第247話 縛鎖



View of バルドラ=イーオ 『至天』第五席『縛鎖』


 

 私達に突撃の指示を出したリズバーン様が、敵陣の方へ先行して飛んで行かれ、続けて私達も予め決められている組み合わせで、それぞれ戦場へと飛び出す。


「リゼラさんがやられたって……普通にありえなくない?」


「……いや、リゼラ自身は戦闘力に長けているという訳ではない。遠距離戦なら勝ち筋はある」


 今回組むこととなった『至天』第十九席トゥサラ=ミーミリスの言葉に、私は走りながらかぶりを振って見せる。


 リゼラが抑えることなくまき散らす毒はとんでもない威力で、接近戦を仕掛ければ確実にリゼラの下に辿り着く前に死ぬだろうが、弓や魔法であれば毒の範囲外から攻撃することが出来る。


 毒の有効範囲にさえ気を付けていれば、『至天』の中でも一番制圧しやすいのが彼女だろう。


「いやいや、リゼラさん本人もそれを理解していたからこそ、リズバーン様直伝の防御魔法をひたすら練習していたでしょ?遠距離戦でリゼラさんを倒したって事は、リズバーン様の防御魔法を抜いたってことじゃん?」


「……む、確かにそれは凄いな」


 自分よりも一回り以上年下……成人したての彼女に簡単に諭されてしまったが、言われてみればその通りだ。リズバーン様の防御魔法を破る敵の遠距離攻撃は、油断出来るものではない。


「いや、トゥサラ。リズバーン先生の防御魔法を抜いたかどうかは分からないよ?リゼラさんは確かにリズバーン先生から防御魔法を教わっていたけど、発動速度も発動できる数もリズバーン先生程じゃなかったんだし、魔法の展開が間に合わなかっただけかもしれないじゃないか」


 トゥサラの言葉に異を唱えたのは、『至天』第二十席アラン=ソーラリル。


 現『至天』最年少の彼は、確かまだぎりぎり成人していないくらいだったと思うが、その冷静な意見は非常に参考になる。


「確かに、その可能性も考えられるな」


 私がアランの言葉に頷くと、反対側を走るトゥサラが大きなため息をつく。


「おじさんさぁ……年下の意見でも素直に頷けるのは良い事だと思うけど、何でもかんでもほいほい頷くのは違くない?」


「む?そんなつもりはなかったのだが……」


 呆れたように言うトゥサラの言葉に困惑してしまう。


 何かマズかっただろうか?二人の意見はそれぞれ正しさがあると思ったからこそ同意したのだが。


「トゥサラ、イーオさんに失礼だろ?すみません、イーオさん」


「ちょっとアラン!あんた何保護者面してんのよ!年下の癖に生意気よ!」


 走りながらも軽く頭を下げるようにアランが謝って来るが……私に謝っているというよりも、トゥサラにそれを見せつけているような雰囲気があるな。


 案の定というか……トゥサラはそんなアランに噛みついているし。


「二人とも、そこまでだ。仕事に差支えが無い事は理解しているが、私を挟んであまりやり合ってくれるな」


「すみません、イーオさん。少し初陣に緊張していたみたいで……」


 む……確かにこの二人は初陣、年長者の私が緊張を解きほぐしてやらなければいけなかった。


 その事に私が反省している間に、再びトゥサラがアランに噛みつく。


「いや、アンタみたいなクソガキが緊張とかする訳ないでしょ?もう少し信憑性のある言い訳しなさいよ」


「はぁ?どこぞの無礼な無神経の自称成人基準で考えないでくれますか?貴方が頭も身長も胸も成長が遅れているのは理解していますが、不愉快です」


「ぷっ……そうやって、体の事を馬鹿にしたら私が怒るとでも思ったの?そんなのだから、アンタはお子様なのよ!ま、あんたみたいなクソガキに、私の魅力が分かる筈もないから仕方ないけどね」


 あっという間に私を置き去りにして、二人の口喧嘩が加速する。


 リズバーン様は、この二人は仲が悪い訳ではないとおっしゃっていたが……本当にそうなのか?


