第6話「ジャンクタウンへ」

 Side ユウヒ・ステイン軍曹


 スティーブさんに避難した同僚達はリタ・ギュンター少尉に任せて俺とガンテツでジャンクタウンに向かうことにした。


 移動は白い軽トラック。

 武装は積んでおらず、荷台にはガンテツが載っていた。

 これはいわゆるお出かけようのトラックらしい。


 通信機越しに色々と会話する。


『とにかく急ぐぞ。野盗連中がお前らの武器でヒャッハーするのは目に見えてるからな』


「ああうん。ごめん」


 荒れた地面を猛スピードで飛ばす。

 緑に呑まれた建築物を尻目にガンテツの指示で獣道と化しているアスファルトの道を行く。


 道中出くわす生物は基本は無視だが追ってくる奴はガンテツがサブマシンガンで蜂の巣にした。

 流石にガトリングガンは勿体ないと思ったらしい。


 そんなこんなでジャンクタウン――古い陸上戦艦か何かを中心にスクラップのバリケードで囲まれた町に辿り着いたは良かったが修羅場の状況だった。


 博物館送りの旧型のパワーローダーと俺達太平洋連邦製のパワーローダーが襲撃している。


 イーグル、ホーネット、ライトニングなどだ。


「ちょっと待て!? どうして俺達の――」


『インテリ系の野盗が強引にロック外したんだろう』


「出来るのかよ!?」


 最新のパワーローダーは奪取防止のためのロックが掛けられているがまさかそんな事が出来るとは思わなかった。


 映画じゃあるまいし。


『ボサッとしている暇はないぞ! とりあえず入り口まで突っ込め!』


「この銃撃戦の中をか――ってうわぁ!?」


 此方にも気づいたらしく、銃撃の雨を降らしてくる。

 ガンテツもガトリングガンで応射した。


 太平洋連邦もユーラシア連合製も防御力だけでなく、各部に設置されたブースターで機動力も高い。


 どの道逃げても車じゃ余裕で追いつかれる。 


 ならばどうにかして味方が居る場所に突っ込むしかない。


「ガンテツ!! 狙うならブースターか排熱口を狙え!! そこが弱点だ!!」


『おうよ。やる気出てきたみてえじゃねえか!!』


 俺は車を走らせながら指示を飛ばす。


 この土地の旧世代のパワーローダーはともかく今の時代のパワーローダーは防御力を犠牲にして機動力や作戦行動範囲、作戦継続時間を高める方向性がトレンドだ。


 これはビームやらレーザー、レールガン、プラズマなどの兵器の携帯化に成功したからによる弊害であり、空を飛ぶのが標準になってしまっている。


 防御力に関しては特殊加工の合金頼みになっていた。


 さらにブースターや稼働による熱を逃がす排熱口などは構造的に頑丈にしにくく、それが弱点になっている。

 

 防御力に関してだけで言えば昔より退化しているのだ。


『今だ! 敵の勢いが収まってる!』


「よっしゃ!」


 味方らしい非人間型の旧世代のパワーローダーや戦車を横切り、内部に突入する。

 

 そこでは様々な背格好の――ディストピアに題材にした映画とかでよくみた衣装を身に纏った人達が慌正しく動いていた。


「おお、ガンテツか。タイミング良いな。もしかして狙ってたか?」


『んなこと言ってる場合か。応戦するぞ』


「分かってる。あの野盗どもが乗っているパワーローダーはなんだ? 外の新型か」


『話は後だ。この小僧に乗せられるパワーローダーはあるか?』


「あるぞ。ついてこい坊主――」


「坊主って俺のことか?」


「お前以外に誰がいるんだ!? ついてこい!」


 そう言ってトントン拍子で話は進んでいく。

 緑のターバンをつけたオッサンの背中を追う。


「お前さん外から着た人間だろう」


「分かるのか?」


「衣装を見ればな。そんなピカピカな衣装着ているのなんてよそ者だ。昨日からよそ者が彼方此方現れて大パニックさ」


「まだ生存者がいるのか」


「この土地へなにしに来たか分からんが、なにをするにしても死にたくなきゃ戦え。でなきゃ死ねだ。ついたぞ」


 メチャクチャな事を言われながら格納庫らしきオンボロ小屋に辿り着いた。

 そこの一台のパワーローダーらしき物を見てうわ~となった。

 

 旧世代パワーローダー・ストライカー


 まるで装甲車に手足をくっつけたかのような旧世代のパワーローダーだ。

 両肩にはシールド。

 右腕にはキャノン砲らしき武装が備え付けられている。


 ロボットゲームの序盤で呆気なく主人公機にやられそうな外観のメカだ。

 これに乗るぐらいなら生身で戦った方がいいかもしれないがオッサンに「ほら乗った、乗った!!」と言われてしまう。 


 俺は自棄になって「こうなったらやるしかない」と腹を括った。

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