第9話 絶望と焼き芋と葛藤と不意打ち
ああ、また違う世界に飛ばされた。俺は深い深い絶望の中頭の中で巡る思考をコントロールしようとする。『何故…何故なんだッ!?何で誰も俺を受け入れてくれない!?ただ俺は…』そう自身の思考は同じ事を繰り返す。
それはまるで壊れてラジオの様に。思考の渦が止まらない自分が自分では無くなっていく衝動は何年も続きそして月日が経つにつれて短くなっていく。
薄れる意識の中俺は立ち上がりまずは食べ物をと歩きだした。
「秋だー!」そういいながらはるは紅葉の葉っぱを集めたところにダイブしていた。「ちょっとはるー掃除ちゃんとしてよねー」私は落ち葉で遊んで掃除をしないはるを見ながら落ち葉をせっせと集める。「この後焼き芋するんでしょ!早くしないと食べれないよ!」そういうとはるは黙々と落ち葉を集め始めていた。お互い進路も決まり悠々とした気持ちで秋を楽しんでいた。今は地区の行事で落ち葉拾いと焼き芋パーティーが行われていた。若い人もちらほらいる活気のあるとてもいいイベントだった。
落ち葉拾いもひと段落した私達は落ち葉に火をつけて焼き芋の準備をしていた。「銀紙ぐーるぐる!」とはるは楽しそうに焼き芋用の芋にアルミホイルを巻いていた。
焚き火がパチパチととても心地良い音を奏でる「もういいかな!?もういいかな!?」とはるはソワソワしている。
「そろそろいいんじゃないかな?」といい私は焚き火から芋を取り出してみる。アルミホイルを開くと綺麗な黄色がかったさつまいもが。はるは「ほわぁ〜」と言いながら焼き芋にかじりつこうとすると急に走りだした。
走った先には少し汚れた服をきたおじさんがいた。「おじさんも半分どうぞ!」とはるは焼き芋を半分差し出したようだった。その後はるは走って戻って来て「いただきます!」と焼き芋にかじりついていた。
イベントから数日後私は学校に用事がありはるに「学校にようがあるからちょっと行ってくるね。」と言うとはるは「りょーかい!」と敬礼のポーズをして見送ってくれた。
学校での用を終えた私は家路につこうとした時大雨が降り出していた。「まあ急ぎのようもないし雨が止むまで待とうかな」そう思っていると「すずちゃーん」と傘をさしてこちらに向かってくる姿が何と傘を持ったはるがわざわざ迎えに来てくれた。
「急に雨降り出したからすずちゃん困ると思って!」とものすごく嬉しかった。
「さっ帰ろー!」とはると傘をさして家路についた。
はるは楽しそうに歩く「雨って楽しいね」と言いながら二人で歩く。もう少しで家に着くと言う頃だもう何年も前から廃線になったバス停にだれかいる。バス停の前まで行くとこの前のイベントの時にはるが焼き芋を分けてあげたおじさんだった。
はるは「おじさん大丈夫?」と声をかけるするとおじさんは少しだけ顔をあげる「…俺がわかるのか?」と呟く。
「…俺がわかるのか?」と次はハッキリと聞こえた。はるは「わかるよ!焼き芋の時のおじさんだよね?」と言うと「そう!そうだ俺は焼き芋の時のおじさんだ!」と意気揚々に喋りだす。「アッハッハッァー!見つけた。見つけた。やっと俺を見つけたな!」と狂った様に笑い出す。
ハッキリいって異常だ。私ははるに「逃げよう!」と言い身をひるがえそうとするとはるが動きを止めている。
「おじさん苦しいの?」はるは狂った様に笑い続けるおじさんに向かって質問する。おじさんは「何が苦しいことなんてッ…」と声を詰まらせる。
頭を抱えてまた笑い出すしかし途中途中に言葉が混ざる。
「クッハッ…頼む逃げ…ヒッヒッ…逃げてくれ!アッハッア」と何かと葛藤しているようだ。
「はる行くよ!」そういい私ははるの手を引いて逃げる。
無事に家に着いた私達は「はる大丈夫?」そう聞くとはるは「うん…大丈夫だよ。おじさんも大丈夫だったかな?」とやっぱり他人の心配をしていた。
私ははるの手を握り「今は気にしないでいよう」と声をかけた。はるがシャワーを浴びている間に桝おじさんに連絡を入れる。『もしもし?すずです。ちょっと頼みたいことが…』と言うと『留守番電話に転送します。』ととりあえず起きたことを留守番電話に報告して電話を切る。
ピンポーンと不意にインターホンが鳴る。ドア窓をみても外に誰もいる様子がない。不思議に思いドアを開けるとそこには雨に濡れた傘がかけてある。まさかと思い振り返ろうとすると『クッハハ…騙された。騙された!』と声が聞こえた瞬間に傘がギチギチと音を立てて形が変わっていく。
逃げようとした瞬間に私は全身が絞られていく感覚に囚われた。
第10話につづく
扉と鍵とすずとはる ぱすてぃー @pasuta1122
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