第204話 お仕事



View of ドルソイ エインヘリアソラキル地方南部の小さな町の住人






「よぉ、モーソン。景気はどうだ?」


 俺は馴染みの雑貨屋の扉を潜り、カウンターで何か書き物をしている店主へと声をかける。


「ん?あぁ、ドルソイさん、いらっしゃい。こんな時間に珍しいですね?」


「配達の帰りでな。なんか最近妙に忙しくてよ、ちょっと休憩も兼ねて寄ってみたんだ」


「そうでしたか。じゃぁ、お茶でも持ってきましょう」


「お?悪いな」


「いえ、私も一息入れようと思っていたのでお気になさらず。すぐに持って来るので、その間店番をお願いしますね?」


「あいよ」


 俺がそう答えるとモーソンはカウンターの奥の扉の向こうに消えていく。


 店番を安請け合いしたが、当然俺はこの店の商品については良く知らない。


 俺に出来るのは小ズルい泥棒共に睨みを利かせる事と、客が来た時に大声をだしてモーソンを呼び戻すことくらいだ。


 まぁ、湯を沸かす程度の時間くらいは何とかなるだろ。


 そんな風に考えながら棚に綺麗に並べられた商品を眺める。


 何に使うのかさっぱり分からない物が多いが……前に比べて随分と品数が増えている気がするな。


「ドルソイさん、お待たせ」


「お?随分早かったな」


「最近、お湯を保存しておく魔道具を買いましてね」


「ほぉ、儲かっているみたいだな。羨ましい限りだ」


 魔道具なんて簡単に買える様な物じゃないしな……いや、最近忙しいかいもあって、うちでも買えない事も無いが……まぁ、うちは食品の卸しだからな。この儲けも一時的な物で、すぐに今まで通りカツカツの生活に戻っちまうだろうよ。


「お陰様で少し余裕が出てきましたね。ドルソイさんも随分忙しいんじゃないですか?」


「そうだなぁ。さっきも言ったが妙に忙しいんだよな。どっかでデカい祭りでもやってんのか?」


「そういった話は聞いていませんが……あれ?もしかしてドルソイさん、商業ギルドから話を聞いていませんか?」


「ギルドぉ?」


 嫌な奴らの名前が出て来て俺は顔を顰める。


「あぁ……その様子だと……」


「ったりめぇだろ?この前うちの商品は、根こそぎアイツらに奪われたんだ」


「あー、この前の戦争の時ですね。ドルソイさんの所は食料品を扱っていますからね……」


「あいつら二束三文で買い叩きやがって……おかげでこっちは、次の仕入れの金がなくてギルドに借金する羽目になったんだぞ?」


 あいつらが窮地に追いやって借金をさせるって、詐欺にしたってもう少し控えめにやるぞ?


「まぁまぁ、借金と言っても無利子ですよね?ギルドも無茶言って食料を出させたと思っているからこそ、無利子なんてことを言いだした訳ですし……」


「そりゃそうだがよ……」


「それに、借金はすぐに返済出来たんじゃないですか?」


「……」


「最近は何処も好景気ですからね。仕事はあるけど人手が足りないなんて、この町で起こるとは思っていませんでしたよ」


 そんなにみんな忙しいのか?


「うちが妙に忙しいから食事処が忙しいのだと思っていたが、町全体の話なのか?」


「えぇ、その通りですよ」


「……この前の戦争、うちの国は勝ったんだったか?」


「いえ、ソラキル王国は負けましたよ。ついでに滅びました」


「……国ってそんな簡単に滅びるものなのか?」


「その辺は私も分かりませんが……ソラキル王国はこの辺りでは大きな国だったはずなんですけどね」


「……敗戦国なのに景気がいいのは、どういうことなんだ?勝った時に景気が良くなるのはなんとなく分かるんだが……」


 戦争に勝てば、戦勝記念だなんだと各地で祭りが開催されたりなんだったりと、浮かれて財布のひもが緩むからな。だが普通戦争に負ければ、心配事が増えて金の消費は抑えるだろう。


 戦に敗れ、皆が食料を買い込むのは何となく分かる……まぁ、普通は保存食を買い込むと思うが……普通に生ものがばんばん売れているからな……そういうのとは違うとよな?


「詳しい事は私も分かりませんが、ソラキル王国を滅ぼした国は、随分と我々を優遇した政策を行っているそうですよ」


「我々って……商人ってことか?」


「いえ、もっと広義ですね。この国に住む民全てと言った方が正しいかと」


「ずいぶん大きく出たな……そんなことがあるのか?」


「それは……まだ分かりませんね。ですが少なくとも、今のこの景気の良さは国の政策によるものですよ?」


 そう言いながらモーソンはお茶を飲む。


 折角入れてくれたお茶が冷めるのもなんだし、俺もつられてお茶を口に含む。


「随分と良い香りの茶だな……」


「これは妻が買った物ですが……確かに良い香りですね」


 本当に儲かっているようだ……その割には今店の中に客がいないが。


「そうだ、ドルソイさん。商業ギルドに行っていないなら、税金の事も知らないのでは?」


「税金?また上がるのか?」


 折角売り上げが好調だというのに税金が上がってしまっては元も子もない……。


 俺が顔を顰めながらそう言うと、モーソンは苦笑しながら首を横に振る。


「いえ、逆ですよ。税金は下がります。しかもかなり下がりますよ……詳しくは商業ギルドで確認した方がいいと思いますが」


「へぇ……じゃぁ、行ってみるか」


 我ながら現金なものだとは思うが……こちらも商人の端くれ、金の事とあっては顔を出さないとな。


「それが良いと思います。どうやら、今後も色々とありそうですし、商業ギルドで情報は仕入れておいた方が良いと思いますよ?」


「そういうのは苦手だな……」


 商人の端くれと考えた傍から、頭が痛くなりそうな話題におよび腰となってしまう。


「そうは言っても……今まで通りの価格で売るのは多分難しくなりますよ?」


「そうなのか……?」


「えぇ。まぁ、その分農村からの仕入れ値も多分下がると思いますよ」


「どういうことだ?」


「それが、これは南の方から来た行商人に聞いた話なんですけど……どうもうちの国を倒した国は、商人からだけじゃなく、農村の税もあり得ないくらいに低くしているらしいんですよ」


「へぇ、凄いな……それでなんで仕入れ値が下がるんだ?」


「えっと、農村の人達は税を収穫物で納めているじゃないですか?でも税が少なくなれば、彼らの懐に入る食料が増えるわけで……言うなれば、農村部で食料が余り気味になるという訳ですよ」


「そりゃ贅沢な事だが……沢山食料があるからって、別に農村の奴らも安くする必要はないだろ?」


 寧ろ、今までと同じ価格でたくさん売った方がいいに決まってる。


「それはどうでしょうか?農村部で収穫した野菜を、いつまでも鮮度を保ったまま保存しておくことは出来ませんよね?収穫した物は、出来る限り早く売りさばきたいのが普通です。なのでドルソイさんに話を持ち掛けてくるわけです。銅貨十枚の量の倍を売るから銅貨十五枚で買ってくれないかってね。どうします?」


「そりゃぁ……今は食料がいくらあっても足りないくらい出て行くからな。勿論買うさ」


「それに、隣村で銅貨十枚の量と同じだけの量が、町の反対側の村では銅貨五枚で売られているとしたら、どうします?」


「そりゃ、少しでも安い方が仕入れるにはいいな」


「村としては多少安くしてもその分沢山売ればいいだけですからね。幸い納める税が少なくなって、売る物は大量にあります……多少値下げをしたとしても、農村はかなり裕福になるでしょうね」


「じゃぁ、俺が今まで通りの値段で売ればぼろ儲けだな……とはいかないか」


 俺がそう言うとモーソンが苦笑する。


「食料品を扱っているのが、ドルソイさんだけだったらそうでしょうが……小さい町とはいえ、食料品店はそれなりにありますからね。ドルソイさんが値段を下げなかったとしても、他の商人が下げます。そうなれば、ドルソイさんの店だけ仕入れたものが売れなくなりますよ」


「むぅ……だがよ、そういう値下げ合戦みたいなことになったら、うちみたいな小さな店舗は不利だぞ?店に商品を置く量には限界がある……値段を下げ過ぎたら、一つ一つの商品の儲けが薄くなって……デカい店を構えている奴に確実に潰されちまう」


 それに大店は独自のルートで大量に商品を仕入れ、その分仕入れ値を下げている。


 大店の大量購入、大量輸送にはどうしたって勝てるはずがない。


「それは……大丈夫……」


「ん?」


 突然聞こえて来た女の声に、俺とモーソンは同時に店の入り口に顔を向ける。


 そこにはフードを被った旅装姿の、小柄な人物が立っていた。


「おや?もしかしてムルルさんですか?」


「……そう」


 随分とぼそぼそと喋るヤツだな……だが、何故かそんな喋り方なのに、何をしゃべっているかはっきりと聞こえてくるから不思議だ。


 名前を呼んだってことは、モーソンの知り合いみたいだが……。


「王都はどうでしたか?」


「もう王都じゃないけど……向こうも……かなり好景気……。大規模な……公共事業も始まって……スラムも……無くなりそうなくらい……大忙し」


「スラムが無くなりそうって……スラムの住人達も仕事を受けているという事ですか?」


「そう……今は……働いていない人を……探す方が……難しい……」


「それは凄い。こちらも随分と人手不足だとは思っていましたが、流石に王都……元王都ともなると規模が違いますね」


「……そんなことを言っていられるのも……今だけ……」


「と言いますと?」


「こっちの方も……すぐに……もっと忙しくなる……これは確定事項……」


 俺達のいるカウンターの傍までやって来たムルルとか言う奴は、被っていたフードを下ろし……その下から出て来た可愛らしい顔に思わず固まってしまう。


 こ、これはとんでもねぇ美女……いや、美少女だぞ?


 モーソンのやつ、こんな知り合いがいたのか?


「あぁ、ドルソイさん。こちらはムルルさん。先程話していた南の方から来た行商人で、以前来た時も色々と面白い話を聞かせてくれた方です。ムルルさん、こちらはドルソイさん。この町で食料品を扱っている店の店主で、私の昔馴染みです」


 目を丸くした俺に気付いたモーソンが、小さく笑みを浮かべながらお互いを紹介してくれる。


「……よろしく」


「お、おう。よろしくな、ムルルさん」


 ムルルという行商人に真正面から見つめられ、すこしどもってしまう。


 母ちゃんにみつかったら、確実に張り倒されるな……。


 だが……俺の生涯でここまで綺麗な女を見るのが初めてなもんで……俺はじろじろとムルルさんを見てしまう。


 そんな俺の不躾な視線を不快に思ったのか、ムルルさんが首を傾げた。


「あぁ、すまない。行商人って割に、商品を持っているように見えなくてな」


 苦し紛れに俺がそういうと、得心が言ったようにムルルさんが頷く。


「こういう変革の時は……物も売れるけど……それよりも……情報が……一番売れる。だから……少しでも……身軽にして……素早く……いろんな場所に行けるように……」


「流石はムルルさん。相変わらずのやり手のようですね」


 情報を売る……そういう仕事もあるって噂は聞いたことがあるが……実体のない物を商品として売りさばく……確かにモーソンの言う通り、見た目と違って出来る商人みたいだな。


 実体のない物だからこそ、信用が無いと売れない筈だしな。


「エインヘリアが勝つのは……当然……。だから……早めに……情報を売り捌いただけ……簡単な事……」


「いえ、普通は戦争が始まった直後に、こんなにも早く決着がつくなんて読めませんよ……まぁ、私はそんなムルルさんから情報を買っていたおかげで、他の商人達に先んじて儲けさせてもらえましたが……」


 モーソンの野郎、羽振りが良かったのはこの好景気のお陰だけじゃなかったって事か……。


「私は……必要な人に……必要な情報を売っただけ……それを生かすも殺すも……その人次第……ここの商業ギルドは……失敗したね……」


「商業ギルドは、ムルルさんの情報を買わなかったのですか?」


「前は……少ししか買わなかった……損はしなかったけど……大きく儲けもしなかった……でも……今回は……いっぱい買った……」


「ははは、逃した大魚が戻ってきたら、ギルドは必死になって餌を用意したでしょうね」


「ギルドの連中が慌てふためくのは良い様だが……それってそんなに凄い情報なのか?」


「……情報は……早ければ早い程……良い。一分一秒でも……商売相手より早く……情報を手に入れたら……それだけで勝てる……」


「いっぷんいちびょう……?」


 聞きなれない単語に俺が聞き返すと、ムルルさんが小さく頷く。


「……これも……情報……エインヘリアで使われている……時間の単位……1、2、3……この速度が秒……六十まで数えたら一分になる……一分が六十まで行ったら……一時間……」


「新しい時間の単位ですか……ふむ……」


 ムルルさんの説明にモーソンが唸る。


「南の方では……時間を知ることが出来る……時計の普及も……始まっている……」


「そんな細かい時間を知ってどうするんだ?なんか役に立つのか?」


「……モーソン……貴方の友人は……ちょっと……商売人らしくない……」


「はは、あー、まぁ、その……彼はあまり細かい事は気にしない性質でして……」


「……俺はそんな変な事言ったか?」


 さっき数えた速度……秒だったか?そんなもの分かったところで役に立たんだろ……?


「ドルソイさん。南の方では時間を知る……時計でしたか?それが普及しているそうです。皆が時間を正確に知るすべを持っている……つまり、時間を指定して約束が細かく出来るという事です。今だとドルソイさんは……昼頃に約束、三の鐘が鳴るころに約束……そんな風に人と会う約束をしますよね?でもそれって、結構大雑把な約束になるじゃないですか?ですが、時計という物を皆が使えば、秒という単位で約束が出来て、時間に無駄が無くなるという事ですよ?」


「……なるほど」


 確かに、昼頃という約束は各々の気分次第だから、待ったり待たせたりが発生しやすい。それが無くなるというのは、確かに便利かもしれんな。


「……流石に……秒単位で約束する人は……いないと思う……」


「国が変わるってことは色々な事が変わるんだな……国の名前が変わるくらいだと思ってたぜ」


「エインヘリアは……色々な物に単位をつける……時間、速さ、重さ、長さ……他にも色々……そして……それらを計る道具も……」


「興味深いですね……」


「面白いとは思うが……俺には殆ど関係ないだろ?」


 俺がそう言うと、二人から残念な物を見る目で見られた。


「貴方が……芋……十個を……銅貨一枚で買った……買った後で中身をみたら……こんなサイズの芋が十個……入ってた……」


 そう言ってムルルさんが豆のようなサイズを指で作って見せる。


「いや、それは芋じゃなくて豆だろ?」


「……芋で間違いない……でもすごく小さい……十個は十個……なにも間違ってない……」


「……いや、でもなぁ」


 それは詐欺って言ってもいい話だと思うが……。


「重さの単位が……統一されていれば……個数ではなく……重さで値段を決められる……」


「……そう言う事か。油や塩なんかと同じ売り方を、野菜でも出来るってことか」


 確かにそれなら、物がでかい小さいで揉めることは無くなるな。


「私としてはその単位も気になりますが、それを計る道具というのも気になりますね……それを輸入することは可能ですか?」


「同じ国だから……輸入と言うのは正しくない……でも、南から仕入れることは可能……」


「ムルルさん、手配できますか?」


「……いいよ。……商業ギルドにも……頼まれたし……ここにも……持って来る」


「ありがとうございます!あ、ちなみにそんなに大きなものじゃないですよね?」


「大丈夫……手で持って使える……」


「良かった……じゃぁ、お手数ですがお願いしますね」


 ほくほく顔でモーソンが依頼をする。


 そんなモーソンに頷いた後、ムルルさんは俺の方に顔を向ける。


「……俺も気になるが……高いんじゃないか?」


「時計は高い……安くても……金貨三枚は……下らない」


「たけぇ!」


 うちの家族が一ヵ月生活しても金貨三枚はいかねぇぞ!?


「重さは……少し安くて……銀貨十枚くらい……長さは安くて……銅貨五枚くらい」


「長さだけ妙に安いな……」


「一度に計れる量が短い……このくらい……」


 そう言って両手で長さを示す様に手を広げる。


 確かにあまり長い距離を測るには適していない様だ。


「とりあえず、どんな物かモーソンが仕入れたら見させてもらうとするか。それはそうと、元々何の話をしていたんだったか?」


「えっと……ギルドに情報を売ったとか……情報は商人にとって大事とか、そういう話だったかと」


「……最初は……農村での仕入れ値……その話……」


「あっ!そうだったな!確かムルルさんが店に入って来た時、大店が値下げ合戦に乗り出したらヤバいって話をしてて……」


「ムルルさんが、それは大丈夫っておっしゃられていましたね」


 俺とモーソンが思い出す様に言うと、ムルルさんが小さく頷く。


「農村での収穫物……余剰分は……国が適正価格で買い上げる。……だから、極端に余って……仕入れ値が崩れる事は無い……」


「へぇ……そういう仕組みなのか。俺みたいな小さな店としては助かるな」


「国が農村から直接買い上げる……つまり、今後は農村部にもお金が増えるという事ですね……これは中々、商売が広がりそうな情報ですよ……」


 すぐにそういった考えに至る辺り、モーソンはちゃんとした商人で、そういった考えが出てこない辺り、俺は商売に向いていないのだと分かる。


「やはり、ムルルさんから聞く情報は素晴らしいですね……ギルドに売った情報とやらも物凄く気になります」


「……売ったのは……代官の就任時期と……代官が来た後に……どんな政策を実施するか……」


「そ、そんな情報を御存知なのですか?」


 モーソンが、ムルルさんの言葉に目を白黒させている。


 そんな驚く様な情報なのか……?俺には何が凄いのか分からんが……。


「……元王都の方で……政策については……陛下が発表してたから……就任時期は……他の場所からの……逆算で……」


「はぁ……大したもんだな。そうやって色々な場所で得た情報を別の場所で売るのか……色々な商売の形があるんだな……俺みたいに、昔から付き合いのある場所に野菜や肉を卸すってのとは全然違うやり方だ」


「……それも……とても大事な仕事……料理処は……食材が無ければ……何も出来ない……」


 商売が下手な自覚はあるが……ムルルさんの言葉や視線に、それを馬鹿にするような雰囲気は一切ない。


 二人の会話に殆どついていけていない辺りに引け目を感じていたが、なんとなくどうでも良くなって来たな……いや、本当はそれじゃマズいのだろうが……。


「そういえば、ドルソイさん。大丈夫ですか?配達の終わりにここに立ち寄ったんでしたよね?」


「あっ!やっべ!母ちゃんにぶん殴られるぞ!すまん、モーソン!茶美味しかった!ムルルさんも色々面白い話を聞かせてくれてありがとう!旅、気をつけてな!」


 二人に声をかけた俺は、急いで自分の店へと走りながら頭の中で言い訳を捻り出す。


 時計とか言うのが広まったら、こうしてさぼるのも難しくなるかもしれないな……そんなことを考えながら走っていてふと気付く。


 そう言えば、あれだけ色々聞かせてもらったのに金を払ってないんだが……良かったのか?


 もしかしたらモーソンが俺の分も後で払うのかもしれない……確認しておいた方が良さそうだな。


 二人に申し訳なさを覚えながら自分の店に駆け込んだ俺は、母ちゃんにしこたまぶん殴られた。


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