第二十四話
真奈の部屋から出て、トイレへと向かう。
二階には真奈と夢芽の部屋しかなく、トイレは一階のため階段を降りる。
「……ねえ、浜辺さん?」
「どうしたの、黒宮くん」
「斎藤とヤったって本当?」
早くおかしたい。
「ゴホンっ、えっ、ええ、そうよ! そういう黒宮くんは真奈と──」
「うん、ヤったよ」
早く裸が見たい。
そんなことを考えていたら、気づけば俺は浜辺さんを後ろから抱きついていた。
浜辺さんは足を止めて。
「ねえ……何してるの?」
「浜辺さんっていい匂いだね」
俺は舐めるように浜辺さんのうなじの匂いを嗅ぐ。
バラのようなとてもいい匂いがする。
「浜辺さんって昨日初めてだったりする? ううん、そうだよね。まだそんな経験ないよね? 俺、こう見えてても二人の女とシてきたからさ。ほら、斎藤も昨日が初めてだったし……今からシてみな──」
浜辺さんはこちらを向くと、次の瞬間。
ピシン──。
という音が廊下に響く。
そして、浜辺さんはこちらを睨むように見ながら。
「最低……!」
ああ、俺は今ビンタをされてもしょうがないことをしたのだろうか。
ただ提案してみただけなのに。
それの何が悪いのだろうか。
「真奈ちゃんにはかわいそうだから言わない、けど、あんたみたいな人間に真奈ちゃんは似合わない」
どの口があったんだよ、そんなことを思ってしまった。
俺の方が真奈を知っている。
自分の方が知っている気になりやがって。
俺がどんだけ辛い思いをしたのか知らないくせに。
俺の知らないところで真奈が何をしているのか知らないくせに。
知ったかぶりやがって。
意味がわからねえ、意味がわからねえ……。
「もう一度、自分の今の発言とか考えてることを改めたほうがいいよ、じゃあ、トイレはもうすぐそこだから……私はこれで戻る……」と浜辺さんは去っていった。
もう一度、考え直せと言われても……ヤりたいものはヤりたい。
シたい時にするのが真奈であり、真奈の彼氏である俺の役割だ。
とうの昔に俺は狂っている。
だからと言って俺は俺を否定しない。
否定したらもう死んでしまいたくなるからだ。
「待ってくれ、今のはその……ごめん」
ピクリと浜辺さんは足を止め。
「それ、本当に反省してるやつ?」
「うん、反省したよ。俺が間違っていた、浜辺さんはスタイルも顔も性格も全てが良くて親友の彼女なのに変な感情を抱いてしまっていたよ。俺には彼女もいるのに、最低な野郎だな」
「ええ、そうよ。最低、本当に最低な野郎よ」
でも、それ以上に真奈はもっと最低な野郎だ。
俺なんて比にならないほどに。
シたい時にする……!
「ほら、反省してるだろ? だからヤろうよ」
「……」
何も聞かなかったように、浜辺さんは歩き始めた。
……何してるんだ、俺は。
いきなりヤるのは無理だろ。
ヤるにはまずは恋に落とすところからだろ。
○
最低、最低、最低、最低……!
本当に最低な人……!
なのに、なんでこんなにドキドキしてるの、私。
清楚で可愛い彼女が寝取られた、慰めに彼女の妹とシた。 さい @Sai31
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