第373話 エインヘリアの中核



 エインヘリアにおける最高権力者……それは、敢えて言うまでもなく俺だ。


 自分でも何の冗談だと思わなくもないけど、中身はともかく外見は完全にエインヘリアの主、覇王フェルズなのだから仕方がない。


 そんな俺の下には役職持ちの子達がいる。


 参謀、キリク。


 言わずと知れたエインヘリアの頭脳。


 その智謀は未来を見て来たかの如く全ての者を置き去りにする。


 俺が望めば、それがどれだけ荒唐無稽なモノであったとしても、確実にその未来を手繰り寄せてくれることだろう。


 だからこそ、俺の言葉は非常に重い……たとえ間違った方針だったとしても、キリクはそれを必ず叶えてしまうのだから。


 内務大臣、イルミット。


 その穏やかな笑みからは想像も出来ぬ程の知略の持ち主。


 キリクと双璧を成すエインヘリアの頭脳にして、エインヘリアの内政責任者だ。


 しかし、一度許可さえ得られれば、その知略は他国すらも自在に操ることが出来る。


 キリクとイルミット……この二人がエインヘリアに忠誠を誓う限り、エインヘリアの未来は安泰と言えるが……エインヘリアのトップには物凄く不安があるよね。


 因みに、うちの子達の中でイルミットは一番アレが豊かだ。


 外務大臣、ウルル。


 役職名だけを普通に受け取れば、外交における責任者……ではあるが、我がエインヘリアにおいて外交とは、少々一般的なそれとは趣が異なるかもしれない。


 まぁ、ありとあらゆる手段を使って他国から良い話を持ち帰って来てくれたり、非協力的な要人と納得するまで言葉を交わし、心から協力してくれるようにしたりするあたり、非常に良い外交を行っているとも言える。


 ウルル自身は、どこかぼんやりしている様な雰囲気や喋り方をしているのだが、その優秀さを疑う者はエインヘリアには存在しない。


 非常にスレンダーで野生の獣のようなしなやかさを持っていると言えるが……何がというわけでもないけど、非常につつましやかとも言える。


 大将軍、アランドール。


 エインヘリアにおける軍事の責任者……のようで、実はそうでもないのが彼だ。


 うちの子達の中で一番御年輩な感じの見た目だが、年齢は当然皆と同じ、もうすぐ二歳なおじ様である。


 何故軍事の責任者でないのかというと……エインヘリアにおける軍事のトップは俺だからだ。


 といってもアランドールの指揮能力は俺以上だし、個人戦闘能力もトップクラス。


 ただ、俺が指揮を執るほうがうちの子達のやる気はあがるし、アランドール自身も俺に指揮を執って欲しいと言うから中々微妙な感じではある。


 なので、どちらかというと警察機構……各集落の治安維持部隊のトップという方が正しいかもしれない。


 しかし、一度戦場に立てば凄まじいまでの手腕で軍を率い、戦略も戦術も大将軍の地位に相応しいだけのものを見せつけてくれるのだ。


 近衛騎士長、リーンフェリア。


 近衛騎士のトップ……と見せかけて、エインヘリアに近衛騎士はリーンフェリアしかいないという不思議な役職だ。


 ゲーム時代に近衛騎士という役職が無かったせいでそんなことになってしまったのだろうが、本人はあまり気にしていないようなのでとりあえず問題は無さそうだ。


 しかし、近衛騎士という名の通り、王である俺にいかなる時でも侍り、護衛を完璧にしてくれている。


 リーンフェリアを抜いて俺に害をなせる奴は、恐らくこの世界には存在しないだろう。


 これ以上ない程頼れる存在だが……一つ気になることがある。


 彼女が戦うところは訓練も含めて何回も見ているのだが……何故か主な武器が盾なんだよね……。


 レギオンズには盾を武器とする戦闘方法はなかったんだけど……もしかしたらリーンフェリアが一番ゲーム時代の設定に囚われていないのかもしれない。


 因みに、それはもう素敵な物をお持ちでいらっしゃる。


 宮廷魔導士、カミラ。


 エインヘリアにおける最強の存在と言っても過言ではない魔法使い。


 相性的に弓聖であるシュヴァルツには距離次第では負ける事もあるが、それ以外の相手であれば……たとえ剣聖であるジョウセンであっても、カミラと戦えば十回に一回勝てれば良い方だろう。


 当然だが……忖度無しなら俺は手も足も出ない。


 因みにリーンフェリアの近衛騎士と同様、宮廷魔導士という職もカミラしかいない。


 非常に艶やかというか妖艶な姿をしているのだが……虚構であると言わざるを得ないのは……まぁ、設定した奴が悪いと思う。


 開発部長、オトノハ。


 アイテムを研究開発するエインヘリアの技術開発機関のトップ。


 エインヘリアの根幹である魔力収集装置の設置という、何よりも優先して行わなくてはならない仕事に従事している為、残念ながら研究開発の分野はあまり進んでいるとは言い難いのが現状だ。


 出来れば、オトノハ達にも技術開発に回って欲しいとは思っているんだけど……魔力収集装置の設置は疎かに出来ないし……数年は我慢しようと思う。


 開発部の子達であれば、きっと数年の遅れも無かったことになるくらい凄いものを開発してくれるに違いない。その時を楽しみにしておこう。


 彼らが解き放たれる時……それがエインヘリアの始まりと言っても良いだろう。


 エインヘリアの戦いはこれからだ!


 ……因みに、オトノハは男勝りというか姉御って感じの性格だが、中々素晴らしいもの持ちながらも非常に健康的な感じでいらっしゃいます。


 大司教、エイシャ。


 ぱっと見は穏やかな糸目幼女で、その役職も相まって神々しささえ感じられる子だが……結構過激派である。


 元々レギオンズというゲームには宗教的なイベントやシステムは存在しておらず、エイシャも大司教という立場ではあるけど説法や神の教えを説いたり、布教活動をしたりという事はしていない。


 基本的には医療の責任者として頑張ってもらっているが、一応神殿というか教会みたいなものはあるんだよね。


 そこを掃除したり、お祈りしたりしているみたいだけど……最近は医療系の責任者として、移動診療所を率いてあちこちを飛び回っている事の方が多いようだ。


 子供をこき使っているようで心苦しくはあるんだけど、何も仕事を与えない方が辛そうにしているし……何よりこの移動診療所の評判は物凄く良くって、一部ではエイシャの熱烈なファンとかいるとかいないとか……以前バークスが報告してきたこともあった。


 アッセン子爵とか、かなりのエイシャ信者だしな。


 信仰についてはあまりエイシャにも詳しく聞いたことはないけど……俺の事をフェルズ様って呼んでるってことは、信仰対象って俺なのだろうか?ちょっと怖くて聞けない。


 当然、幼女であるエイシャはまさにストンって感じだ。


 さて、ここまでがエインヘリアにおいて幹部や上層部と言われる役職持ちだ。


 他にも武聖と呼ばれる四人とか、バンガゴンガやレブラントみたいにこちらの世界の人物で役職を与えた人たちもいるけど、基本的にエインヘリアの行く末を決めるのはこの八人……そして俺の仕事だ。


 そして今日も、この九人による会議が始まり……エインヘリアの未来が決まる。


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