第16話 ポリスメンはつおいです(まる)
目の前には自分に笑みを浮かべながら見て来る美しい銀髪を持つ幼女(髪色は何処か既視感が)。増田と幼女を交互に見て最後に増田のことを性犯罪者を見る様な目線を送るアニメの世界から出てきたような薄緑色の髪色を持つメイド服を着た美人な女性。よく見るとこの女性もお胸様がデ……おっと誰かが来た様だ。そして、女性達を助けた身体に幼女を付けた
今の状況がわからない増田は。
み、みんな、まずは俺の話を聞いてくれ。
今、俺に起こった事をありのまま話すぜ。
『俺は女性達を助けたら、以下略……』
そんな馬鹿なことは考えずに今回は真面目に考えよう。そう思った増田はまず、自分から離れてもらうためにも幼女に話しかけることに決めた。
あぁ、本当の事を言うならこのままずっと足に幼女を付けておきたいところだが、脱腸の思いで離れてもらおう。そうしよう。今まさにこの幼女の知り合いであろうメイド服を着た女性が携帯端末を操作してナニかをしようとしているんだ。それがナニかは知らないが俺には不味いものに思えて震えて来る。勿論、俺の顔は逐一変質者を見る様な目で見てきている。なので興奮する。あ、違う。間違えた。勘弁してほしい。
軽蔑な視線を向けられて少し鼻息を荒くしている
幼女の目線に合わせる様に屈んだ増田は紳士的に声をかける。
「お、おへ、へへっ。お、お嬢ちゃん? ど、どうしたのかなぁ? 悪いおじさん達は俺が、倒したよ? だから、問題ないから、ないからァ……ッ!! 離レ、ヨウ?」
増田はどもりながら薄笑いを浮かべ、荒い息を吐き口角を片方だけ上げ幼女に伝える。その姿は完全に……不審者だった。
そんな中、幼女はというと。
「やっ!! 純一はそう言ってアレから全然姫花と会ってくれなかった!! だから、もう離れない!!!」
増田の話を聞いた幼女は一度増田が屈むことがわかってか足から少し離れたと思ったが、屈む増田の身体に「もう離れない」という様に抱きついてしまう。
「そ、そっかー!! なら、しょうがない、かなぁーーー!!?」
幼女に離れたくないと言われてしまったならしょうがないと思った増田は保護者であるはずのメイド服を着た女性に助けを求める様に視線を向けるフリをする。離れたくないが、離れなくては社会的に抹殺されそうだと思ったからだ。
「──」
ただ、メイド服を着た女性は誰かと話しているのか携帯端末を耳に当て声をかけていた。そんな女性は増田の視線に気付いたようで顔を向けてきたが未だに侮蔑を孕んだ表情のまま携帯端末を持っていない方の右手で首を切る様なジェスチャーをする。
そのジェスチャーを見た増田は訳もわからず冷や汗を垂らす。
ま、待ってくれよ。あの首を切る様に手首を動かすジェスチャーって会社とかのクビを伝える時の合図じゃなかったっけ?それじゃなければ……死、とか?
そんな事を考えてしまった増田は青ざめると直ぐに行動に移す。
「お嬢さん! 今は離れよう! 一旦、チョビットで良いから!」
「やっ!! 純一は逃げるつもり!!」
「なんでぇ!!? 逃げないからぁ!! ほら、俺がもし逃げたらオモチャ買ってあげるから!!」
大抵の子供ならこれで離れるだろうと思っての手だったが。
「いや!! オモチャなんて家の人に言えばいくらでも買ってくれるの!! それに、オモチャは純一だけで十分!!」
「俺、君のオモチャだったのぉ!!?」
意外な展開に驚く増田。だが、このままでは拉致があかないと思った増田は強行突破に出る。幼女のお身体にお触りし、自分から離れてもらおうとした。
だが──
「いやーーーー! 純一、なんでこんなことするの!!!」
増田が幼女のお脇に触れ、少し持ち上げた時幼女は暴れる。それも性犯罪者が幼女に危害を及ぼしている時の様に。
「──クズ」
その事に携帯端末をいつの間にかしまっていたメイド服を着た女性は何かを呟く。そのまま増田を見る目力は殺意を増す。
「あぁーーー!! わかった! 下ろすから叫ばないでくれ! 俺、このままだと何か大変なことが起きそうだからァ!!!」
増田はメイド服を着た女性の視線に気付きながらも本物の犯罪者にはまだなりたくなかったので直ぐに幼女を地面に下ろし、叫ぶ。
増田が幼女を下ろしたと共に約束を破りその場を逃走しようとした。そんな中、増田は身動きが取れなかった。何故か、誰かに肩を掴まれている様な感覚がある。メイド服を着た女性を見ても遠くで侮蔑を込めた視線を向けて来るし、幼女に俺を止めれる様な力は持たない。
じゃあ、誰が──
そう思い、唯一動かせる首を回して背後を振り向くと。
「……」
『……』
満面な笑みを浮かべる警察官のコスプレをしていると思われる。いや、している男性二人が居て。無言で増田の肩を掴み。何故か二人とも増田の肩を掴んでいない方の左手の親指を上に上げて「コッチニコイヨ」というジェスチャーをしていた。
状況がわからない増田は一言。
「アレ、今日ってコスプレ大会とかありましたっけ? 俺、忘れちゃいましたよ!!……今から帰って変質者のコスプレ用の服持ってきて良いですか?」
『……』
無言の圧力。
無理だよね! 知ってた!!
◇
幼女と離れ離れにされてしまった増田はモノホンの警察官二人から取り調べを受けていた。その時にお付き?の女性に保護されていた幼女が何やら騒いでいたが警察官達は取り合わない。今、目の前にいる警察官達はどうやら幼女のお付き?の女性が携帯端末を使って助けを呼んでいたようだ。さっきの輩を追っ払う為ではなく増田という性犯罪者を捕まえる為に。
いや、俺性犯罪者でも変質者でも無いんだけど……。
一応、本当に一応増田はここにいる女性を助けに来る為に駆けつけたと本当の事を話したが警察官が見た現場が現場だった為信じてくれず。途方に明け暮れていたが警察官を呼んだはずのメイド服を着た女性が動く。
「……これを聴いてください」
「これは、録音の音声かな」
「何が録音されているのか気になりますね」
何やら携帯端末を取り出したメイド服を着た女性はその携帯端末で録音していたモノを警察官達に聞かせているらしい。恐らくその録音の音声は自分の横に伸びているロリコン共の音声だろう。
なので増田は自身の無実が証明されるはずだと期待を込めて音声を聴くために耳を済ませて聞こうと試みる。
そこから聞こえる声は──
『デュフッ、デュフフフフッフ!! お、お嬢ちゃん? ど、どうしたのかな? 悪いおじさんは俺だよ! だから、おじさんと大人のおままごとしようゼェ!? 踏んでください!!』
そんな性犯罪者の様な声が聞こえる。何故か聞き覚えのある声だが。
こ、コイツは完全に変態だぜ。こんな言葉を幼気な幼女にかける奴がいるとは末恐ろしいわ。誰かに似ているけど俺なわけ……あるわ。てか、コレ俺じゃね? え? 待って? なんか所々知らない言葉が混じっているけど俺だろ、コレ。だって知ってるもんこの声!?
増田は現実逃避を逆に逃避して現実を見る。今、音声から永遠と流れ続けているのは完全に自分の声だと。色々と変換されているけど。
増田が泣きそうになっていると視線を感じた。なのでそちらを見ると──「フッ」と、録音を流した張本人であるメイド服を着た女性は悪魔の様に笑っていた。
「……」
恐らく女性じゃなくて美人じゃなければ殴っていたと思う。まぁ、メイド服を着た女性が確信犯で間違いないだろう。けど、よくあんな短時間で変換?合成?出来たよな。
自分の状況を忘れてその手腕に興味を抱く増田。だが、忘れてはいけない。今が生と死の狭間だと言う事を。
「……ほら、今流れた声が明らかなる証拠だろう。早く来なさい」
「足掻いても刑が長引くだけだよ?」
自分の話を全く信じてくれない二人の警察官達はそんな事を伝えてくる。
「……終わった」
増田は何を言っても取り合ってくれない警察官達に諦めてしまったのか両手を掴まれると項垂れながらドナドナされる。そんな自分を救ってくれる人がいない絶対絶命のピンチの中、増田の本当の救世主は、現れる。
「──めっ!! 純一は変な事はしてない。姫花達を助けてくれたの! 悪い人はそこのおじさん達!!」
増田を連れて行こうとしていた警察官達の一人の足にしがみつくと幼女は増田を擁護する。たどたどしい話し方だが、警察官達にはしっかりと伝わったようで。
「どうします?」
「嬢ちゃんがそう言っているなら、こっちの男は本当に助けに入っただけの一般人……なのか?」
幼女の懸命さが伝わったのか警察官達は訝しげながら話し合うと一旦歩くのを辞めてメイド服を着た女性に視線を向ける。視線を向けられた女性は肩を竦めると警察官達に本当の事を話す。
「純一は助けに来ただけで、ただの変態」だと。
いや、俺の扱い初対面なはずなのに雑って言うか、辛辣なんですけど……。
増田は内心で納得がいっていない様な気持ちになる中、漸く警察官達に解放された
でも、増田は気付けない。幼女のお付きのメイド服を着た女性が警察官達に話す時に増田の名前を「純一」と呼んだことに気付かない。現実離れした出来事の連続で脳がしっかりと働いていなかった様だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます