第5話 S級冒険者。 人類史上でも7人しか存在しない、神のような存在。

 さて。

 早速ミッション達成の成果を確認しよう。


「マジかっ!!」


 声出ちまったよ。



 ・マサキ

 ・レベル5(179/425)

 ・ジュエル:20

 ・スキル:

【身体】

 筋力:0 (New)

 体力:0

【技能】

 剣技:0 (New)

【自動】

 HP自動回復:0 

 感覚鋭敏:0



 レベルも上がってスキルも増えてる。

 ええやんええやん。レベルは普通に経験値で上がってくれたか。

 えーと、ジュエルは3上がってるのかな?

 途中で討伐数が100を通り越して300達成してたからな。それぞれジュエルを1、2くれた感じなのか?


 だとしたらありがたい。

 ミッションの内容次第では1より多くのジュエルを得られるものもあるってことだから。



 っていうかそれより、スキルだな。

 今朝ゲットした奴も含めて、:0とか書いてるな。これスキルレベルだよな。


 普通、取得したてのスキルでもスキルレベル1から始まるもんだ。

 冒険者として、E級上位ならばレベル1スキルを2-3個持ってることが多い。

 得意分野のレベル2スキルを3つも持ってりゃ間違いなくD級で活躍できるってのが相場。



 はっはーん。わかるぞ。俺には。

 これ、あれだろ。ジュエルを使えばレベルあげられる奴だろ。

 早速全てのスキルにジュエルを振ってみる。


 ・マサキ

 ・レベル5

 ・ジュエル:15

 ・スキル:

【身体】

 筋力:1

 体力:1

【技能】

 剣技:1

【自動】

 HP自動回復:1

 感覚鋭敏:1



 0を1にするのに1ポイントか。

 まだまだ余裕があるな。



 さて、どうすっかな。こいつら(スキルども)さらにレベルアップするかな。

 ミッション達成で新しいスキルを覚える可能性もあるけど……まあいいか!さらに上げちまえ!



 ・マサキ

 ・レベル5

 ・ジュエル:5

 ・スキル:

【身体】

 筋力:2

 体力:2

【技能】

 剣技:2

【自動】

 HP自動回復:2

 感覚鋭敏:2



 ジュエルがガンガン減ってしまった。

 1を2にするにはジュエルが2必要なのか。

 この辺はレベルと同じルールっぽいな。


 しかし、そもそもスキルレベルを今上げる必要があったのか?


 もしかしたら、Lv.0の状態からなら訓練次第でスキルレベルも上げられたんじゃないか?

 ミッション達成の報酬として、スキルの入口に立つ権利を得るというか。

 慎重に行けばジュエルを節約できたかもしれないが……まあやってしまったものは仕方がない。どのみち仮説の域は出ない。

 俺の人生、何もかもがこの有様だ。こんな人生、なんの価値もなかった。(闇堕ち)



「ボチボチ帰るか。剣もくたびれちまってるし。

 ていうか今何時だよ」


 そう思ってたら、帰り道でゴブリン2匹に遭遇。

 丁度いい。試し切りだ。


 敵を見据えて、柄に手をかける。

 ぞわ。不思議な感覚に肌が泡立つ。



 なんだ、これ。

 今までは、剣を抜いて、構えて、隙を伺って、狙いを定めて、斬撃を放って、距離を取って、構えなおす。

 これら一つ一つを別の動作としてそれぞれ完遂する必要があった。


 でも今は。

“敵を斬る“。その一動作で全てが完結する感覚。

 さあ斬ろう、と剣を抜いたと思ったら手前のゴブリンの上半身と下半身が千切れ飛んでいた。

 もう1匹、と思った時には2匹目の体が左右に分割されている。

 腕には抵抗感が残らず、くたびれ切ったはずの刀身は血に濡れてもいない。



 これが、スキル。


 今までの人生は何だったんだと振り返りそうになるが、とにかく今はこの力を喜ぼう。

 まだまだ今日のトレーニングミッションも残ってるしな。

 ひとつ残らず消化しよう。俺はいったい、どこまで強くなれるだろうか。


 そんなことを考えながら、俺はダンジョンから脱出した。



 ーーー


「お疲れ様です。

 本日の魔石買取価格は、24,160ゴルドになります。今日は随分と狩りましたね。

 口座に振り込みますので、読取機に指紋を取って、金額を確認の上承認ボタンを押して下さい」


 ギルドの受付嬢に促され、読み取り機にタッチする。

 マナペイっ!と小気味よい音声が鳴り、画面に金額が表示されるので承認する。


 最近はキャッシュレス化も進み、貨幣を持ち歩く必要性も随分小さくなった。

 とはいえ、まだ一部の店では魔導通貨(通称、マナコイン)の読取機が導入されてないから、最低限の貨幣は持ち歩いてるけどね。

 ゴルドって昔は金貨1枚を表す貨幣単位だったのに、魔導通貨の発展で急速にインフレが進んで貨幣の出番が大幅に少なくなったってのは皮肉な話だ。

 超便利だけどね。もう貨幣時代には戻れない。



 というか、日給2万オーバーか。すげえな。

 っていうか、いままでこれの10分の1だったわけだから、如何に俺がヤバい状況だったかわかってもらえると思う。これは副業なしでは食ってけませんわって思うでしょ?


 24000を365日換算すると……おお!年収876万!勝ち組キタコレ!

 いやいやいや。何を普通に年中無休の全力疾走体制を前提にしとるんだ。

 土日祝日を休んで、夏休み9連休とか盆、正月休みをいれるとして、大体年間125日の休日で240日働く計算だとしたら……それでも576万!十分に勝ち組!

 これならマンション買えるか?いや、そこまで行かなくとも今のボロアパートは抜け出して、多少贅沢して、アレも買ってコレも買って……。



 違うだろ!

 ちーがーうーだーろー!このハゲ!



 何を一生をゴブリン狩りに捧げる覚悟を決めとんねん!

 もっと上を見よう。俺はもっと強くなれるはずだ。

 そう、ミッション・コンソールならね。


 大体、今の強さでももっと深層まで潜れるんじゃないか?

 Lv.2のスキルも複数あるんだし。

 いつまでもEクラスじゃいられないだろう。

 まずはD。そして、C。……Bクラスとか、狙っちゃう?



 小さい!小さいよ発想が!

 そこはAを狙うところだろう!

 それもただAクラスになるだけじゃない。


 冒険者として伝説級の偉業を成し遂げたAクラスの中のAクラス。

 あくまで非公式にだが、世間が俗に呼ぶ、敬意と畏怖を込めた最上級の称号。



 S級冒険者。

 人類史上でも7人しか存在しない、神のような存在。



 12歳のあの日。孤児院を出たあの日夢見た存在を。

 お世話になったシスター達や、孤児院の後輩達が誇りに思ってくれるようなその夢を。

 目指す時が来たんじゃあないのか。



 唐突な、デカすぎる目標だとは思う。

 突然の事態に冷静さを失っている自覚はある。



 落ち着こう。

 目下の目標はDクラスへの昇格だ。


 なにしろ。


「こんなミッションがあるんだからな」



【メインミッション】

 ・D級昇格試験に挑戦しよう!

 ・D級昇格試験に合格しよう!



 やらいでか。

 やってやろうじゃねえかよ。

 そうだ、昇格する度に孤児院に何か贈り物をするってのはどうだ。


 シスターの生活が楽になるように。

 魔導掃除機。

 乾燥機付き魔導洗濯機。

 魔導食器洗い機に、魔導調理器。

 それぞれ、業務用のデカイやつだ。



 まずは洗濯機だな。

 決めた。一週間以内にD級昇格を果たして、大型の乾燥機付き魔導洗濯機を孤児院に送る。

 多分50万ゴルドくらいあれば行けるだろう。

 なにせキャリアだけは長い。昇格の要件や手続は熟知している。


 そのためにも……。



「コンソールが示すミッションは全部達成しないとな。

 どら、今日の分は。」



【デイリーミッション】

 (鍛錬)

 ・ウォール・プッシュアップをしよう (0/20回)

 ・ウォール・プルアップをしよう (0/20回)

 ・リバース・スクワットをしよう(0/20回)

 ・チェアーズ・レッグレイズをしよう(0/20回)

 (回復)

 ・睡眠を取ろう(7/10時間)

 (栄養)

 ・タンパク質を摂取しよう (20/60g)

 ・野菜を摂取しよう (40/300g)



 こいつを片付けないとな。

 睡眠時間はちょっと減ったが、栄養摂取がシビアになった。

 肉……いや魚を食える店に寄って帰ろう。野菜、全力で注文しないとな。


 もう19時だ。

 すぐにメシ食って、帰ったら筋トレして、即寝ないと。

 睡眠時間は今日中にあと3時間確保しなきゃならない。

 てことは21時までに寝るためにはボヤボヤしてられない。


 俺は早足で飯屋に向かった。

 こんなにテキパキ日々を過ごすのはいつぶりだろうか。

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