 私にはこれ以上なくらいに険悪に見えるのだが……いや、リズバーン様が間違える筈もない。


 恐らくこれは……じゃれ合っているだけ……そう捉えるべきなのだろう。


「二人の仲が良い事はよく分かったが……」


「「節穴!!」」


 息がぴったりではないか……などとは言わない。


 ここでそんなことを言えば、余計話が面倒なことになる程度の事は私でも読める。


「……うむ、とりあえず少し真面目に話そう。我等の連携は単純故に強力だ。敵英雄が一人であれば確実に討ち取ることが出来る。異論はないな?」


 極めて真面目にそう告げると、二人は不満気ながらも頷く。


 我々『至天』は個人主義で、あまり他人と連携するという事は得意ではない。


 故に連携と言っても、お互いの戦闘方法の相性からリズバーン様がやりやすいと考えるものでチームを組んだだけだ。


 しかし、リズバーン様が言うには、トゥサラとアラン……年齢も席次も近いこの二人だけは、お互いの戦闘方法の相性もさることながら、息を合わせた戦いが可能ということだった。


 普段の二人の様子を見ると中々信じがたいが……恐らく喧嘩する程、というヤツなのだろう。


 そんな連携して戦う事の出来る二人と私が組んだのは、二人の戦闘方法の穴を埋めるのに私が最適だったからだ。


 二人は少し間合いを開けて戦う事を得意としているので、最前線で壁となる私とは相性が非常に良い。


 実際、二人と組んで行った連携訓練では、他のチーム相手にかなり有利に戦う事が出来たくらいだ。


「戦い方は訓練の時と変わらん。私が前に出て敵を止める。二人は私の陰から攻撃を仕掛け、相手を仕留めてくれ。やれそうな時は私諸共貫いて貰って構わん」


「その時は遠慮せずにやるけど……いくらおじさんでも、首とか頭は貫いたらダメだよね?」


「首であれば、槍で貫かれる程度平気かもしれんが……流石に完全に首が落ちたら……死ぬ、と思う」


「そこに自信が無いのは恐ろしいですね……」


 若干口元をひきつらせながらアランが言う。


「首が落ちた経験はないからな……流石に首を切り落とされたら生えてこない筈だ。手足くらいなら二、三日で生えて来るんだが」


 私がそう言うと、トゥサラが笑みを浮かべながら首を振る。


「いやー、おじさんは『至天』の中でもトップ。リカルド以上に化け物だと思うわー。化け物度合いだったら、間違いなくおじさんが第一席だよ。後、私の槍で首を貫いたら多分首とれちゃうと思うから、首は止めとくね」


「そうか、ならそうしてくれ。腕や足も後の戦いに響くから出来れば避けてほしいが、決定的なチャンスだったら飛ばしてくれて構わん」


「「了解」」


 私の言葉にトゥサラは軽い様子で、アランは真面目に返事をする。


 よし、相手の英雄がどんな者かは分からんが、同数以下なら後れを取ることはないだろう。


 私達の戦い方は実に単純だ。


 私が前に出て敵を引きつけ、二人が中距離から連携して攻撃をする……トゥサラは槍使い、アランは投輪……チャクラムと言ったか?とにかく切れ味の鋭い刃のついた輪を投げて戦う。


 魔法なのか特殊能力なのかは知らないが、投げた輪が標的に当たろうと当たるまいと手元に戻って行くのが不思議な武器だ。


 私の武器は普段通り金砕棒……不器用な私は、突起のついた鉄の棒を振り回すことくらいしか出来ないが、威力は十分なので問題はない。


 因みに私の二つ名である『縛鎖』。これは私の武器や戦い方とは一切関係ないものだ。


 私はどれだけの矢を浴びようと、槍で腹を貫かれようと、手足を剣で切り落とされようと、死ぬことが無く、しばらくしたら傷どころか失った手足さえ生えて来てしまう化け物だ。


