第8話「今後の方針」
放置されて錆び付いた陸上戦艦。
そこの一室――元はブリーフィングルームだったのだろう――そこでオキナと出会う。
そこで事情を説明した。
「成る程。外の世界はどうなってやがるんだか・・・・・・まあいい。問題は野盗どもだ。おたくら太平洋連邦の武器を手に入れたあいつらを片付けないと被害は拡大する。その前に叩かないとな」
そう言ってオキナはデバイスパッドに位置情報を見せる。
「奴達のアジトの大体は元軍事基地か、あるいは纏まった設備がある場所が多い。海岸の近くでそう言う場所があるとしたらこの基地だろう」
そう言ってディスプレイに見せてくれた。
「ドローンの映像を見る限り、運がいいのか悪いのか――レイダービーチに辿り着いちまったらしいな」
「レイダービーチ?」
俺はオキナに質問した。
「安全地帯なんだが逆を言えば危険なんだ。ヤバイ生物が少ない代わりにそう言う狩り場を目当てにやって来た連中を襲うんだ。だからレイダービーチって言うんだ」
「化け物じゃなくて人間に襲われるのか・・・・・・そのネーミングに納得だ」
俺はそう納得した。
『叩き潰しにいくのか?』
ガンテツが代弁するようにオキナに質問する。
「問題がある。俺達の戦力じゃ難しいだろう。自衛隊の力を借りないといけない」
自衛隊と言う単語を聞いて思い出した。
「この土地の軍事組織でしたよね?」
「まあな。正直に言うと自警団で、割に合わない仕事を率先して引き受けて、民衆からの人気も高い組織さ」
「へえ・・・・・・」
自衛隊と言う組織は内面はどうかは分からないがかなり慕われている組織のようだ。
「自衛隊に丸投げでもいいがそれじゃ筋が通らない。ウチからも戦力を出す形になるだろう。てかそうしないと民衆から文句が出るからな――人気ありすぎんのも問題だぜ」
「あ――ノーコメントで」
色々と苦労があるようだ。
「で、兄ちゃんはどうする?」
「俺は――」
☆
夜も遅くなり、ジャンクタウンで一泊する事に。
ガンテツは無線機で俺の仲間ともども面倒見てもらっているスティーブさんと連絡している。
俺は格納庫でパワーローダーを見繕っていた。
『まさかお前が率先して動くとはな』
「条件も悪くないしな。修羅場を潜った甲斐があった」
ガンテツにそう返す。
俺はストライカー・パワーローダーの整備を手伝っていた。
土方のオヤッさんと呼ばれる――年季の入ってくたびれ気味な作業着を身に纏うサングラスをつけたダンディなオヤジさんが現場を仕切っており、それに混じる形でストライカー・パワーローダーを交渉で貸してもらうことにした。
「おう、ガンテツじゃねえか。この若いのまだまだだが磨けば光と思ってな――ストライカーを貸してやることにした」
『土方さんがそれ程言うとは、よほど気に入られたんですね』
あの口の悪いガンテツが土方さんには丁寧に対応している。
どんだけ凄い人なんだろうこの人は。
「相手が野盗連中とはいえ、この旧世代のオンボロでも戦えるって皆、死力を尽くして証明してくれたんだ。整備士冥利に尽きるってのはまさにこのことよ」
「このストライカーも土方さんが整備を?」
俺はそう尋ねた。
「まあな――ここにあるパワーローダーは全部、俺が拾い集めたり、寄付してくれたり――まあ様々だが全部俺が暇さえあれば手を加えている」
「まるで職人の鏡ですね――このストライカー、凄く良かったですよ。旧世代機って動きが悪い印象があったんですけど――」
「ははは、若いのに褒められるってのはやめられねえ。歳を無駄に食った甲斐があるってもんだ・・・・・・」
土方さんは「まあそれは置いといてだな」と話を続ける。
「確かに旧世代機は動きが鈍い。外の最新鋭機を目の当たりにしてそれを実感したよ。だがこの土地で整備士やるには「それがどうしたっ」て文句をつけて腐らずに旧世代機を立派に戦わせるようにしなきゃなんねーのさ・・・・・・と長話しちまったな」
そして最後に土方さんは「生き残れよ坊主――お前はまだまだ進める」とだけ言い残して去って行った。
『土方の旦那、相変わらず渋いな・・・・・・』
「ああ、なんつーかこう歳食ったらあんな大人になりたいなって感じだな」
『俺はロボットだから老けらんねーけどな。それとお前がああなるにはまだまだだ』
「今回ばかりは素直に聞いておくよ」
そう返して俺は戦いの準備に戻った。
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