第17話 東堂家団欒




 無事?増田の誤解が解けた後、増田達は一応初対面?な為自己紹介をすることにした。ただ、路上で自己紹介をするのも幼女の「姫花」がいる為、警察官達が乗ってきたパトカーに乗りある場所に向かいながら話し合うことにした。因みに運転手は警察官の一人のうちの壮年のダンディーな男性警察官だ。もう一人の男前というかかなりイケメンな男性警察官は壮年の警察官の助手席に座っている。


 みんなももうお分かりの通りこの幼女の本名は……「姫花」と言い。東堂財閥のお嬢様だと言う。要するに麗奈の娘であり姫乃の妹なのだ。

 純一を姫花が知っているのは以前、似たような状況になった時にその時も増田に助けてもらったからだという。


「むふっーーー!!」


 その姫花は増田の隣に座ると足をバタバタと可愛らしく動かしながらニコニコと笑顔で増田の顔を見てくる。


「……は、はは」


 自分の事を見てくる姫花に渇いた笑みを向ける。隣に幼女がいるというのはなんとも光栄なことだが今は少し、喜べない。


 いや、まぁ。さっきまでは忘れていたというか記憶に触れなかったから思い出せなかったけど今はしっかりと覚えているわ。以前の「増田純一」が姫花ちゃんを助けていたのが。ただ、なぁ。姫花ちゃんはわかったけどコッチがまたなぁ……。


 そんな事を内心で考えてしまった増田は主人の姫花の隣ではなく増田の隣の席に座るメイド服を着た女性。改めて「小鳥遊椎名たかなししいな」に顔を少し向けると窺う。


「……何か?」

「い、いや、なんでもない、です。はい」

「そうですか。ただ、あまりジロジロ見ないでください。

「……」


 増田の視線に瞬時に気付いた椎名は冷たい声を出し、顔になんの表情も浮かべずに増田に顔を向けると共に愛称?で呼ぶ。そのことに増田はため息を吐きたいところ、どうにか無言で耐える。ただ、の対応にうんざりとしたい気分で一杯だった。


 おい、おいおいおい。メイド長までもが俺の知り合いなんて聞いてねぇよ。それに知り合いは知り合いでもなんかスゲェ雰囲気悪いし。それに「クズ純」って俺の名前かよ。ネーミングセンスェェ。


 増田の言う通りというか記憶通りだと姫花同様「小鳥遊椎名」という東堂家のメイド長も自身の知り合いだと

 それも「小鳥遊椎名」に関しては中学から高校にかけて同じ学校の上、同じクラスという本当の意味での腐れ縁となっていた。増田の記憶通りでは椎名とは話す中だが、価値観の違いからか犬猿の中、らしい。


 そんな「小鳥遊椎名」のことを説明するなら"完璧な女性"とあがる。『ルサイヤの雫』内でも屈指の完璧なキャラクターでなんでも出来る超が付くほどの万能な女性だ。先の話でも出たが東堂家のメイド長であり。主人公「本庄努」のサブヒロイン役をも担う。

 そんな椎名の性格はとても温厚でクールなところが人気を博したが嫌いな相手や敵対する相手には容赦はしない。30歳手前で東堂家のメイド長までのし上がる才覚を見せた。


 ただし、増田の記憶にあるのは「小鳥遊椎名」は「増田純一」のことをだと思われていると記憶が教えてくれる。


 いや、いやいやいや!! 純一? お前何やっているんだよ?? 「小鳥遊椎名」とは仲良くしろよ? この女性は仲良くするのが吉だろうがぁっ!!? まぁ、俺自身?の行いという結果のせいというのは置いといて……。


「……はぁ」


 そんなことを思う増田は自分でも気付かないうちにため息を吐いていた。


「……女性に挟まれているという男としては羨ましい状況なのに関わらずため息を吐くとは随分な態度ですね。どうせ私達のことを性の吐口としか見ていない変態には何を言ってもしょうがないでしょうが。まぁ、流石クズなだけはありますか」


 増田に過剰に反応する椎名は眼光を鋭くし、冷たい表情を作るとただのため息に突っかかる。嬉々として。


「……」


 ワォ!!! 椎名さんは国語が堪能で。す、スゲェや!! うっ、うぅ。


 何故か目頭が熱くなり滲む。そのことにおかしいと思っている増田は何故だか目頭を手で押さえると共に嗚咽を漏らす。


「2人共仲良しさんだね!!」


 増田と椎名の親睦?を見た姫花は何を勘違いしたのかニコニコと笑い、2人に告げる。


「はい。お嬢様、私はこちらの汚……増田さんと知古にあたります。なので仲がいいのも当たり前かと」


 椎名は暗殺者の様な表情を一瞬にして朗らかな普段浮かべる笑みに変えるとそんなことを嘯く。流石完璧と名高いだけはあるだろう。


 ……一瞬、増田のことを「汚物」と言い間違えそうになっていたが。


「は、はは、はは!! 姫花ちゃん。俺と椎名はズッ友さぁ!!」


 椎名に乗っかる様に精一杯笑顔を作る増田は姫花に何か不信をもたれない様に相槌を打つ。


「……余計なことは言わなくて良いんですよ。クズ男」

「はは、ははは。はぁ」


 増田の対応をお気に召さなかった椎名は増田だけに聞こえる様に辛辣に呟く。そんな椎名に増田はただ、渇いた笑いを送る。


 そんな少し雰囲気がギスギスとした中、増田達を乗せたパトカーはある場所に向かう。   



 ◇閑話休題誰か助けテェ!!



 増田達を乗せたパトカーは20分ほど走らせるとようやくパトカーを止める。着いた場所は子百合澤女子校近くにある東堂邸の目前だった。東堂邸は白を基調とした綺麗な壁一面で囲われた赤茶色の屋根が特徴のお屋敷だった。膨大な庭に色鮮やかな草花が咲き、とても綺麗だった。


 警察官2人に外に出て良いと許可が出た為、椎名から順番に降りる。椎名はパトカーから降りると共に主人である姫花の手を引き安全にパトカーから降ろす。その様子を未だにパトカーに乗っている増田はただ、見ていた。


「椎名お姉ちゃんありがとう!!」

「いえ、これも私の務めですので」


 姫花のお礼に簡素に応える椎名。ただ、椎名は姫花のことを決して嫌っているわけではない。増田の時とは違く素直に笑顔を見せているのだから。もう一度言う。増田の時とは違くて素直に笑みを見せているのだから。


「……」


 けっ! 俺の時ももっと優しく接しろよな。まぁ、別に良いけど。


 増田は椎名の態度に少し納得が言っていないと言う様な様子だが、姫花と椎名は主従関係な訳なので礼儀正しく、恭しく接するのも当たり前だと思うことにした。

 ただ、増田は違和感に気付かない。記憶では知り合いだと分かっていても椎名と接したのは初めてなはずなのに悪態をついてしまうことに。


 そんな増田は姫花や椎名に気付かれないように車内にいる警察官達に何かを話しかけていた。


 増田が怪しい行動をとっている時──。


「──姫花ちゃん! 椎名ちゃん! 無事で良かったわ!!」

「姫花!! 椎名!! 良かった、ですわ……」


 麗奈と姫乃の東堂親子は荒い息を吐きながら東堂邸の白色の門から急いで出てくる。姫花と椎名の無事を確認できた麗奈はそのまま姫花達の元へと向かうと姫花を抱きしめる。姫乃は安心してしまったのかその場でペタンと地面に座り込んでしまう。


「わっぷ! お母さん、苦しいよぉ〜!!」

「ダメ、離さない! 私を心配にさせたんだから!!」

「んっ……ごめんなさい」


 麗奈の大きな胸に押しつぶされる様に抱きしめられた姫花は始めジタバタと藻搔いていたが。麗奈の気持ちが伝わったのか動きを止めてなすがままにされていた。


 そんな親子を親愛の表情で見ていた椎名だったが自身が犯した過ちを麗奈達に謝ることにする。


「──麗奈様。姫花お嬢様とのお話中のところ申し訳ありませんが私の話を聞いて欲しいのです」

「ん? 椎名ちゃんどうしたの?」


 姫花のことを抱きしめて頭を撫で撫でしていた麗奈は椎名の問いに顔を上げると聞き返す。勿論、その時に姫花を抱きしめるのも頭の撫で撫でも辞めない。


「はい。今回は私が付いていながらも姫花お嬢様に怖い思いをさせていまいました。つきましてはどの様な処罰も受ける所存です」 


 椎名はそんな事を言うと恭しく頭を下げる。


 ただ、麗奈はそんな椎名に。


「良いのよ。椎名ちゃんはしっかりと姫花ちゃんを守ってくれたんだし、こうして無事な姿を見せてくれたんだから。それに、私が貴女に罰なんて与えると思った?」

「い、いえ! 思えませんが、今回は内容も内容ですので……」


 暗い表情を浮かべる椎名は麗奈に顔を向けられないのか俯いてしまう。


 椎名の表情を見た麗奈は「頭は良いのに不器用なんだから」と、呟くと姫花を解放し、椎名の頭を撫でる。


「れ、麗奈様!?」


 麗奈の行動に驚いた椎名だったが、自分が俯いているところを上から頭を撫でられている為、上手く身体を動かせない。そんなもどかしい思いの中、麗奈は椎名に聞かせる様に話す。


「貴女は賢いしなんでもできるわ。でも、貴女も一人の女性なの。だからあまり無理してはダメよ? それに、貴女も椎名ちゃんも……私の娘の様なものなんだから、ね?」

「は、ぃ。ありがとう、ございます」


 麗奈の言葉を聞いた椎名は俯きながらも耳と首元を真っ赤に染める。どうやら恥ずかしかった様だ。


「お母さん!! 椎名お姉ちゃんに罰なんてめ!! 椎名お姉ちゃんは姫花を守ってくれたの!!」


 どうやら麗奈が椎名を虐めていると思ったのか椎名を守る様に動く姫花。そんな姫花に苦笑いを浮かべる麗奈。

 

「わかってるわよ。椎名ちゃんに罰なんて与えないから安心しなさい」

「なら大丈夫! あっ! そうだ、お母さん!! あのね、あのね! 今日も純──「話の途中申し訳ありませんが、私達も職務を終えたので帰らせて頂きますね。お嬢様達を危険に晒した犯人達も警察署に送らねばなりませんので」……んゆ?」


 パトカーから降りてきていた一人の壮年の警察官が姫花の言葉を遮る様に自分達は役目を果たしたことを伝える。話の内容がわかっていない姫花は首を傾げる。


「わかりました。今回はありがとうございました」

「妹と椎名を助けて下さりありがとうございますわ!!」

「いえ、では」


 麗奈と姫乃が頭を下げてお礼を言う中、壮年の警察官は自身も警察帽を脱ぐと頭を下げてパトカーに乗り込み。そのままを乗せて発進させる準備をする。


 

 


 






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