第497話 新規キャラクター設定
メニュー画面。
玉座に座ってから意識することで、視界いっぱいに広がるゲームでおなじみのこの画面は、ゲーム時代の事が全て出来るかというとそういう訳ではない。
出来るのは、キャラクター新規作成、キャラクター強化……以上の二点のみだ。
ゲームだったら部隊管理とか施設の作成とか拠点管理とかなんやかんやできたんだけど、今となってはその辺は直接指示を出してやることだからね。
因みに各拠点での特産品設定もここでやっていたんだよね……これも今となっては国営農場で普通に種まきとかしてるけど……なんというか、リアルに出来ることは全部ここでは省かれたって感じかな。
フィオのやった儀式って物凄い気が利いているというか、気持ち悪いくらいにユーザビリティが意識されていると言うか……いや、便利だから文句はないんだけどね?
俺は目の前に広がるメニュー画面を操作しつつそんなことを考える。
さてさて、先程リーンフェリアに言った通り、今日は別に新規キャラを呼び出したりするわけではない。
フィオを呼び出すにあたり、見落としている様な項目やアビリティが無いかを確認しに来たのだ。
とりあえず、確認作業なので基本的な所からおさらいしておこう。
新規キャラを決める時にまず必要なのは……名前、性別、容姿だ。
容姿はもともとゲーム内に用意されていた画像を使う方法と外部から容姿データを読み込んだり、なんだったら直接キャンバスに書き込んだりも出来る。
因みに吾輩……絵心とかいうものは幼稚園辺りに置き忘れてきたので、ついぞ自作したことはありもうさん。
この世界では……俺が思い描いた容姿を反映させることが出来るので、フィオの事をしっかりと観察しておく必要があるけど……かなりふわっとした想像でも、見えていない部分までしっかり作り込まれるといる点が非常に素晴らしいと言える。
なので、フィオに裸になれとかそういうアレは必要ない。
というか、そもそもリーンフェリア達だって元々バストアップの画像だったのに、こちらではしっかりとつま先から頭のてっぺんまでしっかり現実のものとして生み出されているので、ファジーな感じで何も問題ない。
その辺りはケイン達でしっかりと実験させて貰ったからね。
というか、そうじゃなかったら覇王が死ぬ……色んな意味で。
因みに性別以外は未入力だとランダム生成されるのは、ゲームでもこちらでも同じ仕様なのは確認済みだ。
さて、次に設定するのはキャラクターの能力値だ。
統率、指揮、武力、知略。
戦争パート主体のSLGなのでこの四つしか設定できないのだが、シンプルな割に結構やり込めるところが俺の元となった人物にはクリティカルヒットしたようだ。
統率と指揮は戦争時の軍の攻撃力、防御力、移動速度に反映され、武力は武将同士の一騎打ち、知略は魔法や計略の威力や効果にそれぞれ反映される。
初期値はオール50で、所謂信勝君くらいの働きが出来るようになるのだが……うちのメイドの子達は元々オール50だったんだけど、何か気付いたら物凄く数値上がってる。
本当にあの子達はいつ訓練しているのだろうか?
城の管理で物凄く忙しい筈なのに……エインヘリア七不思議を作るとしたら四つ目くらいに入ると思う。
閑話休題。
因みにRPGパートでは武力が物理系のステータス、知略が魔法系のステータスに反映されるので、どちらのパートでよく使うかによって能力値を調整するのも大事な事だ。
まぁ、何十週もやれば全部の能力値を最大値近くまで上げる事が出来るし、うちの戦闘部隊の子達は似たり寄ったりな能力値になっているけどね。
そんな能力値の次に決めるのは兵種で、五種類の中から一つを選ぶことになる。
剣兵、槍兵、斧兵、弓兵、魔法兵。
ここで選んだものが戦争パート時に率いる召喚兵の部隊となる。
これに関しては特に語ることはない。
敢えて言うなら、後で決める適正やアビリティに合った兵種を選んでおくくらいだ。
次に選ぶのは適正。
剣、槍、斧、弓、そして魔法の各属性の適性をSからFの七段階から設定することになる。
魔法は、火、水、土、風、雷、氷、光、闇、聖、幻の十種類。
ゲーム時代、俺が分かりやすいように髪の毛の色と目の色で得意属性を二種類を判別できるようにしておいたのは、キャラを作りまくると段々メインで使う子達以外の得意分野が分からなくなってくるからだ。
特に戦争パートはリアルタイムで進んでいくため、ぱっと見で指示を出せないと結構危なかったりするんだよね。
各適正の初期値はオールFで、メイドの子達は得意魔法属性以外はFに固定してある……因みにこれも訓練で適性を上げられるので……まぁ、何も言うまい。
適性を上げることで武器に応じたスキルと各属性の魔法を覚えることが出来るが、武器スキルも魔法もそこまで数は多くない。
近接武器は単体攻撃、範囲攻撃、防御、遠距離攻撃、武器種専用の五種類。
弓は遠距離攻撃の代わりに近距離攻撃。
魔法は、単体、壁、範囲、対軍、属性専用……聖属性には回復系、幻属性には強化弱体魔法があるくらいだ。
総数は多いけど、一つの武器で使える技が五個しかないのは、RPGとしてはかなり少ないだろう。
ソードアンドレギオンズというゲームは、どちらかというと戦争パートがメインのゲームなのでRPGパートは結構ざっくりしている。
といっても邪神とか魔王、後は各国のトップとの戦いは戦争パートで倒してからのRPGパートの個人戦って流れが基本だったので、ざっくりとは言ってもしっかり鍛えておかないと勝てないものになっていた。
ここまでの設定項目は基本的にキャラクターの基本的な能力値に関する物で、この世界においてはフィジカル的な所に関係するものが殆どだろう。
まぁ、知略は賢さ的なものに繋がっているのだろうけど……覇王はともかく、キリクやイルミット、それからルートリンデといった文官系の子達やカミラやマリーと言った魔法使い系の子達以外はあまり関係ないかな?
少なくとも覇王の知略は85とそこそこ良い数字だけど、三桁同士の掛け算がぱっとできたりはしない……。
まぁ、他の皆もそこそこ知略の数値は上がってるけどね。
ゲームだと、代官に就任させた時に知略が高い方が魔石や特産品のボーナスが多いのだ。
この世界ではボーナスは貰えないし、そもそも代官は現地の方に任せているので関係ないけど。
さて、次はアビリティなんだけど……ここが一番それぞれの個性が出る部分になるだろう。
アビリティにはアクティブとパッシブの二種類がある。
アクティブとは『鷹の目』の様に使用して初めて効果を発揮する物。
パッシブとは『魔力収集装置の設置』の様に所持しているだけで効果が発揮される物だ。
このアビリティなのだが、種類がとにかく多い。
恐らく、レギオンズのエディットキャラではない固有キャラ達の個性を能力として落とし込む為に膨大な量のアビリティを用意したのだろう。
なんだったら、名前が違うだけで同じ効果のもの結構あるしね。
特に能力アップ系は名前違いの同じ効果がわんさかあるんだけど、これに関してはゲーム時代と違いこの世界では本当に違いがあったりするので注意が必要だ。
例えば『腕力強化』と『初級武術』。
ゲーム的にはどちらも武力をプラス1するだけの効果なんだけど、同じ武力の二人がそれぞれのアビリティを持っていた場合、純粋な腕力勝負だと『腕力強化』を持っている方が絶対に勝つのだ。
アビリティその物が現実となったことで、アビリティの名前自体に意味が生まれたという事だ。
これによって、かなり慎重にアビリティを選ぶ必要が出てしまった。
何故ならゲーム的にはカス効果だったアビリティが、この世界においては無茶苦茶有能だったり、ゲーム的には神効果だったものが、危なすぎて使えない!みたいなことになっているからだ。
アビリティに関しては、大事なのはゲーム的な効果よりもアビリティその物ということだ。
幸いというか、俺の元となった奴は設定を付けるのが結構好きなタイプだったこともあり、うちの子達が持っているアビリティはそのキャラクターにあった物が殆どだった。
これに関しては本当によくやったと言ってやりたい……危なそうなアビリティで有用なのって結構あるからね。
『血に飢える獣』ってアビリティとか、武力を20あげて統率と指揮を10下げるとかね……RPG用や一騎打ち用のキャラに覚えさせるには結構有能なアビリティだけど、この世界でそんなもん覚えてたら……下手したら殺人鬼とかになりかねん。
フィオが欲しがっていたのは魔法系のアビリティをいくつかと開発、研究関係のアビリティってことだったけど、もしかしたら他にもフィオの特性に近い物があるかも知れない。
今日俺がここでチェックすることで、次に会った時に必要な物があれば言ってくるだろう。
実験で呼んだ子達やイズミやルートリンデのキャラ設定をした時にアビリティはしっかりチェックしてあるけど、数が膨大だから見落としもあるだろうしね。
汎用的な奴にくらべ固有キャラ用のアビリティは、特に変なのが多いから注意が必要だ。
先程の『血に飢える獣』もそうだし……シュヴァルツがこの前欲しがった『邪眼』もそうだ。
アビリティを見ていてふと思ったんだけど……覇王……というか主人公専用の鷹シリーズ……俺自身が本当に猛禽類な見た目にならなくて良かったな。
文字通り反映されてたら、かなり切ない感じになっていただろう、儀式さんマジ良い仕事してくれてますわ。
そんな感じでアビリティを一通りチェックしていったんだけど……これ結構時間かかるわ。
いや、ざっと見るだけならそれほどじゃないんだろうけど、アビリティ名の意味も考えながら見ていくとめっちゃ時間かかる。
例えば……これ『臥薪嘗胆』。
何これ……どゆこと?がまきなめたん?あ、がしんしょうたんか。
んで意味は?
ゲーム的な効果は……敵の攻撃を受けると攻撃力アップ。
……殴られて嬉しいのか?それともムカついたのか?
とにかくまぁこんな感じで、なんか結構時間がかかるのだ。
とりあえず、意味が分からない物は危険だしスルーすることに決めて、なんとか全部のアビリティをチェックした。
後は今度フィオに聞けばよいだろう。
残る設定項目は……役職と称号だな。
役職はアランドールの大将軍とかリーンフェリアの近衛騎士長って奴で、これは既に任命している子達がいるので設定することは出来ない。
もし設定したい場合は、先に現在役職持ちの子を解任しないといけないけど、まぁあり得ないよね。
ゲーム時代であれば気にせず気分で代えられたけど、今となっては絶対にありえないと言える。
因みに役職にもアビリティと似たような効果はあるけど、個人への効果というよりも国全体へ効果を及ぼす物ばかりだ。
アランドールの大将軍ならその能力に応じてエインヘリア全体の召喚兵の能力値が上がるとか、そんな感じ。
称号も似たような感じだけど、一部の特殊な……ジョウセン達の武聖系みたいに各一人ずつにしか付けられない称号の他に、複数人に同じ称号を付けることが出来る奴もある。
まぁ、オンリーワンの称号に比べると効果がしょぼかったりするけどね。
役職と違うのは称号は個人に効果があるものが殆どだね。
分かりやすい奴だと武力が上昇する『剣豪』とか、知略が上がる『策略家』とかだ。
中には相手を弱体化させるものとかもある……『二枚舌』とか。
因みに俺の『覇王』は強化と弱体両方してくれたりする。
流石主人公専用だね……まぁどちらも効果量は気持ち程度だけど。
というか、この称号になった時に専用のアビリティを覚えるっていうのが正しいか?
『覇王』自体は統率と指揮と武力をちょっと上げてくれる効果で、その称号になった時に強制的に覚えるアビリティが『覇王の威圧』だ。
アクティブじゃなくってパッシブのアビリティだから、全く意識したこと無かったね……効果もRPGパートでちょこっと敵の能力下げる程度だったしね。
現実となったことで、アビリティが何かしら効果を発揮するってことだけど……これに関しては、別に俺……なんかオーラ的な物出たりしないしな。
戦闘態勢に入らないと駄目なのかな?
もしかしたらドラゴンと戦った時とか、なんか威圧感みたいなの出してたんだろうか?
殺気とかよりは威圧感の方が、一般人な俺にも分かりやすいけど……能力下げる程の威圧感って、圧迫面接ってレベルじゃなさそうだね。
まぁ、とりあえずフィオの称号は……『塩』とか『ぽんこつ』とかにしてやれば良いだろう。
『魔王』って称号ないしね。
いや、『塩』も『ぽんこつ』もないけど……どうでもいいけど、なんかラーメン食べたくなってきたな。
そんなことを考えつつ、ゲーム的には特に意味が無く、現実となった今では一番意味のあるキャラクター設定のフリー入力欄をどういう風に埋めるか、俺は頭を悩ませた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます