第7話「ストライカー・パワーローダー」

 Side ユウヒ・ステイン


(まさかこんな形でパワーローダー乗りになるとはな)


 パワーローダー乗りになるのは狭き門だ。

 有り体に言えば人気だからだ。

 空軍に入る奴がなんだかんだ言って戦闘機乗りに憧れるのと同じ理由だ。


 俺はその試験に落ちてしまって歩兵の道を進んだがこんな形で旧世代のパワーローダーに乗るとは思いもしなかった。


(それにしても意外と動作が軽いな――)


 思いの他、整備が良いのか?

 鈍重そうな外観の割りによく動く。

 とにかく戦闘エリアへ移動した。


『さっきは悪かったな兄ちゃん』


「さっきの――」


 緑のターバンをつけたオッサンの声が聞こえた。


『俺はオキナて呼ばれているこの町の顔役だ』


「ああ、どうも。ユウヒ・ステイン。大西洋連邦の軍人です」


『そうかい。で、パワーローダーの扱いは?』


「訓練だけで実戦はこれが初めてです」


『そうか。本当はもっといいパワーローダーがあったら良かったんだけどな。まあお互い死なないように頑張ろうや』


 とだけ言って通信を切る。 

 色々と言いたい事はあるが今後の生活もあるし、自分達のせいでこんなややこしい状況になってるのだ。

 ともかくジャンクタウンを襲撃している野盗を排除しなければいけない。


 と思った矢先にグレーのイーグルが目に入る。

 ヒロイックな外観だがこうして敵に回すと悪魔のように見える。

 味方の旧世代のパワーローダーの一体を機動力で翻弄し、手に持ったブレードでトドメを刺そうとしていたが――


『おら!!』


『なに!?』


 俺は不意を突いて体当たりして吹き飛ばした。

 このストライカー想像以上に性能が良い。

 衝撃で相手は吹き飛ばされ――


『人生が掛かってるんでな!! 悪く思うなよ!』


『ヒッ!』


 右腕に備え付けられたキャノン砲で一機撃破。

 更に二体ほどマシンガンやレーザーを乱射しながら近付いて来る。

  

’(こいつら素人だ――)


 もしこいつらが正規の軍人だったらここは陥落していただろう。

 最新鋭のパワーローダー同士の射撃戦は戦闘機のドッグファイトよりも複雑だ。

 全力疾走で銃弾乱射して当てるなんてのは神業に等しい。

 立ち止まり、ギリギリまで引きつけて――


『そこ!!』


 一機撃破。

 胴体に直撃し、核融合炉が爆発したのだろう。

 傍に居た機体も爆発に巻き込まれて転倒する。

 念のためにトドメをさしておく。

 これで三機。

 

『態勢を建て直して反撃しろ!!』


 と、ジャンクタウン型の人々が反撃に転じ始めた。


『怯むな!! こっちには武器が沢山あるんだ』


 野盗連中も負けじと攻撃に転じる。

 中には後ろを見せて逃げる奴もいたが撃破された。

 

 戦闘が終結したのはそれから数分後だった。


「ガンテツか・・・・・・」


 俺はストライカーパワーローダーのコクピットハッチを明けてガンテツを見つけた。 

 ガトリングガンを抱えてその場にへたり込む。


『お互い生き抜いたようだな――ちょっと見ないウチにマシな顔になったじゃねえか』


「そうか・・・・・・それよりも」


『ああ。まあ恒例行事みたいなもんだ』


 ジャンクタウンの住民も死体漁りを開始していた。

  

 特に太平洋連邦製の最新鋭パワーローダーのパーツは大人気であり、そこかしこで奪い合いが起きていた。


『とにかくオキナのオッサンに話に行くぞ。あいつらのアジトを叩き潰さなきゃいかん』


「あいつらのアジト分かるのか?」


『まあな。偵察ドローンとか飛ばしたらすぐに見つかるだろう』


「ドローンあんの?」


『この土地なめんなよ――』


 との事らしい。

 俺は格納庫にストライカーを返しに行くことにした。


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