第316話 食べられません
グミを視た瞬間、背筋がゾッとして生理的嫌悪感が沸き上がる。
これは『超危険』だと、
(こんな……放射能汚染物質のようなモノを、
ぐるぐるぐると思考が回転して、ゲンムトウビルに入る前に巻き戻った。
唐突に『私』の中から
「……こんなモノがあの場で配られていただと?」
警戒を孕む唸り声を聞いた
瑠璃は殺意を含んだどす黒い威圧を放っていた。
「ひっ!」と加無木が悲鳴を上げてゆっくりと後ずさり。
「い、
「おい
瑠璃が
透明な小袋に『ムカデの脚をもち黒いブツブツ肌の大きなナメクジ』が密封されて蠢いている。明らかに人体に寄生して内部から食べる虫のような形であった。グミに擬態してまんまと人体に入り込んだのだろうと推測する。
「ハッ、ご丁寧に小袋が封印の役割を担っているか。これだけなら瘴気はほぼ外にでねぇや。ハッ、数十秒でも動いて損した」
瑠璃は鼻で笑って自嘲した。
「よく聞け
「いぶ、いぶきど、さん、元、元にもどっ」
「これはどいつがばら撒いてた?」
「
「そうか。そいつは
「
「そうだ」
「な、何故ですか?」
「いないからな」
瑠璃の口調はキッパリとしていたが、どこか哀愁のようなものが加わっていた。
「部長は、帰ってきますからその時に、話しをしてください。
瑠璃が「ハッ」と鼻で嘲笑い、怒りの威圧を放った。
「ひゅ」
怒りが籠る威圧はいつものことであるが、
「御免だ」
「し、しかし……」
「いないヤツが言えるわけない」
「あ、あの、ぶ、部長をいないヤツって言ったらマズイのでは? その、すぐに伝えたいなら通話とか、メールとかありますから……」
「おい! 何があった!?」
瑠璃は周囲を見渡してから、肩をすくめると、満足そうに目を細めた。
「まぁどうでもいいか。どうせこれは
口の中で甘露のように「なぁ私の神よ」と言葉を溶かしながら、
そしておもむろに、彼女の頭を乱暴に、叩くように撫でた。
「よし。気が済んだ。じゃあな」
「……え!?」
「息吹戸さん……?」
恐る恐る呼びかけると、
「
「え?」
「怒らないから正直に言いなさい。食べた?」
話しが元に戻った。
それに気づいた
「食べた?」
「
「そう。なら一安心ね」
(記憶が混濁した。天の啓示がボロっと口から出たような。無理すると崩れちゃうのに……いやそれは何もできないから後で良いか。最優先はコレ)
持っているグミを凝視する。今すぐ消滅させたいが証拠なのでぐっとこらえる。
(グミの解析をしてもらわないと。これは放置できないモノだからすぐに対策を練る必要がある。おそらく一部でコレが広まっている。ライブ観客以外に口にしている人もいるはず。回収とか身体検査とか色々やらないと。でもまずは解析……誰に頼めばいいのか)
パッと
速足で遠ざかるのを見た加無木が、「あ」と引き留めるように声を上げた。
「け、検査が先で……すが、どこへ」
おっかなびっくりで声が裏返っているが、どうしても己の任務を優先させたいようだ。
「一課のオフィス。緊急の用事ができたから検査は後回し」
「お、おつかれさまです!」
ファミレス席に見慣れない女性が座っている。どこにでも居るようなありふれた一般女性の容姿である。
「誰?」
「に、二課の
「そっか。
他に頼れそうな人物はいないだろうかと考えて……すぐに
(そうだ! こーいうときは開発部術式課だ!
我ながら良い案だと自画自賛していると、
「
「え? えええ!? わ!」
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