第3話 変化
着いてくると、茜は屋上に近い階段の方に足を止めて絢音に体を向けた。
「ねぇ、貴方。一体何をしたの?」
「えっ。何をって、どうゆう意味?」
「いや、急に皆が貴方のことだけを見るなんて初めてなものだから何かしたんじゃないかと思って言ったのよ。ねぇ、一体何をしたの?」
茜の慌てぶりに絢音は笑いそうになった。
笑いを堪え、綾香は質問をした。
「なんでそんなことを言わなければならないのですか? どうでもいいじゃありませんか? それともなんですか? 嫉妬でもしているんですか?」
綾香の言葉に茜はキッと睨みつけた。
その顔を見た綾香はもう少し煽ってみようと思った。
「あら? なーにムキになっているんですか? 急に人気取られたから私に当てつけでもしようと考えているんですか? まっ、私一様無敵になったものですからすみませんねぇ。八方美人さん」
「ッ! アンタ!」
(うわっ! やばっ)
茜は綾香に掴みかかろうとすると、階段を踏み外してそのまま倒れてしまった。
けれど綾香はすぐに身を縮こませてできる限り頭を守った。
その時ちょうど、同級生が五人が駆け寄ってきた。
「綾香ちゃん! どうしたの? 大丈夫?」
綾香は「大丈夫」と言いながら茜を見た。
その時、あるアイディアを思いつた。
(そうだ。これを機にあいつには少し痛い目を見せなきゃね)
そう思い、すぐに嘘泣きをして指を指した。
「じっ、実は、茜が私を呼び出したらいきなりっ、押してきたの!」
「なっ!」
綾香の言葉に、その場にいた同級生は顔を歪ませた。
「うわっ。ひどっ。茜ちゃんそんなことするんだ」
「引くわー。美人だからってなんでもやっていいと思ってるの?」
同級生の言葉に茜は涙声で訴えた。
「ちっ、違う! その子が」
「言い訳とかうざっ。謝れよ。綾香ちゃんにさ」
「そうだ! 謝れ謝れ!」
同級生の声が高鳴る中、次々と同級生が近寄ってきた。
「何々、どうしたの?」
一人の女子が声を上げていると、その場にいた女の子は綾香を指さして「あの子が絢音を押したのよ!」と言った。
茜は耐えきれず、駆け足でその場から逃げた。
「あっ。待て!」
男子は茜を追い、女の子達は綾香に「大丈夫?」「怪我していない?」と声を掛けていた。
絢音は泣きながら返事をしていたが、心の中では笑っていた。
(ははは、皆簡単に騙されるなんて馬鹿みたい。でもいい機会だわ。これであの子も終わりね)
絢音は嘘泣きをしながらも、優しく支えてる同級生に背中をさすられながら保健室に向かった。
保健室にいる先生に同級生の皆は先ほど起こった話と綾香がしたことをすると、すぐに固定電話機に向かって誰かに話をすると、振り向いて「一様救急車を呼ぶわね」と言ってまた電話で誰かに電話をした。
その後、絢音は救急車に運ばれるまでも同級生たちは「しっかり!」「絶対安静にしていてね!」と励ましの声を叫び続けた。
救急車で運ばれた綾香はすぐに検査をしてもらうと、奇跡的に打撲程度で済んでいた。
(けっ。結構な怪我なら休めたのに。まぁいいや。後で慰謝料貰おっ)
検査をし終わる丁度に母親が顔を青くしながら迎えに来てくれた。
母親から学校のことを聞くと、あの後茜は男子に捕まってそのまま指導室に連れていかれた。
話を聞いた校長は茜と親と絢音の母親を呼び、ことの剣幕を教えると親は顔を青くしてすぐに謝罪はしたが、茜の方は最後まで言い訳を繰り返していたため父親に頬を引っ叩かれた後、反抗する気力を無くしたのか最後は何も言わずに一緒に謝罪をした。
「まぁ、あの子は謝った後ブツブツ言っていたけどね」
母親は不気味がっていたが、絢音は「そうなんだ」と言いながらも笑みを押し殺していた。
(これでモデルもおしまいね。お気の毒)
絢音は家に帰り、お風呂を済ませて部屋に入ると溜めていた笑いを部屋中に響かせた。
「キャハハ! 皆バッカみたい。あんなのに簡単に騙されるなんて、ほーんと、頭が悪ーい」
いい気分になりながらでいると、体が突然重く感じた。
(あれ? まさか今日のが全部来たのかな? まぁいいや。こんなの眠っちゃえ)
絢音はすぐに布団の中に入り、目を瞑った。
翌朝、昨日の重さはなくなっていた。
(ほっ。ただの疲れていただけか)
絢音は次の日、そう思っていたがそのだるさは日に日に増すごとに体調は悪くなる一向だった。一回だけ病院には行ったものの、原因は不明とされて行ってしまっていた。
(何よこのだるさ。尋常じゃあないわね)
学校の終わりのチャイムが鳴り、絢音は深いため息をついて待ち合わせをしている皆のところに行こうとすると誰かに肩を叩かれた。
振り返ると、美月が少し顔を険しくしながら立っていた。
「ん? 美月どうしたの? 今日私」
「少し話したいことがあるの。荷物を持って着いてきて」
美月の剣幕に絢音は「少しだけならいいよ」と言って、待ち合わせている友達の一人に少し遅れるとメールを送ってから美月の後についていった。
連れてこられたのは学校の裏で、人気のない場所だった。
「どうしたのよ美月。こんなところに呼び出して」
絢音は美月に言うと、美月は真剣な顔で見て言った。
「あのさ絢音、あんた紫色の花を持っていない?」
美月の言葉に、絢音はどこかで見たんだろうなぁと思っていた。言い訳をしてもしょうがないだろうと思い白状をした。
「えぇそうよ。でも、どうして知ってるの?」
「貴方が茜に呼び出された時に私先生に渡さなきゃならないものがあったからその時に、絢音の机の下に紫色の花があるのを見たのよ。あれ……どこで手に入れたの?」
「えっ。あれはある女の子から種を貰ったのよ。確か黒色の服しか着ていない子だったわね」」
「は? まさかあんた、その貰った種を使い続けているの?」
「うん、でもどうして?」
そういうと、美月は顔色を変えて絢音の肩を掴んだ。
「あんた今すぐその花を使うのやめて! このままだと、あんたは死ぬわよ!」
美月の突然の言葉に、訳がわからなかった。
「何よ急に。たかが花に願いを込めてやっているっているのに」
「それが、危険なのよ! 私一度だけ本を読んだことがあるんだけど、その花は願いを叶えるごとに魂いを削るものなのよ。勿論本にあの花のイラストが載せられていたから覚えていたの。でも、全部の種を使い切ったらあんたは死ぬわよ。今すぐ使うのをやめて!」
美月は必死に訴えかけたが、絢音はすぐに掴んでいる手を振り払った。
「何言ってるのよあんた。頭おかしいんじゃないの? 私そろそろ帰らなきゃならないからじゃあね」
「待って絢音! 今の話は本当なの! 今すぐに」
「うるさいわよ! もしまた変なことでも言い出したら他の子に頼んであんたを学校に来させなくしてやるからね」
絢音は美月にそう言うと、そのまま皆が待っている玄関に向かった。
「お待たせー」
「あー絢音ちゃん。遅いよー。というか大丈夫? 変なことされていない?」
「大丈夫よ。荷物持ってくれるかしら」
「はい!」
絢音は一人の女子に荷物を預け、歩き出した。
話しながら帰っていると。
「綾香ちゃん。靴紐が解けているよ」
同級生は綾香の足元を指差した。
絢音はお礼を言い、しゃがんで靴紐を直すと。
「あれ? なんでここにいるんだ? 私たち」
その場にいた友人の言葉に絢音は顔を上げると、皆それぞれ頭を押さえながら考えていた。どうやら花の効果が切れたようだった。
「ていうかなんで私絢音のカバン持っているんだ?」
カバンを持たせた子は絢音の鞄を見て困惑をした。
(まずい。持たせたことがバレたらやばい)
「あぁ、私が靴紐ほどけた時に持ってくれたんだよ。ありがとうね。あっ、私今日急がなきゃいけない用事があったんだ。皆じゃあね!」
絢音はキョトンとしている皆に手を振って言った。
(くそっ、タイミング悪く切れやがって)
絢音は家に帰り、すぐさまカバンの中から女の子から貰った袋を取り出した。
袋の中を見ると、種は五つ残されていた。そしてあることを思いついた。
(全部使っちゃえば三週間どころかもっと日にちが伸びるんじゃないのかしら? それなら試してみるのみね)
絢音は女の子の忠告を忘れたのか、すぐに袋の中に入っている全部の種を全て埋め、水を撒いた。
(ふふふ、これで私は更に人気者に)
絢音は濡れた土を見て、細く微笑んだ。
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