 その姿を見た先帝陛下が、死ぬことを許されず、生に縛り付けられているようだとおっしゃられ……私の二つ名となった。


 確かにトゥサラの言う通り、『至天』の中で一番化け物なのは私だろう……まぁ、死なないだけで痛いものは痛いから、出来れば、貫かれたり斬られたりはしたくないが……この戦いはそうも言ってられないだろう。


「イーオさん、リズバーン先生が」


「む……何かあったのだろうか?」


 敵防衛軍の上に陣取っていたリズバーン様が、敵陣奥へと飛び去って行く。


 てっきり、敵兵を魔法で薙ぎ払って行くものだと思っていたのだが……。


「二人とも、リズバーン様も気になるけど……なんかいるわよ」


 我々の中で一番勘の鋭いトゥサラが、前方を睨みながら呟く。


 視線の先にはエインヘリア軍……いや、綺麗に並んだ兵の間から、小柄な体に見合わない馬鹿でかい斧を担いだ、赤髪の少女が姿を現した。


 その少女を見た私達は、誰が指示を出した訳でもなく足を止める。


 ……あれは強い。


 無造作にこちらに向かって歩みを進める少女からは、その見た目とは裏腹に凄まじい圧力を感じる。


 私は素早く周囲に視線を向けた後、口を開く。


「あの少女以外には一般兵しかいないように見えるが……二人ともどう見る?」


「僕もそう見えます」


「私も。でも、あの女……かなりやばいわね」


 他に英雄の姿は無し……しかし対峙した敵英雄はかなりの強者。事前にリズバーン様から上位者並みかそれ以上と聞いていなければ、この気配を感じてもどこか侮ってしまったかもしれないような風貌ではあるが。


 ここが戦場であることを知らないかのような足取りは、我々に対する警戒が一切見えないように感じられる。それどころか、若干眠そうにも見えるが……。


 そんな少女が徐に足を止めて口を開いた。


「『至天』第五席『ばくくさり』のバルドラ=イーオ?」


「……確かに私は『至天』の第五席バルドラ=イーオだが……二つ名は『ばくくさり』ではなく『ばくさ』だ」


「なるほど、興味深い」


 ……その少女の言葉を聞き、一瞬物凄く気が抜けそうになったのだが……今自分が立っている場所を思い出し堪える。


「それと、第十九席のトゥサラ=ミーミリス。第二十席のアラン=ソーラリル。合ってる?」


 続けて名前を言われた二人が小さく反応をするが、二人が何かを言う前に私が先に口を開く。


 私達がここに来ることを知っていたとは考えにくい……全ての『至天』の情報が洩れているということか?


 二つ名持ちはある意味有名なので、知っている者は名前や顔まで知っていると言ったレベルだが、下位に属するトゥサラ達の席次と名前まで正確に把握しているのは……。


「あぁ。相違ない。それで、貴殿の名を聞いても?」


 私が尋ねると少女は小さく頷き、担いでいた斧の先端を地面に下ろした。


「私はレンゲ。エインヘリアで四人にだけ名乗る事を許された、武聖が一人」


 武聖……?どういう意味だろうか?


 エインヘリアの情報は少ないと聞くし、少しでも気になる事は尋ねておいて損はあるまい。


「失礼、レンゲ殿。武聖というのは……?」


「斧聖、剣聖、槍聖……そして弓聖。それぞれの武器を扱う者の頂点」


「なるほど……御教示感謝する。つまりレンゲ殿は……」


「そう。私は弓聖」


「むっ……そうでしたか。斧をお持ちだったのでてっきり斧聖かと……あ、失礼した」


 相手の称号を間違えるという失礼をするところだった私は、急ぎ頭を下げる。


「……冗談を本気に取られると、とても辛い」


「ん?」


「……私はレンゲ。エインヘリアで四人にだけ名乗る事を許された、武聖が一人、斧聖レンゲ」


 何故かもう一度名乗りを上げたレンゲ殿……おや?今斧聖と名乗ったか?


「むっ……忝い。私の事は知っているようだが、こちらも名乗らせていただく。『至天』第五席『縛鎖』バルドラ=イーオ。よろしく頼む、斧聖レンゲ殿」


「よろしく、『縛鎖』」


 名乗りを終えたレンゲ殿が、片手で馬鹿でかい斧を持ち上げ担ぐ。


「……レンゲ殿は一騎打ちを御所望かな?」


「面倒。全員同時で構わない」


「なるほど……それでは、参る!」


 舐められているとか、そんなことはどうでも良い。


 私達の仕事は敵英雄の排除。


 その目標がわざわざ一人で目の前に出て来てくれたのだ、これをチャンスと言わず何という!


 私は掛け声と同時に全力で地面を蹴り、レンゲ殿との距離を一気に詰め、金砕棒を思いっきり叩きつける!


 体重を乗せた私の一撃を、レンゲ殿は手にした斧で事も無げに受け止める。


 私の能力は異常とも言える回復能力だが、膂力についても『至天』の誰にも負けぬという自負があった。しかし、私の半分程度の背丈しかないように見える少女が、さして力を込めてもいない様子で受け止めたのだ。しかも、斧を持っている手は片手である。


 驚くなどと生易しい話ではないが、体格に差がある故、私は彼女に覆いかぶさるように抑え込んでいるとも取れる。


 この状況であればすぐに追撃が……そう思うよりも一瞬早く、私の陰から飛び出したトゥサラが槍を突き出す!


 その一撃はこれ以上ないタイミングに思えたが、レンゲ殿は斧を持っていない左手で無造作にトゥサラの槍を払いのけた!


 その光景に驚く暇も無く、斧によって受け止められていた私の金砕棒が左側へと滑らされる。


 咄嗟の事だったので、そのまま地面に金砕棒を叩きつけてしまったのだが、その途中で飛んできたアランの投輪を叩き落としてしまった。


 まさか、狙ってやったのか!?


 驚愕を置き去りにして、地面に叩きつけた金砕棒を今度は跳ね上げるようにしてレンゲ殿を狙ったが、今度は斧で掬い上げるようにして金砕棒を流されてしまう。


 両手を振り上げ、完全にがら空きになった私の腹にレンゲ殿の強烈な蹴りが入り、私は後方へと飛ばされた!


 強烈な痛みに蹲りそうになる身体を強引に起こし、レンゲ殿を睨みつける。


 トゥサラとアランは……二人とも距離を取って武器を構えている。


 最前衛である私が離れてしまった以上、二人は迂闊に踏み込むことが出来ない。しかし、私が相手との距離を詰めようにも、腹を蹴られた衝撃で足が動かない……すぐに回復はするが、その一瞬が命取りとなる。


 そんな私の考えとは裏腹に、レンゲ殿は動くつもりはないようだ。


 助かった……とは思えない。


 たった一度の、一瞬の攻防だったが……我々の間には相当な技量の差があるように感じられた。それに純粋な膂力でも確実に私より上だ。


 これは……どうにか隙を作って、私ごとやってもらうしかないな。


 私達は一瞬だけ目配せをして、お互いの狙いにずれが無いかを確認するが……恐らく問題ない。ここに来る前に最終確認をしておいたのが功を奏したな。


「おおおおおおおおおおっ!!」


 そうと決まれば、私の役割は単純だ。


 回復した足に力を籠め、ただひたすら前に出てレンゲ殿の動きを封じる!


 小柄なレンゲ殿を叩き潰さんとばかりに金砕棒を振り上げ、全力で叩きつける!


 防御を一切考えず攻撃に全力を注げるからこそ、私は『至天』の中でも膂力を誇ることが出来るのだ。


 しかしその一撃を、レンゲ殿はやはり片手で手にした斧で受け止める。


 これでは先程と全く同じ……ではない!


