第340話 背びれと尾びれがプラスされた
「お洒落?」
「まぁ、アイツも人間だから人並みなことをすんじゃないか?」
珍獣扱いと思われる発言を聞いて、井小呂と関は互いに顔を見合わせる。
「だから
「見間違えとか」
彼女たちにとって
「迎えに行ったんですから見間違いじゃないし幻覚でもないです! 本当にいつもと違っていたんですから! ああんこっそり写真撮ればよかったあああ! あれ絶対デートですよ! デート!」
「なるほど、それならつじつまが合う! だから一向に脈なしだったのか!」
我が意を得たり。
天からの啓示を得たかのように
「え? なんですか?」
「思い当たる節があるんですか?」
「実はあいつに彼氏がいるってことだ!」
胸を張って言い切った。
「え」
「まさか」
「ほらあ。
「一体誰! 知りたい! 見たい!」
「隠すってことは内密の関係? もしかして禁断の愛? 既婚者とか歳の差とか同性愛、もしかして荒魂とか!?」
「いや流石に危ない橋は渡らないってば。きっと周囲から嫉妬がくるような相手よ」
「ええええ! 嫉妬される相手って気になる!」
「あーん。聞きたいけど本人に聞けないのがもどかしいーっ!」
「わかるー! 病院送りになりたくないものねー!」
「わかるーわかるー!」
「周囲でそれとなくいい感じの男っていたかなぁ?」
「いやバレないように会ってるでしょ。だから男の影すらなかったんだから」
「相手も相当慎重よね。ここはやっぱり禁断の相手では」
「もうドラマの見過ぎだってば!」
井小呂と関と
「並大抵じゃ太刀打ちできない
「え! やり手ってそっち!? そっちなの!?」
「あっち方面から落とされて!? きゃーっ! 強引な男と関係とかありえそう!」
「そこからの恋に発展! いやいや面白いけど想像できないしあり得ないって」
彼女たちは様々な憶測を語るが、もちろん不正解である。
お洒落着だったのは同人誌即売会に行くためであり、カバンを大事に持っていたのはBL同人誌が紛失しないように気をつけただけである。
しかしその事実を彼女たちが知ることはない。
「あら
糸崎が声をかける。
「聞いてくれよユッキー」
「聞くわよ」
糸崎が
「いいから早く言いなさい」
糸崎がジト目で促すと、
「
糸崎は動きを止め、瞬きを一回した後、
「まじかあああああああああ!?」
驚きの声がロッカー室に響き渡った。
「ちょ!? なにそれ詳しく教えなさいよ! 教えなさいよ!」
糸崎が
「いやぁ。実さぁー」
こうして女性職員を中心に『
普段己のことを話さない人物の、初めてのゴシップに誰もが興味津々であった。
尚、本人にバレると速やかに抹殺されるという噂も流れたため、取り扱いには細心の注意が払われた。
その結果、
次回から六章になります。今度こそ『私』のお話がメインとなりますので、よろしければ引き続きお読みくださいませ。
〼五章に登場した新キャラ一覧〼
https://kakuyomu.jp/users/akitokei/news/16818792439658616642
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます