第452話 論功行賞・中
突如訪れた覇王の尊厳に関わる危機……俺は実感したね。
覇王を倒す者がいるとすれば……それはうちの子達しかないと。
とりあえず、アランドールと風呂に入った経験が無かったら覇王的に色々マズかったと思う。
ありがとう、アランドール!
論功行賞やってるのに、新たに領土になった三国の治安維持で忙しくてここにいないけど!
でも今度ご褒美はちゃんとあげるからね!
まぁ、ご褒美はさて置き……論功行賞って、この子はこんなに頑張ったんだよってのを皆に知らしめるって意味もあるからな。
アランドールは大きい戦いの時は俺と別働してもらうことが多いし、戦功で言うなら間違いなくトップクラスなんだけど……高水準で色々出来ちゃう分、どうも細々と仕事を振っちゃうというか頼ってしまうんだよね。
後はあれだね、外に出した時にアランドールは見た目で侮られることがないからな。
領土になったばかりの国……特に戦争の結果エインヘリアに組み込まれた国だと、まだまだ反抗的な奴が多かったりするからね。
アランドールの歴戦の将って見た目と雰囲気は良い抑止力になるし、不安を覚えている人達にとっては非常に安心感と頼りがいのある感じだろう。
だからこそ不安定な場所に派遣してしまいがちなんだよね。
アランドールはお酒とか好きだけど……流石に甘口のお酒ってレギオンズにはなかったし……ヒューイとかに聞いてみるか。
そういう、なんか娯楽的な事ってアイツ詳しいだろうし。
しっかりとリサーチして、アランドールを労ってあげないと……。
そんなことを考えつつ、俺は次の子の名を呼ぶ。
「サリア。槍聖として個人の武働きだけでなく総大将として軍を指揮し、エーディン王国を陥落せしめた。その働き実に見事であった。なんなりと望みを言うが良い」
「では、今度フェルズ様とお出かけしたいであります!」
「ふむ?そんなことで良いのか?」
「はい!是非お願いするであります!」
物凄い晴れやかな笑顔で言うサリアに俺は頷いて見せる。
「分かった。ならばサリアの好きなタイミング……いや、前日までに声をかけてくれ」
「了解したであります!」
元気よく返事をしたサリア。
しかしお出かけ……何かしたい事があるのだろうか?
サリアは……っていうか、うちの子達はプライベートでどんな感じなのか全く予想がつかない。
そこまで設定していないからってのもあるけど、基本的に皆キャラ設定には従っているけど凄まじく真面目な仕事人間って感じだからなぁ。
まぁ、サリアの事を知る良い機会だと思えば良いか。
そんなことを考えつつ、俺は次の子……いや次の子達の名を呼ぶ。
「ジョウセン、剣聖にして我が剣よ。今まで多くの戦いで大事な局面を任せてきたが、その全てに完璧な形で応えてくれたな。また今回はサリアと共にエーディン王国を攻め、これを迅速に陥落。実に見事な働きだ」
「殿の剣として戦場に立つ事こそ拙者の誉。これからも存分に拙者で敵を切り払って下され」
ジョウセンは誇らしげな笑みを浮かべつつも、神妙な様子で言う。
その凛とした静謐な佇まいは、剣聖と呼ぶにふさわしいものと言える。
今までであればここで褒美の話になるのだけど、俺は続けてもう一人の名前を呼んだ。
「そして、リーンフェリア。俺が最も信頼する盾。いつ如何なる時であっても俺を守ってくれるリーンフェリアが居てくれるからこそ、俺は大手を振ってどのような場所にも向かうことが出来る。いつも感謝しているぞ」
「勿体なきお言葉……」
俺の言葉に、リーンフェリアは目を若干潤ませながら頭を下げる。
やはりリーンフェリアはうちの子達の中で一番涙もろいというか、感動しやすいよね。
さてさて、それはさて置き……ここからが今日のメインイベントだ。
「二人にも褒美として希望を聞きたいところだが……二人への褒美は、既に俺の方で勝手に決めさせてもらっている」
俺がそう口にすると、二人は神妙な顔で俺の前に膝をつき頭を垂れた。
他の皆と違って希望を言う必要が無いから、俺の言葉を聞き、全てを受け入れるということなのだろうけど……うん、別にサプライズ的な感じにしたいわけじゃないし、二人には立ち上がってもらうとするか。
「二人とも立って顔を上げると良い。折角の再会だ、お互い顔が良く見える方が良いだろう」
俺の言葉に従い顔を上げた二人だが、その顔は訝しげという程ではないけど揃って疑問符が飛んでいるように見える。
しかし、俺はその疑問を説く様な事はせず、段取りを進めてしまう。
「イルミット、頼む」
『畏まりました~』
俺は玉座の間の外にいるイルミットに『鷹の声』を使って合図を出す。
実はイルミットには、前もってサリアの褒美の話が始まったら謁見の間から出て、とある二人をここに呼んで欲しいと頼んでいた。
「皆、道を開けよ。リーンフェリアとジョウセンはそのままで良い」
詳しい事は何も言わずにただ道を開けるように言うと、謁見の間で整列していた居た皆が綺麗に左右に分かれ、入り口から玉座に通じる道を作る。
「二人とも扉の方を向け。来るぞ」
俺がそう口にすると同時に、玉座の間の扉がゆっくりと開かれ三人の人物が姿を見せる。
一人は言うまでもなくイルミット……俺が三人の姿を確認した瞬間、バタン!という音と共に、ジョウセンが崩れ落ちた。
扉の方に顔を向けていた何人かがその音に振り返り、ギョッとした表情を見せているが、誰も近寄りはしない。
いや、二人の後ろにいた俺からはジョウセンが崩れ落ちる姿が良く見えていたけど、本当に糸の切れた人形のような感じで崩れ落ちたぞ?
物凄く心配が募る倒れ方だけど……多分問題はない筈。
扉の向こうにいた三人の内、イルミットはジョウセンが倒れても普段通りの笑みを絶やすことはなかったが、その隣にいた二人は物凄くびっくりした顔をしていて……。
「兄様!?」
そのうちの一人が思わずといった感じで叫び声をあげた。
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