 私は金砕棒を振り下ろした体勢から、体を捻るようにしながら膝蹴りを放つ。


 大柄な私の膝蹴りは小柄なレンゲ殿の頭部に簡単に届く。それにレンゲ殿の頭部は防具で守られておらず、膝当てをつけている私の一撃は十分致命傷足りえる威力となる。


 しかし、レンゲ殿は頭一つ分後ろに下がり私の蹴りを躱してしまう……出来ればもう少し体制を崩したかったが……そう考えた瞬間、私の肩ごしに二つの投輪が弧を描きつつレンゲ殿に襲い掛かる!


 飛来した投輪はあっさりと弾かれたが、その着弾とほぼ同時に横合いから鋭く突き出されるトゥサラの槍。


 それすらも最小の動きで躱されたが、トゥサラの攻撃は先程のように一撃では終わらない。


 流れる様な連撃が繰り出され、更にはその連撃の隙間を埋めるように完璧なタイミングでいくつもの投輪が飛来する。


 確かに……リズバーン様がおっしゃっていたように完璧な連携だ。


 私が入る事でリズムを崩しかねない……そう考えた私は少し間合いを開け、機を窺う事に注力する。


 完璧とも思えるトゥサラとアランの連携だが、レンゲ殿は最初に現れた時と一切変わらぬ眠たげな表情のまま、悠々と捌き続ける。


 これが、二人の連携の前に守る事しか出来ないという話であれば良いのだが……傍から見ていてもレンゲ殿にはかなり余裕があり、攻めている二人の方に焦りがあるのが分かってしまう。


 凄まじい速さで展開される攻防だったが、不意にレンゲ殿がトゥサラの方に向けて足を一歩踏み出すのを感じた私は、二人の連携の邪魔になろうと構わず、レンゲ殿に躍りかかった!


 突然飛び掛かって来た私に驚くようなそぶりを見せることなく対応してみせるレンゲ殿と、私が割り込んだことに文句を言わず、私の陰へとすぐさま移動する二人。


 恐らく今の一瞬、私が割り込まなければトゥサラかアラン、どちらかが討ち取られていたかもしれない。


 連携の綻びは感じられなかった……しかし、確実にレンゲ殿の攻め気を感じた私は、流れをリセットするために強引に割り込んだのだ。


 金砕棒を振り回し、遠心力を十分に乗せて攻撃を繰り出すが、やはり簡単に受け止められる……だが!


 上から振り下ろした金砕棒がレンゲ殿の構えた斧に当たった瞬間、私は金砕棒から手を放しレンゲ殿に覆いかぶさるように、或いは抱き着くように両手でレンゲ殿の背中を抑え込む!


 今だ!等と叫んだりはしない。


 そんなことを言わずとも二人は既に動き出している筈だから。


 すぐに襲いかかって来るであろう衝撃に備えるよりも一瞬早く……腕の中にいるレンゲ殿が声を出す。


「悪くない」


 その一言が賛辞の言葉と気づいたのは、随分後になってからの事だった。


 次の瞬間、私の視界は天地が逆転し、遥か上の方に地面が見える。


 何が!?


 そう考える暇も無く、視線の先で槍を構え全力でレンゲ殿に突撃したトゥサラが、斧の柄の部分をカウンター気味に叩きつけられ吹き飛ばされ、ほぼ同じタイミングで、投輪を投げた体勢のまま側頭部に回し蹴りを叩き込まれたアランが映った。


 頭上で起こったその光景に、私は宙に投げ出されたことを理解する。


 ほんの一瞬……瞬きよりも短いのではないかというような一瞬で私を上空に投げ、『至天』の二人を一撃で倒した……あれは、まさに化け物。


「とまほーく……あ、ダメか」


 地面で私を見上げながら斧を構えたレンゲ殿が何かを呟くが……空中に投げ出された私は態勢を変える事すら困難だ。


 次の瞬間、視界いっぱいに斧の腹部分が広がり……私は敗北を悟った。


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