が、東堂家と仲間だと思っていた警察官の山本巡査長に嵌められた増田は東堂邸に約一週間の間も隔離されていた。


 囚われのみ(笑)となった増田は東堂邸に椎名の監視の元動けずにいた。そんな増田の元に初めに顔を出したのは増田を嵌めた山本だった。山本の登場に「「気晴らしに飲みに行こう」。そう言ったのはヤマさんじゃないですか! あの時から俺を嵌めるつもりだったんですか!!?」。増田は異議を唱える。増田の話を聞いた山本は言い訳はしなかった。その代わり何処か罰が悪そうな表情を浮かべながら「いや? 嘘ではないな。本当にあんちゃん……増田君とは飲みに行こうと思っていたさ。ただ、今じゃないってことさ。それにこれはからの命令でね、俺でも逆えんのよ。これが。まぁ、悪いとは思っている。それに俺も妻がいる身だ。簡単に変な真似はできないのさ」。そう言われてしまい納得してしまった増田からはぐうの音も出なかった。


 その後も山本と少し話すと別れた。その後に増田に待っていたのは東堂家とのだった。まず初めに今回増田に助けてもらった姫乃の自室に連行され手厚いお礼をされた。そのお礼の中でもヤバかったのが姫乃が何処か妖艶な雰囲気を醸し出す黒色のネグリジュ姿で増田の前に現れたことだ。その時はなんとか鋼の魂(笑)で耐えた。その後に姫乃を名前呼びで呼ぶようにされた。なんでも「琴音や椎名、姫花が下の名前で呼ばれているのに自分だけ「東堂さん」は不公平ですわ。おかしいですわ」とのこと。その事に難航していた増田だったが脱腸の思いで「姫乃さん」と呼ぶようにした。その後も色々とあったが姫乃と仲良くなれたのは確かだろう。


 「純一さん」と呼ばされたのはまだ良い。襲われそうになったのは……ノーコメントで。「結婚届」なる訳の分からないものに名前を書かされそになったのは多分。アレは気のせいだろう。うん。


 姫乃に色々とお世話をされ、何処か新婚生活の様なことをさせられていた増田だったが、姫花の登場でようやく姫乃から解放された。解放されたが東堂家からは解放されていない。だが、姫花との触れ合いは中々充実と出来たと思う。姫花の様な汚れの知らない幼女に手を出せる程の勇気のない増田は言われるがままに姫花と遊んでいた。まぁ、椎名という監視官がいるため不埒な行動など起こせるはずもないのだが。

 ただ、姫花との触れ合いで気付くこともあった。どうやら姫花は増田のことを遊んでくれる人、もしくはと認識している様だった。でもそれはしょうがないことだろう。自分の本当の父親は離婚していなく女性だらけの家族。その中に優しい?男性が入ってきたのだから。なので増田はこの一時は姫花の父親を担おうとした。父親役を務ると決めた増田は「俺は姫花ちゃんのお父さんだからやりたいことをなんでもやってあげるよ!!」などと適当なことを嘯いてしまう。増田としては冗談でも姫花は本当だと捉えてしまったようで。「なら、一緒にお風呂に入りたい!!」などと言ってくる始末。「姫花お嬢様! 純一の様な卑猥な生き物とお風呂を共にするのは危険です!!」と一言多い言葉で椎名が止めたが椎名の奮闘も虚しく増田は姫花と大浴場にてお風呂を共にする事になる。


 え? 姫花ちゃんとの浴場はどっだったかって?……馬鹿野郎!! 言えるわけがねぇだろうが!! ○ねェェ!!。


 こんなことを言っている増田だがどうか許して欲しい。彼は多感な時期なのだ。それに姫花との浴場で欲情してしまった幼女スキーロリコンなのだから。


 ただ安心して欲しい。椎名守護者により姫花の貞操は守られた。


 姫花との嬉しい……嬉しい出来事(言い換えた理由とは?)が終わった後は麗奈とのお話だった。

 そこでの麗奈との"オハナシ"は増田が一番逃げ出したいと思った出来事だった。麗奈は増田を自身の自室に誘い込むと誰の立ち入りも禁止した。それはメイド長の椎名もだった。そんな状況で増田が麗奈に何をされたかというと……。


 話し合いだった。ただこれは単なる話し合いではない。様な"オハナシ"だった。まず初めに言われたのが「今回姫乃ちゃんと東堂家。そして……ありがとう、増田君」そう言われてしまった。「……エ? なんの話ですか?」と、何も知らないと話を逸らそうとしたが既に東堂家を助けたことがによりみんなにバレてしまった為、意味を為さない。


 「東堂姫乃」を救うと共に「東堂麗奈」も救っていた増田。麗奈は元夫である「東堂東弥」に「再婚しないか?」や「言うことを聞かないと娘達や使用人に手を出す」と脅されていた。が、それも増田が影で警察の手を借りて全て解決していた。


 そんなことがあり。始めからあった増田への恋心が爆発してしまい増田と東堂家の婚姻をどうしようかと考えていた。そう、だ。姫乃や姫花、麗奈という誰か一人との婚姻ではなく東堂家だ。

 だが増田は「さ、流石に全員との婚姻など重婚になってしまう! 認知されるわけがない! だからやめた方がいい!!」と真っ当なことをいい話を有耶無耶にしようとした。それでも麗奈は「そうね。法律が許さないわね。なら、その法律を変えちゃえば良いのよ?」と簡単に言う。「……」と無言になってしまう増田。


 そんな危ない状況の中「その話、待った!!」と増田を救う人物達が現れた。それは……愛沢家の若菜と琴音の親子と本庄努だった。麗奈の親友である若菜の手引きで麗奈の部屋に強行突破をして入ってきた若菜と琴音。それに本庄努。


 増田は増田で若菜達の顔を見た瞬間「助かった!!」と思った。が、それは勘違いだった様だ。初めは若菜や琴音は増田を軟禁した事に麗奈に対してご立腹だった。だが「法律を変えて全員が婚姻する」という計画を麗奈から聞いた二人の顔は変わる。増田を狙う一匹の淫獣……ハンターの顔に。

 「ひっ!!」と悲鳴を上げた増田は最後の頼みの綱であり心の友である本庄に顔を向けるが……「増田さんはモテモテですね!」と爽やかな笑みと言葉を溢すだけで助けてなどくれない。


 その後は「婚姻」の話はまた今度と引き延ばしになり増田は急死に一生を迎えた。まぁ引き延ばしにされただけで状況は何も変わってなどいないが。



 ま、まぁ、焦るなよ? まだ始まったばかりだろ?(彼は多感な(以下略))。



 ◇



 そんなこんながあり冒頭に戻る。6月27日(土)から一週間が経った7月4日(土)。増田は今までに起きたことを思い返していた。


「いや、まあ。助けられた「東堂姫乃ヒロイン」が「本庄努主人公」に恋慕を抱き……やんごとなきことをする……ってのはわかるが、なんで俺なんかねぇ〜。いや、まあ。最後の一線はどうにか留まっているが今後どうなるのやら。俺の事をそんなになんで好いてくれるのかはわからんが、嬉しいさ。嬉しいが。ただ、俺は関われねぇんだわ。どうしたもんかねぇ……?」


 自身の布団に正座しながらも目を瞑り考える増田。今の増田の状況は全男子諸君が望む様な素敵な状況なのは確かだ。この状況を名前にするなら「ハーレム状態」と言うだろう。だが何度も言うが増田は『ルサイヤの雫』とは全くと言って良いほどに関わりを持たない存在だ。そんな存在がメインキャラクター達との関わりを持てば今後どんな事が待っているか分からない。現に今、訳の分からない状況に差し掛かっているのだから。


「……にしても6月に結婚式を挙げる花嫁を「ジューン・ブライド6月の花嫁」と呼び。6月に結婚をすると幸せになれる、ね」


 そう言うと増田は一つ息を吐く。


「そんなもん、好き同士じゃなくちゃあ成立せんだろ。『ルサイヤの雫』の制作会社?シナリオライター?も何を思ってこんなシナリオ……"バットエンド"を作ったのやら。まぁ、防げたからもうなんとも思わんがね」


 その一言を呟く増田。ただ、時間は待ってなどくれない。シナリオ通りならこのまま進むと……。




       ピンポーン。




 増田がいる寮のインターホンが誰かに鳴らされた事を伝える。ただ、愛沢家や東堂家には用務員寮の合鍵を作られてしまい彼女らは無断で出入りしてくる事を知っている。なのでインターホンなど押す輩はいない。本庄努ですら何故か合鍵を持ち勝手に寮の中に入ってくる始末なのだから。


「……誰だ? というか始めてインターホンを使われた様な気がするな。まぁ、インターホンを使うってことはではないだろう。……宅配便? 何か頼んでたっけ?」


 増田は立ち上がると一人で色々と呟きながらも備え付けのインターホンのモニターを見ることなく玄関に行くと無用心に扉を開ける。そこにいた人物とは……。


「——ッ!!……うぅ……」


 いきなり扉を開けられた事により少し怯えている小動物感を思わせる一人の少女。子百合澤女子校の制服に身を包み何かを大事そうに両手で持ち立っていた。その少女は綺麗な黒髪を肩口まで伸ばし、片方をおさげにして以前と同じ様に片目を隠している可愛らしい少女だった。


 ただ、増田はその少女に皆覚えはあるし、良く知っていた。


「……一ノ瀬、さん?」


 その少女の名前を増田は口にする。増田の言う通り目の前に立っていた少女の名前は一ノ瀬祈と言い。増田が『ルサイヤの雫』の中に入り込んだ時に増田に「覗き」の容疑をかけてしまった少女だった。それに今だから言える事だがこの少女も……『ルサイヤの雫』のメインヒロインを務める主要キャラクターだった。



 これはか? なのか?


 そんな少女が増田の目の前にいた。面識はあるとしても今自分の目の前に現れた事に意味がある。増田はある事を思い出す。それはこの後……7月6日(月)にある子百合澤女子校一年生による「遠足」についてだ。そのメインキャラクター兼メインヒロインが今目の前にいる「一ノ瀬祈」なのだ。


「……うぅ」


 自分の事を上目遣いで見てくる一ノ瀬。増田は頰を痙攣らせながらもどうにか平静を保とうと苦笑いを浮かべるしかなかった。








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