第2話 不思議な彼女
その音の持ち主は、白いフリルのついたワンピースを着た
「あの......、あなたは......??」
(何話しかけてんだ!!たどたどしすぎるだろ!?久しぶりの日本語だとしても、もっと違う話しかけ方があるだろ関口月音!!)
自分にツッコミながら恐る恐る顔を上げてみると、そこには眉を顰める彼女の顔があった。
「誰あなた?気軽に話しかけてこないでくれる??」
「えっ......??」
こちらを凝視してくる少し細められた三日月のような瞳は矢のように鋭く、目の前に仁王立ちする姿からは先程纏っていた穏やかな雰囲気など微塵も感じられなかった。そんな彼女に彼は絶句した。
「んもうっ!なによっ!ほんとイケメンってみんな失礼な奴ね!!これだからイケメンは......っ!」
(イケメンイケメンと騒いでいるが、俺のことか??こんな地味な顔のどこがイケメンなんだろう。もしかして見る目がないのか......??)
「ほんと失礼ねアンタ!!初対面の相手にいきなり〝見る目がない〟ですって!!っていうか、人に尋ねる前にまず自分の名前を名乗りなさいよ!そんなことも知らないの!?」
「す、すみません......。ええと、俺の名前は関口月音です。えっと......、」
「あ、あんた......っ!!あの『関口月音』!?いや、ちょっと待って。関口月音は今ワルシャワにいるはずよね?どうしてこんなとこにいるのよ!!」
「俺のこと知ってるんですか??」
「知ってるも何も、関口月音は私の......、」
「私の??」
「............。っもうっ!!どーでもいいでしょっ!!......、そうそう!!私の名前は
少し赤く色づいた頬を背け、逃げるように凛音はその場を去った。そこには呆けた阿呆面を晒す月音、たった一人だけが残った。
(なんなんだ??たったこんだけの時間にいくつ人格変わったんだよ。)
はぁ、と溜息を吐きながら月音は、さらさらと指通りが良い髪をかき上げた。
翌日、また凛音と会えるのではないか、という淡い期待を持ちながら再び空港へ向かった。しかし、昨日の今日で凛音がそこにいるはずもなく、月音は少し恨めしい思いで、何事もないようにそこに佇むピアノを見つめた。そのうちに少しばかり出来心が起きた月音は抜足差し足、少しずつピアノに近づいた。
日に照らされて、黒い輝きを放つピアノは彼の見慣れたグランドピアノではなく、小さなアップライトピアノ。構造上、もちろん二つの音の響きは全く違う。
『ドーーーーー』
だが、彼の押した鍵盤からは昔弾いていたピアノよりも嬉しそうな音が響いてきた。月音はそれだけでこのピアノが楽しまれて弾かれていることが分かった。彼はそっと目を伏せると、ちょこんと置かれた椅子に腰掛けた。かちゃり、と腕時計を外し、髪の毛を耳にかける。小さな窓から入ってきた一陣の風が通り過ぎ、月音の形の良い細い指が鍵盤に吸い込まれた。
あの音 雪蘭 @yukirann
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