第五話 仲間集め初日
人間界ではバルトが天空の塔攻略のため仲間を集めようと奮闘していた。
「さすがに俺が作ったとはいえ、あの数のモンスターを相手にしながら登り切るのは厳しい。それにあいつは迷宮の神と言っていたから、俺が新しく塔の中に何かを追加するのはおそらく不可能だろう」
バルトは近くの街に行くまでの間、どんな仲間を見つけるのがいいか考えていた。
「俺も魔法を使うためにそれなりに体力が必要だから、基礎体力は普通の人間よりは上だけど……。それだけじゃ天空の塔をモンスターを倒しながら、上がり切るのは難しいんだよな」
塔の長さを考えると、一人で行くのは厳しいと感じていた。
「魔法の援護は俺が出来るから、前で戦ってくれる奴が必要だな。後はダンジョン攻略となると、回復系の魔法が使える奴がいないと話にならない。とりあえず二人は確保しないと、天界には登れないな」
「回復魔法が使えるのはやっぱり女の子の方がいいな。こう何て言うか、かわいらしい見た目をしていて、杖を持った黒髪ショートの妹系ならドンピシャなんだよな」
バルトは杖を持った可愛らしい女性を想像する。
「前衛で戦ってくれる子は金髪ロングでちょっとツンデレな感じで、お姉さん系だとバランスが取れる。うんそうだなこれが理想だ」
バルトは自分の理想的な仲間を、というより理想的な女性を想像していた。
そんなことを想像していたら天空の塔の北にあるイサムという街に来た。
このイサムという街は割と大きな街のようで、商人や冒険家が多く滞在している。
この街なら装備もそろえることが出来るし、仲間も見つかることだろう。
バルトは期待に胸を膨らませ街の門をくぐった。
門の先は見渡す限り活気あふれる街並みが広がっていた。
「おぉすごいな。天空の塔を見つける前にも一度来ていたが、あの時以上の活気があふれている。これなら仲間もすぐに見つけられるはずだ。とりあえず冒険者になれば、仲間集めもはかどるだろう。この街の冒険者ギルドに行ってみるか」
バルトは果物や肉料理を売っている店の前を通る。
おいしそうなにおいを嗅ぎながら街の中心地にある冒険者ギルドへと足を運んだ。
バン!
バルトは冒険者ギルドの扉を勢いよく開けた。
ギルドの中にいた人間はバルトの頬鵜を一斉に見て静まり返った。
バルトはコツコツと足音を立てながらギルドの受付に向かった。
「冒険者になりたいんだがどうすればいい。いまいち冒険者のことが分かっていないから教えてくれないか?」
バルトは受付にいた男に聞いた。
「あぁいいぜ。兄ちゃんみたいに冒険者になりたいってやつは多いからな」
受付の男は気前よく答えてくれた。
この世界では冒険家という職業がある。
冒険者は各地を旅しモンスターやダンジョンを攻略して、その報酬として金や食料を得る。
後は冒険者として名を上げてから王宮の騎士団勤めになって、安定した収入を得ようとする考えもある。
自由気ままに生きたいなら冒険者はうってつけの職業だ。
「とまぁこんな感じだ。兄ちゃんがどんなことをしたいかによって、どんな依頼を受けるかとかが変わってくる」
「俺は金は要らない。とりあえず仲間を集めたいんだが、そういう時はどうすればいい」
「仲間を集めたい?それなら入口の横にある掲示板にどんな仲間が欲しいか書けば来てくれるかもしれないが、なんの実績もないやつのところには、誰も来てくれないと思うぞ」
男はバルトのことを変わり者だと思い始めてきたようだった。
「そうか……実績というのは故郷で難攻不落の城を作ったことや、この街の南にある天空の塔を作ったことではだめか?」
バルトは仲間集めの用紙を書きながら受付の男に聞いた。
「おいおい兄ちゃんさすがにそんな嘘はダメだぜ。そんなのが作れるのは建築士のバルトぐらいだ。ちなみに言うと、この国の王宮もバルトが作ったんだぜ。建築士だから顔はみんな知らねえけど、とにかくすごいやつだってのは全世界に知れ渡ってる。あの天空の塔だって奴が数年で作っちまった。けど昨日神の怒りに触れたとかで、あの塔はダンジョン化されちまったみたいだけどな」
男は呆れたようにバルトを見る。
「あぁ知ってる。迷宮の神ラビスが天界に人間を入れないために、あの塔をダンジョン化した。俺は天界に上るためにあの塔を作ったのに、外に放り出されたから、どんな手を使ってでも天界に行きたい。そのために冒険者の仲間が欲しいんだ」
バルトは自分が作ったとほんとのことを言ったが、その場にいた人は誰も信じなかった。
「まぁ書いてもいいけどあとで痛い目見るのは兄ちゃんだからな」
と男はあきれて言った。
バルトは仲間集めの用紙を書き終わると掲示板にすぐに張った。
「あぁそうだ。仲間が集まるまでしばらくこの街に滞在したいのだが、いい宿は知らないか?」
バルトは受付の男に聞いた。
「ならここの二階を使ってくれて構わない。ここはギルド兼宿屋になっているからな。でも兄ちゃん仲間集めしたいなら、少し依頼を受けた方がいいぞ。さすがにあの噓を信じる奴はいないぜ」
男は親切心からバルトのことを心配していた。
「そうか…ありがとう少し考えておく。今日は休むから、仲間になりたいってやつがいたら俺を呼んでくれ」
そう言ってバルトは二階に上がり部屋で休んだ。
その日はバルトのところに誰も来なかった。
天界に届く塔を造ったけど迷宮の神とやらにダンジョン化された!?そんなの認めねぇ!パーティー組んで攻略してやる! 神木駿 @kamikishun05
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