第2話 半年以上ぶりの再会
そういえば明日、くら寿司に行っておごってくれるんだった。
先月、私の誕生日があったんだけど、小林は一番に祝ってくれた。その時にくら寿司で寿司をおごってほしいって言ったら了承してくれた。もちろん、私も何かおごる予定だ。
小林ゆり。小中学校が同じで、仲良くなったのは中学時代からだ。和元は人見知りする子で話しかけても反応が薄かった。でも私に慣れてくると、かなりどついてくるようになったのだ。
LINEでのテンションはかなり高く面白い。ギャグやダジャレは寒いけど、なぜか笑ってしまう。他には、イラストを描くのが得意な子で、それだけで食べていけるんじゃないかってくらい本当に上手だ(語彙力の無さ)。
そして次の日、12時に駅前に待ち合わせをしていた。小林がちゃんと起きているのか確認するため、10時前くらいに「おはよう」とLINEを送った。すると、しっかり返信が来たから起きていることは確認できた。
以前、夜更かしして布団から出られないとドタキャンされたことがあった。それ以来、半年も話していなかったから、流石に反省して早起きするようになったのかな。
私は時刻の3分前に駅前に着いたから、壁に背中をつけて和元を待った。
「ふぅ」歩いただけで疲れて一息つく。
スマホを開くと、小林が「家出た!」とLINEを送ってくれていた。しかし時間を見ると、12時57分だった。
まさか、3分前に家を出た?
小林がついたのは12時5分。5分の遅刻だ。思わず怒鳴った。
「おっそい! なんで3分前に家出るの。3分で着く距離じゃないでしょ」
「あ、あれー? おかしいなあ」わざとらしく頭をかく。
マイペースだなぁ。嫌いじゃないけど。
イトーヨーカドーの最上階に行き、くら寿司の店に入った。予約番号を打って順番を待っていると、和元が呑気なことを言い出した。
「もうちょっと遅刻しても間に合ったんじゃないかなぁ、なんてね」
「いやいや。約束の時間には来なさいよ」
並んでいる間に話していると、ようやく私達の番号が呼ばれた。
小林がお手拭きを持ってきてくれている間、私はサーモンといくらを頼んでおいた。
「おーまたー(お待たせ)」
「ありがとう~。小林のぶん頼んどいたよ」
「おおお、あんざます」
私はここのくら寿司が好きだ。よく家族でいっていたこともあって気に入っている。二十歳になったら高級寿司を食べてみたいけど、貧乏舌の私にはチェーン店の味がぴったりだ。
小林とくだらない話をしていると、お寿司が回ってきた。私の大好物のサーモンが2皿来る。
「小林!」
「ん?」
「サーモンの美味しい食べ方教えてあげる。まずガリを……」ガリの入った入れ物の中身を見る。
ガリが少ない。
これでは足りない。私は毎回寿司屋に着たら10皿は食べる。それも、すべてサーモンしか食べないし、ガリは必須だ。この量で足りるわけがない。
「少ないから足してもらうわ。その後教える」
「おっけー」
店員さんを呼ぶとすぐに来てくれた。ガリを多めにしてほしい、と頼もうとしたら、小林が率先して伝えてくれた。
「ガリの量を増やしてほしいんですけど……」
「かしこまりました。少々お待ちください」
ここで私は驚いた。
あの人見知りの小林が店員さんとまともに話している。いや、失礼かもしれないけどわりと本気で驚いた。そのレベルで小林のことを人見知りだと思っていたからだ。
同時に感動した。小林が成長していることに感動して、思わず何も言えなくなってしまった。
店員さんが大量のガリが入った入れ物を持ってきてくれた。
「小林ー、言ってくれてありがとう」
「いいってことよ。ほら、たくさん食べてください」
「いただきまーす! あ、そうだ。サーモンの美味しい食べ方教えるぞ」
手元にサーモンの乗った皿、ガリ、醤油、ワサビを用意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます