第15話 野生 の 幼女 が 現れた。
◆
増田は現在愛沢邸から離れた路地にいた。日もだいぶ落ちてきていて時期、夕方になると言う空模様だ。
「──今日も、もう終わりだな」
なにがとも言わず、空を見上げた増田は呟く。
……え? あの後どうなったかって? 簡単な話だ。あの後三人で仲直り?して今回お呼ばれした根本の原因のお昼をご相伴になった。勿論、料理の数々は美味しかったさ。ただ、終始「あなた、あーん」と若菜さんに食べ物を箸移しされたり、「ダーリン! これ、食べて!」と言われ、若菜さんと同様に箸移しで琴音に食べ物を食べさせられていたが、まぁ、普通だろう(困惑)。
別れ際に二人から「同棲はいつする?」と聞かれたが「それもまた今度」と、お茶を濁しておいた。
多分、本当に多分。大丈夫だと思うけど(何が?)。俺には優先的に行わなくてはいけないことが決まった(切実)。
それは──
小百合澤女子高に居るはずの「本庄努」を探し出し、愛沢家にどうにかしてぶつけて自分がフィードアウトすることだった。その時に「東堂姫乃」の心のケアもお願いできれば何も言う事はないだろう。麗奈からのお願いも同時に達成出来るかもしれない。
琴音や若菜という美女、美少女に好きだと告げられ「同棲」や「結婚」などと言う素敵ワードが出てきたが増田には全然嬉しくない。何度も言う通り、このゲーム『ルサイヤの雫』に存在しないはずの自分が関わることにより世界線が変わりすぎることを危惧してだ。
『ルサイヤの雫』のキャラクターである愛沢親子や東堂親子と既に面識があるから今更だろ、と言う意見は言わない約束で。
これ以上に厄介な状況にならないためにも自分の
「さて、お昼ご飯?夜ご飯?を既に食べたからお腹は空いていないが寝る前に何かお腹に入れとくか。腹が減ったら元も子もないからな」
増田はそう呟くと今いる場所から近いコンビニに寄ることにした。そこで少し他の食材も買おうと思っている。手土産に持っていったプリンを渡すとお昼の食材で余ったごぼうが何本か入った袋を交換のように貰ったが、炊き込みご飯にでもして食べようかと思っていた。
そんな事を考えながら増田が歩いていると前方から声が聴こえてきた。ただの声だったら増田も何も思わないが言い合いのように、それも怒声が聴こえてくる。
小心者の増田は言い合い、怒声が聴こえてきた時点でその場から離れたかったが、そうも言っていられなかった。それは言い合いをしている声が男性の者と女性の者が混じっているからだ。それも明らかに男性側が女性に言い寄っている感じがした。
「──あぁ、もう! 気付いていて助けないのは俺のポリシーに反するから、助けに行くか。俺がいらなさそうならそのまま素通りすれば良いし……」
増田は頭を掻くと向かう。
◇
増田は出来るだけ早くその場に行けるようにごぼうの袋を持ちながら走り、向かった。
現場に着くと案の定一人の女性を男達三人が囲んでいた。女性の方も「警察を呼びますよ?」と携帯端末を見せながら言っているが、男性達は特に臆していないのか馬鹿笑いしていた。
男性達に囲まれていて女性の状態も服装もわからないがまずい状況なのは見てわかる。
「チッ」
そんな現場を見た増田は舌打ちを打つ。周りには自分以外に人は居ないし、相手は三人だ。こちらはただの生身。それに増田は前世?と合わせて輩と喧嘩などした記憶も……ないはず。そんな状態で助けに行っても返って邪魔になってしまうと思った。
助けたいが、俺の身には余るなぁ。これが主人公の「本庄努」ならこんな状況は自慢の"合気道"で軽く終わらせる。と思ってしまうが無いものねだりをしていても意味が無い。来る時に誰か呼んどけば良かったわ。
増田が後悔しながらもどうしようか今まさに考えていると「きゃっ、椎名お姉ちゃん怖いよ……」という幼女の声が聞こえてきた。
「──ッ!!」
増田の「幼女イアー」には確かに幼女の声を感知し、捉えた。
増田は輩に囲まれている女性の近くを遠くからよく見てみると……メイド服の様な黒と白を基調にした服を着ている薄緑色の髪色をサイドテールにしている女性に銀髪を肩まで伸ばした可愛らしい7歳ぐらいの外見の幼女が震える様にしながら足に抱きついていた。
幼女が居なければ「何故にメイド服? コスプレかね? 髪色は流石、ゲーム!!」と思う増田だが今は幼女に夢中……と間違い、幼女に注目する。
そんな時──
「この子、震えているぜ!! へへっ! 可愛らしいなぁ!!!」
「幼女様様ダゼェ!!! おじさんと大人のおままごとでもしようゼェ!?」
「あぁ、幼女に踏まれたい………!!」
輩達の欲望塗れな声が聞こえてきた。聞こえてきたと共に増田のある一部が「ピキリ」と鳴ったように感じた。
そんな感触を味わうと共に増田は持っていたごぼうの袋からおもむろに二本のごぼうを取り出すと袋を地面に置き──構える。
「──ふぅーーーーー。奴らはやっちゃあいけない事をやっている。女性を襲うのは勿論、成長途中のそれも発達途中の幼女までをも襲うだと……クズどもが」
増田はそう言うと一呼吸入れ、人が変わったように雰囲気を変える。そのまま助走を付け、女性達を救うために一人単身で向かう。
女性や幼女に夢中なのか増田が近くに近付いているのにも関わらず未だにバカ笑いを浮かべている
そんな男共に増田は天誅を下す。
「──それに幼女に踏まれたい、だと? そんなの俺もだわァッ!!!!?!!?」
増田は叫ぶと持っていたごぼうを一閃する。
『アヒンッ!!?』
悲鳴を上げる男二人はそのまま倒れ伏す。
増田は持っていたごぼうを一閃させたが、その当てた箇所は男の急所である股間だった。
増田は倒れ伏す男達には目もくれず自分の行動が何処かしっくりくるように驚いた様な表情で自身の手先を見つめる。
残された
助けられたメイド服を着た女性と幼女も一瞬の出来事だったため、目を丸くする。
そんな中、男達の股間を叩いたことに違和感を感じたが後回しにして油断をすることなく残りの男に
「──「YesロリータNOタッチ」……これは古代から決められた様式美だ。そんな禁忌を破り幼女に手を出そうとする輩は老若男女問わず、俺の敵だ。だからお前の
増田は
「なんだテメェは!!……い、いや、ま、まさか、お前は……!?」
増田の行動、話し方を見て男は何かを感じたのか後ろに後退する。だが、そこは既にコンクリートの壁で逃げ場など無かった。
「お、お前は……っ!! 【息子狩り】の純一!?」
「誰だそれェェッ!!!!」
「アフッェ!?」
全く記憶にない名を告げられた増田はキレると共に男の急所を狩る。
増田が
「──悪は去った。……っぅ」
ただ、そんなことを言ったはいいが、今になって自分の行動、言動が恥ずかしくなったのか二本の武器、改めてごぼうを右腕で抱えると残った片手で顔を覆う。直ぐ様その場を離れようとする。
そんな増田の足元に幼女がぶつかってくる。
「むぅ!!」
「──ッ!?」
半径1メートル以内に幼女がッァ!!?
全く違うことに驚く
まぁ、馬鹿な事は考えてないで見覚えのない可愛らしい幼女にある意味抱きつかれた増田は感激のあまり動けなくなる。
幼女の行動を見たメイド服姿の女性はお付きの人なのかコスプレの人なのかはわからないが増田達を見て混乱しているのか何も言えない。増田自身も今の状況についていけず同じく、何も言えない。
「──助けてくれた。また、助けてくれた! ありがとう!……純一!!」
誰もが何も言えない中、増田に抱きついた?幼女が始めて声を発する。その言葉が意外すぎて。
「へ?」
「え?」
増田とメイド服の女性は声を揃えて驚く。
幼女は増田の顔を見上げながらニコニコとしていた。
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